七十見当の女性
田村君が初めて伯母様に会ったのは、パート職員になる少し前でした。
その日は朋子の誕生日でした。
お昼ご飯を食べたので、田村君は朋子をつれてお部屋に行きました。
中に入ると、昼間だろうと自動照明が照らします。手動でも、電機スイッチを全部オンにします。
歯磨きをしました。
ノックする音が聞こえて、七十見当の女性が入ってきました。
「朋子ちゃん、ハッピバースデ~。」
田村君に向かっては、
「ご苦労さま。」
彼はこの時、朋子をベッドに移す準備をしていました。ベッドに移ったらば、排泄介助を行なうため、介助に必要な物を揃えているところでした。
「いいわよ。移乗だけしてくれれば。あとはするから」と女性。
女性は部屋の明かりを消していきました。スマホを使って自動照明も切りました。
「親戚。ほら」といって、机に並んだアルバムのうち一冊を選んで開くと、二人のツーショットを示しながら、「おば。」
「移乗だけお願い。」
おばはトイレの壁に下がったエプロンを腰に巻き始めました。
田村君は驚いてしまいました。おばが排泄介助するつもりらしい。
田村君は以前から気になっていました。何のためのエプロンなのかと。
それはレストランの店員が腰に巻くサロンエプロンと同じ物でした。なぜそれがトイレに掛かっているのか、謎でした。
田村君が朋子をベッドに移して横にしました。
見ていたおばは、
「あなた、いつもその方法?ここでそれをする人、初めて見た。」
田村君は、いくつかの移乗テクニックを使い分けていました。
朋子は足に力が入りません。加えて、車椅子に乗ると、床に足がつきません。だから、田村君は片膝をつき低く入って肩に担ぐ方法を使いました。
「呼ぶから外で待っていてくださる?車椅子に乗せて欲しいのよ。ここはすぐ寝かしちゃうからダメ。」
伯母様が言ったことは本当で、なるべく寝かす介護をしたがる施設でした。寝かす介護をすれば、職員の手間が省けました。




