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一本の線
飲食業界で働き続けることにこれ以上意味が見いだせなくなってきた頃、自分は残りの人生を福祉分野で頑張ってみようかと、田村君は例の気まぐれから思いつきました。
かつて中学三年生だった、その時分に見た母親の姿を思い出して、何かそんな気になったのでしょうか。
たくさん悪いことをした関係上、福祉でもやって良心を誤魔化したい理由もあったことでしょう。
福祉を始めるのに、介護職員初任者研修というのを受けました。
介護職員初任者研修を受ければ、だいたいどんな介護施設へいっても働くことが可能です。
「朋子の介護をしに行け」と酔っ払いの同級生にからかわれた田村君、その気さえあれば、朋子の介護をしに行くぶんには、それなりの資格と技術を持っていました。
上のような経緯で、再び田村君と朋子とが一本の線でつながってしまいました。
別れ別れになっていた二人が再会したとき、彼女は若年性認知症になっていました。
神聖不可侵の人が、未婚の母になっていました。




