第九十四話「未知数な合同ライブ開催!」
軽音楽部との合同ライブがいよいよ始まろうとしている。
ライブをやる当日までの間、これといってトラブルもなく順調に進んでいた。校内でのビラ配り、放送部に協力をしてもらって校内放送でライブをやることを告知。
僕らはありとあらゆる手段をとって、集客を呼びかけた。
そして、この日。ライブ本番へと迎える。
「けど、本当に観に来てくれるんですかね」
「それは……わからん! けど、バンドがライブをやるんだし、多少は興味があるって人がいるかもしれないぞ」
出番が来るまで時間はある。ステージの裏で瑠偉はそう尋ねると、僕は苦笑いを浮かべながら答える。
確実に観に来るであろう軽音楽部の部員。それに、金本たちもおそらく来るだろう。
問題は一般生徒のほうであった。放課後にやるのだけれど、その時間は帰宅を優先する生徒が多いはず。
そんな中、ライブを聴きにやってくる人がいるかは本当に未知数である。
「まあー、あたしらはスカスカで誰もいない中でライブもやったことあるしー、そこまでメンタルはやられないけどなー」
「僕らはだろう? 瑠偉たちや芹沢さんは、そんな経験はないから不安に感じているんだろうが……」
「それもまた……バンドマンの通過儀礼だよー!」
響子のそれはまったくフォローになっていない。むしろ、それが余計にプレッシャーになるとは考えないのだろうか。
僕は深いため息をつくと、トリで演奏をする大石君がやってくる。
「どうだ? バンドのコンディションは」
「え? ああ、それは問題ないけど……」
先ほどのやりとりを大石君に話すと、彼は答える。
「観客の入りがどれくらいかが気になっている? なんだ。そんなことで悩むかよ、おまえらの同好会は」
「悩むってわけではないけど……大石君は気にならないの?」
こちらとは反応が違い、大石君はいたって冷静でいる。軽音楽部ならば、そこはかなり気にしていると思っていただけに意外だ。
「馬場さんも言ったんだろうけど、バンドをやっていると、集客ゼロは当たり前だろう? 俺たちなんか、ライブハウスでやったときはほとんどゼロだったよ」
「おお……知らぬ間に軽音楽部もライブハウスデビューをしていたとは」
「観客も大事だけど、それ以上にどんな状況でもバンドのパフォーマンスをフルで出せるかのほうが重要だろう」
大石君はそう僕に話す内容はごもっともである。たしかにそうであるし、バンドととしては正解。
僕らよりも場数を踏んでいる軽音楽部が言うと、妙に説得力があった。
「俺たちも今日、どれくらいの人が来ているか知らないけど、精一杯に良いライブをやれたらそれだけで成功だろうさ」
「なるほど……」
「まあ、そんな変に緊張をしなくていいと後輩に言っておくんだな。それより、おまえらの演奏を楽しみにしているぜ」
そう言って大石君は去っていく。
「さすが軽音楽部ですね……あの余裕は」
「あれだけ余裕なら、ライブもすごそうですよねえ」
「けどー、ライブの経験的にはあたしらが上だからねー! なにせ、東京でライブをやってのけたんだからー」
「それは去年の話しな……」
大石君が見せた余裕の姿に瑠偉たちが関心をしていると、響子がそんなマウントを取るように返してくる。
けれど、それよりもこのメンバーによる新生ギャルゲーソングバンドにとって今回の学校でやるライブも、いい経験になるだろう。
大石君が言ったように、僕らもどんな状況でもフルパフォーマンスを出せるように。
「音楽研究同好会さん? もう数分で、ステージに上がってください。司会進行は生徒会で行いますので、指示に従うようにと会長からの伝言です」
「はっ、はーい」
現れた生徒会の人に言われ、僕は答えた。もうすぐ、トップバッターである僕らのライブが始まる時がきた。
なんだかんだと、今日のライブができるように手を尽くしてくれた生徒会。そのありがたみを垣間見える。
「よし……みんな! やるからには全力を出して、演奏をするぞ。そして、次の大型イベントの前夜祭だと思うんだ!」
「妙に気合が入っているねー! まあ、キョウちゃんの初であるメインボーカルをひっさげて、かましちゃおー!」
「「おおー!」」
響子が僕に続いてみんなにそうかけ声を出すと、瑠偉たちは声を合わせて答えた。
それに、芹沢さんもコーラスとして観客の前でやる初のライブとなる。
「芹沢さん。大丈夫! 練習通りにやれば、きっと聴く人に届くよ!」
「うっ、うん! わたし……がんばる!」
僕は緊張をしている芹沢さんの顔を見ながら、そんな風に励ます。芹沢さんは覚悟を決めたように、そう答えてくれた。
僕らは軽く柔軟をして体をほぐす。そして、すでに演奏がいつでもできるモードへと変化する。
「それじゃあ、あと数分でステージに向かってください」
すでに楽器を持ち、ステージ裏でスタンバイ状態でいる僕らにそう指示が出る。
どれくらいの人が体育館に集まっているかは関係ない。軽音楽部とやるライブで、最高のパフォーマンスを見せる。
ギャルゲーソングの良さを、またここで広めるために全力を出し切るのだ。そして、ステージへ行けというゴーサインが出ると、僕らはライブをやる舞台へと歩む。
楽器をアンプとエフェクターにつなぎ、それぞれが立ち位置でその時を待っている。
目の前には垂れ幕が下がっていて、体育館の中がどうなっているかわからない。
――なかなか、じらしてくれるなあ。
僕はそう思いながら、ギターを構えている。
「それでは、軽音楽部と音楽研究同好会による、合同ライブを開催いたします」
体育館のスピーカーからそんなアナウンスが聞こえ、垂れ幕が上がっていった。
これより、僕らのライブが始まる。
完全に垂れ幕が上がり切り、正面を見るとその光景におどろいた。
僕はニヤリと笑いながらみんなに合図をすると、ギターの音を最大まで上げて勢いよく弾き出したのだった。




