第九十二話「いざ、生徒会へ!学園ライブを開催させろ」
この日は例の学校でライブをやるために、生徒会へ直談判をすべく生徒会室へおもむく。
「僕がいない間に、きちんと企画書は作ったのか?」
「ふっふっふー! 当り前よー。芹ちゃんの手にかかれば、この通りー!」
そう言って、響子は僕に企画書を見せつけた。まあ、芹沢さんが書いたのだから問題はないだろう。問題があるとすれば、生徒会がどう出るかだ。
去年よりは同好会に対して厳しさはなくなったけれど、より規則に厳守なっている。
きちんとした手段を踏まなければ、この企画書も無駄になってしまう。
「ふう……よし、それじゃあ入るぞ」
僕は深呼吸をして、みんなにそう言うとドアをノックする。
――コンコン!
たたいた後、ドアノブを回して中に入る。
「失礼します! 音楽研究会の代表者、岩崎です。今日は、生徒会にお願いがありましてえ」
そう礼儀正しく口にして、軽くお辞儀をする。すると、目の前には生徒会長が椅子に鎮座していた。まるで、どこかの司令官のごとく。
「岩崎君……」
「はいぃいぃ!」
「ノックは二回ではない。正しくは四回である……ここはトイレではない」
「すっ……すみませええん」
鋭い指摘に僕は思わずたじろいでしまう。つい、生徒会長に謝ってしまった。
「まあーまあー! そんな感じだから、クラスでも浮くんだよ? 島田くーん」
「おっ、おい。響子……ここでは会長なんだから、クラスメイトに話すノリはやめろよ」
つまるところ、響子と生徒会長である島田君は同じクラスメイトである。彼のことは、僕らより、響子が知っているだろう。
「おっぽん! それで、岩崎君。お願いというのは?」
わざとらしい咳払いをする島田生徒会長は、改めて僕にそう尋ねる。
「ええ。実は同好会でライブを校内でやりたくて、そのお願いに」
「……ふむ」
僕は答えた後、作った企画書を渡してその目的を口にした。
近く、大きなイベントに参加をすること。そのために、腕試しといった感じで学校でライブをやるという内容だ。
「君たちが軽音楽部と同じライブイベントに出ることは、承知している。つまり、イベントに出るためのことか」
――それは、今僕がざっくりと話したことを復唱しただけでは?
そう思いながら、島田君の話しに黙って聞いている。もしかしたら、彼はぽんこつではないかと考えながら。
「はははー! 島田君、キョウちゃんの言ったことをそのまま口にしてるー!」
「……っ!」
――こらこら。おまえは、空気を読めないのかよ。笑いながら言ったら、島田君の機嫌を損ねるだろうが……ライブが出来なくなったらどうすんだよ。
そんな心配をよそに、響子は笑い続けている。これは非常にまずい。
「とっ、とにかく! イベントで勝ち上がるためには、学校でライブをやる必要があってですね」
僕はすかざずそう島田君にしゃべって、話を戻す。そんな僕らに、他の生徒会メンバーはくすりと笑いながら見届けている。
「ねーねー! いいじゃん、島田君。あたしらの企画を生徒会で許可してよー! 同じクラスメイトの吉見でさー」
「きええええい! 響子。おまえは、もうしゃべるな!」
思わず金本と同じ奇声を上げて、僕は響子を黙らせる。そして、島田君は深いため息をついて口を開いた。
「まあ、君たちの同好会はきちんと活動をしているし、去年のような悪く目立っていないのは認めている」
「ですよね! 僕らはギャルゲーソングの良さを広めるために、真面目にやっていますから」
「だがしかし。前、会長のように特例で許可はしない。きちんと、精査して平等にしなければだ」
「えー! それで、この企画は許可してくれないのー?」
話の内容から、きちんと同好会を一つの部として生徒会で許可をしてくれるか話し合ってくれそうである。
「企画書を見て、生徒会で議論はする。だが、実は……」
そう言って、島田君は机の引き出しから一枚の紙を取り出す。そこには、軽音楽部が作ったであろう企画要望書があった。
「ん? なんですか、これ」
「見ての通り、軽音楽部が提出したものだ。まあ、中身は見てみたまえ」
手渡された紙をみんなで囲み、その書かれたものを見るとおどろく。
「「まったく、同じ内容だ……」」
そこには、僕らが企画をした学校でのライブと同じ内容が書かれていた。それは、軽音楽部も学校でのライブをやりたいということであった。
「君たちよりもだいぶ前に提出をされてね。今日はその会議をこれからやる予定なんだよ」
「それで……生徒会は許可をするんですか?」
「まあ、内容などに不備はないし、彼らの活動を評価をするならば許可する方向でいる」
「だったら……!」
軽音楽部が許可ならば、僕ら音楽研究同好会の要望も許可できるだろう。僕はそう思ったが、そこで口を閉じた。
軽音楽部と音楽研究同好会は、似ているようで似ていない部活。先に提出をしたほうを優先するのは当たり前だ。
軽音楽部がライブをやった後に、僕らも同じライブをやったところで他の生徒が聴きに来るとは限らない。
まさに、先手を打たれた。
「どうします? 岩崎先輩。これじゃあ、軽音楽部と被っていますよ。それって、やりにくくないですか」
「うん……そうだな。まさか、大石君も計画をしていたなんて予想外だったよ」
瑠偉に言われた僕は、そう神妙な顔で答えた。
「えー! それじゃあ、あたしらの企画が水の泡になるじゃーん! どうにかしてよ、島田君ー」
響子は迫るように島田君に近づくと、そうまくし立てる。その勢いに、島田君はおどろいて身を引く。
「おっ、落ちついて! 馬場さん。近い、近い」
「響子! どうどう……」
僕らは響子を制止させて、体を引っ張る。
「もし、あたしたちの要望を却下したら、明日から教室でさらに孤立させちゃうぞー!」
「まてまて。それは、もう脅迫じゃないか」
強硬手段に出ようとそんな怖いことを話す響子に僕がそう口にすると、島田君が座り直して話す。
「まあ……同じイベントに出る部活動であり、今回の要望はほぼ同じ。そうならば、音楽研究同好会の要望書も一緒に会議に出すのがいいだろう」
それは妥協案なのか、それとも僕らへの忖度なのか。けれど、僕らにとってそれは朗報だ。
「ということは、僕らのライブもできるってコト?」
「そうしなければ……僕の身が危ないような気がして」
そこは生徒会長としてではなく、ただの島田君としての本音だろう。
とりあえず会議の中に僕らの企画書も含まれると話された僕らはひとまず生徒会室を出ることになった。
会議が終わり、生徒会から正式に結果が出るのは数日後。それまでは、練習に集中する。
そして、後日。僕らが学校でライブができることが正式に決まった。
「それはいいんだけれど……まさかなあ」
許可の書類を受け取ってその内容を見た僕は、どうしたものかという心境だ。
――校内でのライブ演奏は、軽音楽部並びに音楽研究同好会が合同で行うものとする。
そう、書かれていた。
つまり、軽音楽部と対バンという形でライブをやることだ。




