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俺の初恋は若年性  作者: わたしはオジヘル
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現実から緊急避難

去年のこの時期、まだ彼女は標準型の介助用車椅子に乗っていました。それのうしろへ回り、押して浴室に連れて入ります。刑場に引かれる者の心持ちです。


脱衣場で脱がせて、それから奥の洗い場に移動して介助する、というのが一般的な手順です。わたしはそれ用のエプロンを着用します。


一般的に、相手を車椅子に座らせたまま、上半身から脱がせていきます。手が震えるので、うまく出来ません。目がくらむようでした。


上を脱いだとき、ポチが顔を覗かせました。予告なくガラッとあけて、あけ放した向こうから「どう?出来そう?」と言います。わたしからは食堂にいる人々が見えます。車椅子に乗った男性なども。とっさにタオルで覆いました。


「出来ます。そこを閉めてください。」


わたしのサポートに入るというのは、このポチのことでした。


「ちょうど良かった。下を脱がしちゃおう」といってそばへ来ます。扉は開いたままです。わたしが閉めに行ったのと入れ替わりで、ポチが彼女の前に立っています。


「よいしょ!」と、両脇に腕をとおして宙づりにしている。彼女の足がブランコしています。


「ズボン下げちゃって。オムツも一緒に。ここでオムツとっちゃって大丈夫の人だから。このままあっちに乗せちゃおう。」


どうして良いか分からないでいると、「変わって!」と、そう言いながら彼女をまた車椅子に戻します。覆っていたタオルは床に投げ捨ててある。


「なにやってんの。早く持ち上げてよ。」


「自分の方法でやらせてください。」


「ならいいけどサクサクやってね。また見にくるから。」


何とか私は踏みとどまりました。ゆうべは一睡もしていず、理性を欠いた行動に出なかったのは幸いでした。わたしは極真の有段者であり、当時はまだ百キロあったので、ポチをやるぐらいわけないことでした。こんど現れたらあばらをぶち抜いて細っこい腕をへし折ってやれ、二度とああいう真似が出来ない体にしてくれる、とそうする場面を頭の中で描き描きしたものです。


別の意味で幸いだったのは、テレジアの介助ちゅう、怒りを鎮めるのに精一杯で、洗いながら皮膚の状態等を観察する実行機能を失っていたらしい。皮肉にも、ポチのお陰で機械的に且つ不徹底に終わらせることができた。テレジアに対する仕打ちに憤慨する一方で、今そのテレジアを入浴させている現実から緊急避難できたのだと思います。


<次で続けます>

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