ある懸念
和風美人の真菜医師、
そこまで朋子を守る用意がしてあったこと、これは、田村君にとり、この上もない祝福でした。
非常に嫉妬深く、それ以上に猜疑心が強く、極端なまでに独占欲のかたまりである田村君は、心配しました。
誰にも朋子を触らせたくありませんでした。
もし可能ならば全部自分一人で彼女を介護したいくらいでした。
見た目に十年は若い朋子。マシュマロのような色つやの朋子。少女の面影を残す朋子。
あとで分かった事は結婚歴すらない。
彼女を他の男に介護させたくありませんでした。悔しくて、口惜しくて、来る日も来る日も気の休まる時間がありませんでした。
朋子が憎い。けれども独り占めにしたい。田村君は、屈折した内面を持つおじさんヘルパーでした。
ただ、それだけではありませんでした。
他に、ある懸念がありました──
高校生だった時、ミスタードーナツの店内で、彼女がご家族について聞かせてくれたお話。
去年、桜の木の下で、酔っ払い同級生が彼女について聞かせた話。
朋子は、何が原因で要介護になっているのか。なぜ、老人ホームで暮らすようになったのか。
瞬時に、理解しました。事故や怪我が原因でそうなったのでないと、理解しました。
そのあと、彼が送った狂人のメンタルライフ──メンタルライフの半分は、その、ある懸念が、頭から離れないことに起因しました。
懸念とは、以下のようでした。
彼が介護の世界に入ったとき、最初に勤めたところが、老人ホームでした。
そこも、非道い所でした。更に非道いところでした。
介護の質が低いだけにとどまりませんでした。暗黒な噂がありました。
或る、47歳の、やはり若年性認知症を患う女性にまつわる噂でした。




