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トラウマ的な体験
その朝、田村君はトラウマ的な体験をダブルでしました。
言うまでもない、出産痕を目にしたことが一つ。彼の知らない誰かの子を孕んだ、その印でした。
彼は、何週間も前に、朋子に子があると聞いていました。
予め、彼女には子供がいると知ったうえで働きに行ったのです。
でも、決定的な証拠を見おろした時に、目がくらみました。嘔吐することを恐れました。
今ひとつのトラウマは、入浴介助したこと自体、それがトラウマ的な体験でした。
昔、高校三年生どうしで、心と心を通わす親密な交際を続けながらも、近づくことができなかった彼女。
濃密な時間を共にしながらも、触れられなかった彼女。
二人で書いた物を読みあった日々。
河原へ行って土手に腰をおろし原稿用紙を朗読しあった日々。
相並んで掛けながらも、間をあけて体が接しないように気をつけた日々。
田村クンと言っては袖を引っ張りたがる彼女に悩まされた日々。
高校生の彼にとって、クリスチャンである朋子は神聖不可侵でした。
その朋子に、彼は数十年ぶりの再会をしました。
彼は自らの手で、彼女の衣服を脱がし、お風呂に入れて彼女の体を洗ったのです。




