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五十助さんはどうしたって可能性がなかった
「それはイェズス様のことよ。決まっているわ。」
聞いて愕然としたものです。
「あの子は五十助さんを慕っていたと思う。でも先約があったの。」
高校最後の年、私は一封の書を認めました。心の想いを紙に書いてテレジアに手わたしました。
それからどれぐらいだったでしょうか、郵便受けに返事が届いていました。
愚かにも、わたしはそれを燃やしてしまいました。空に煙をあげる意図で。神々への見せしめに。
でも、いつまでも忘れなかったのは、「自分には嫁ぎたいと心に決めた相手がいる」という意味の言葉でした。想像してみてください。キリストがライバルだと、誰が考えたでしょうか。
「五十助さんはどうしたって可能性がなかったわけ。シスターになるのが子供からの夢だったんだから。」
愕然としたものです。
「あの子はね、生まれた時からそういう定めだったのよ。与えられた少ない時間なんだから、ありったけの愛で愛してあげなさい?愛してあげてちょうだいね。」




