第九十三話「合同でやるんだから、それらしく会議だ!お互いにいいライブにしようぜ!」
とりあえず学校でライブができるが、問題は多々ある。
その中で特に頭を悩ませるのは、軽音楽部と合同で演奏をやることであった。
「なんか……実力の差を思い知らせれる気がしますね」
「あっちは、あたしたちよりガチでやっているしねえ」
瑠偉たちは、モチベーションが下がったような様子でそう話す。たしかに、相手は僕らよりもバンドをやっている連中だ。
演奏をする曲のジャンルも、スタイルもこちらより上だと思うのだろう。
「けどー、あたしらだってそこそこのレベルでしょー? そんなに不安に思う必要ないよー?」
「そうですかねえ……」
響子が二人にそんな言葉を投げかけるが、僕は口を閉ざしている。
「そういえば、岩崎君は軽音楽部の部長さんと話し合ってきたんだよね?」
「え? うん、そうだねえ」
芹沢さんに尋ねられた僕は歯切れ悪く答えた。というのも、それは先日に話は戻る。
合同ライブをやることに決まって、軽音楽部の部長こと大石君とそのことでミーティングをやることになっている。
けれど、場所はなぜか音楽室。軽音楽部のテリトリーでだ。
「というわけだが、岩崎。なんで、おまえらも同じことをやろうとしているんだ?」
「いやあ……イベントの前にやる腕試し的な?」
「はあ……俺たちと同じじゃないかよ!」
他の部員がいる中、大石君は僕にそうツッコミを入れる。
ぶつぶつと言っている大石君をよそに、一人の部員が僕に話しかけてくる。
「ところで、君たちはどんな曲をやるの?」
「え? それは、ギャルゲ……」
答えようとするも、そこで言葉を濁す。
大石君は僕らがギャルゲーソングをやることには理解をしてくれているだろう。けれど、他の部員はそれがオタクが好むような音楽をやるとまでは知らないはず。
ここで正直に言うと、また悪く言われてしまうのではと思った。
「こいつはギャルゲーソングってやつをやるんだよ。ほら、おまえも前に聴いていただろう」
「ああ! そうだったね。だったら、俺たちもいい相手とライブができそうでいいじゃん」
「……へ?」
大石君が代わりに言った後、他の部員がそのように答えると僕はおどろいた。その口ぶりから、ギャルゲーソングを悪く思っていないように聞こえたから。
僕の反応に、大石君たちが不思議そうにこちらを見ている。
「あのう……ギャルゲーソングには、悪いイメージをお持ちでは?」
そう尋ねてみると、部員たちが大笑いをする。その後、大石君が答えた。
「まあ、引退をした先輩たちはかなり小馬鹿にしていたけど、俺たちの代になってからはそこまで悪く思っているやつは少ないぞ」
「そうそう。岩崎君だっけ? 君らの同好会はよくわからないけど、バンドとして見るとかなりの実力があるなあと思っているよ? みんなは」
部員の一人が話した後、他の人たちは無言でうなずいている。
「ほら、俺たちの軽音楽部と対バンはしたことがないじゃん? だから、ライブバトルのイベントとか今回の合同ライブも、結構楽しみにしているんだよ」
「そう……なんだね」
意外な言葉に僕はおどろいているばかりだ。まさか、ここまで僕らの同好会を認めていると思っていなかっただけに本当におどろきだ。
「ギャルゲーソングがここまで広められているとは……」
「まあ、俺たちの部がやるバンドのほうが良いに決まっているけどな!」
大石君は最後にそう話すと、僕も負けじと答える。
「僕らだって、新生ギャルゲーソングバンドとしてイベントも合同ライブも、一番盛り上げてみせるよ」
僕の言葉を聞いた軽音楽の部員たちは、奮起する。
「よーし! それじゃあ、どちらがこの学校にいる生徒を湧かせるか勝負だな!」
「うん! お互いに頑張ろう」
「まあ……とりあえず、合同ライブの具体的な流れでも決めていくか」
こうして、僕と大石君が率いる軽音楽部のみんなと話し合っていくこととなった。
その雰囲気はとても良い。あの入部届を出した時に感じた居心地の悪さを感じることはなかった。
「ということがあって、合同イベントの詳細をある程度、決まったよ」
芹沢さんに尋ねられた僕は、その時のことを話して一枚の紙を机の上に置く。
それは、仮ではあるが合同ライブの大まかなスケジュールが書かれている。そのほとんどが、ライブハウスでやるようなものと同じである。
「まあー、いいとは思うけどー。なんで、あたしらが前座なのー?」
「うっ。そこは、僕も疑問に思ったけど……企画書を提出したのは大石君が先だったし、トリは軽音楽部ってことで納得させられたんだよ」
「そこはなんとか抵抗しなさいよー!」
わずかな不満があるのか、響子は僕をジッと見つめながら口にする。苦笑いを浮かべながら、僕は無言で目をそらした。
「まっ、まあ……合同ライブをやることは確定になったんだし、気持ちを切り替えて練習をやるぞ」
僕はごまかして、響子たちに話して自分のギターを肩にかける。
ここからは、合同ライブで大石君たちより良い演奏ができるように集中をして練習を開始する。
そして、いよいよ学校でのライブが始まろうとしていた。




