表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
激闘!ライブバトルに参加して、勝ち上がれ!準備編
72/215

第六十八話「入れ替わりボーカルの期待と、コーラス軍団の不安」

 僕はマイクを口から離し、曲を歌い終わる。


 ギャルゲーソングは女性が歌う曲が多く、僕が歌うにはハイトーンで歌いずらいと思っていた。


 けれど、この曲は僕の声質でも苦しいとは感じなかった。なんとも、不思議な気分。


「あの……なぜ、みんなはずっと黙ったままなのです?」


 歌を歌い始めてから、今にいたるまで誰も言葉を発しない。


 異様な空気の中、僕がそう恐る恐る尋ねる。


「岩崎君……キミってやつは」


 最初に口にしたのは、金本であった。予想外だと思ったのか、おどろいたような様子を見せた後に、いつもの口調で話す。


「なんですか。あまりにも僕の歌がひどくて、引いているんですか?」


「ふはははは! 君は、僕をなんだと思っているんだい!」


「いや、いつものように悪口でも言うんじゃないかと」


 僕は疑いの目で金本を見ながら答えると、金本は顔を真っ赤にして怒り出す。


「まあまあ! ここは、金ちゃんの代わりにあたしが話しましょー」


「ええい! 僕に岩崎君を怒らせろおおおおお!」


 金本が放つ怒りの声を止めさせ、響子が話す。


「まず! キョウちゃんは歌ってみてどうだった?」


「え? うーん……そこまで歌いにくさはなかったかな。今までで、一番歌えたギャルゲーソングだった」


 僕はそう思ったことを答える。音程とかは、少し外れていたかもしれないけれど。


 まだ完璧に歌えていないと考えていると、響子は僕の肩をポンッとたたく。


「メインボーカルは、キョウちゃんにやってもらいましょー! あたしがコーラスとハモリをやるわ」


「おいおい! 説明になっていないぞ? いきなり、決めるんじゃないよ」


 唐突のボーカル変更に、僕は納得がいかずに響子に言葉を返した。


「岩崎先輩、自分で気づいていないんですか?」


「あ? なにをだよ」


 僕らの会話を横で聞いていた瑠偉が、僕に尋ねる。他のみんなも、意外そうな顔で見つめる。


「先輩が歌を聴いた時、すごいと思ったんですよ」


「うん、曲のイメージが、ばあっと広がった感じです」


「……なにを言っているんだ? おまえらは」


 瑠偉と瑠奈の言葉をよく理解していない僕は、頭にはてなマークがつく。そんな僕に、芹沢さんが説明をしてくれる。


「つまり、この曲に合うボーカルは響子ちゃんよりも、岩崎君の声だってことだよ? わたしも、聴いてこの声ならすごい演奏ができると思ったもの」


 そう熱く語る芹沢さんの言葉に、僕はようやく理解をした。


 そこまでみんながおどろくほど僕はうまく歌えていたのだろうか。おおげさではないのかと思ってしまう。


 けれど、みんなの様子を見ると僕がメインのボーカルをやる前提で話している。


「まったく! そろそろ、自覚をしたまえ。君にも歌えるギャルゲーソングの一つがあるということに」


「数々のギャルゲーソングを聴いてきた先輩から見て、僕のボーカルがこの曲をさらに広められるように思えますかね?」


 僕は金本にそう尋ねてみる。ギャルゲーソングのことを一番良く理解しているのは彼しかいないし、金本が太鼓判を押せばだいたいがうまくいっていたからだ。


「まあ、今のままではダメであろう。これからさらにボーカルを鍛えて、完璧にこの曲に合うように歌いこなさないとだ。もし……それができたのならば」


「できたのならば?」


「おそらく、これまで僕らがやってきたライブの中で一番となるだろう。これから参戦をするイベントで、優勝を狙えるレベルだ」


 いつにもなく、真面目に話す金本の声は本心から言っているように聞こえる。それだけ、僕のボーカルに衝撃を受けたと理解した。

 

 金本の言葉に、僕は重みを感じて答えた。


「僕、やりますよ。メインボーカルとして、このギャルゲーソングでイベントに参加するすべてのバンドを超えてみせます」


「うむ! その心意気や良し。このイベンドでギャルゲーソングの素晴らしさや良いものだと知らしめてやりなさい。そして、今の若者どもに自覚させるがいい」


「ええ。ギャルゲーソングが、そこらへんの楽曲より最高だということを」


 金本のギャルゲーソングを世に広めたい動機は、同年代の学生たちにバカにされていたのもあるだろう。オタクしか聴かないと思われているから、異を唱えるために同好会を立ち上げた。


 そして、僕らも参加をする学生たちが集うバンドのイベント。まさに、このイベントでそれをわからせてやる最大のチャンスでもある。


 金本の想いも胸に、僕は必ずイベントで成功をしてみせると誓う。


「よーし! ならば、さっそく歌の練習だ。岩崎君には、喉が壊れるくらいに歌ってもらおうか」


「金本先輩の指導が入ると、喉どころか精神的にも壊れそうなんですが……」


「きえええい! 君は黙って練習をしたまえ! ギターもついでにみてやろう」


 金本は僕の腕をひっぱりながら、ギターと歌の練習に付き合う。なかなかのハードな練習になりそうだと思いつつも、僕は練習を始めた。


 しばらく金本の指導を受けていると、なにやら他のみんなが集まって話し合っている。


 ――みんなで話してなにをしているんだろう? めずらしいな。


 瑠偉や瑠奈はともかく、響子や芹沢さんまで集まっている。そんなみんなを見ながら、僕が練習をしていると響子がこちらにやってきた。


「ねえー! キョウちゃん、金ちゃん。実は、相談があるのだけれどー」


「ん? なんだよ、相談って」


「馬場さんや、キミもコーラスとハモリをやらねばならぬのだから、真面目に練習をしたまえ」


 僕らがそう響子に言うと、歌詞が書かれている紙を僕らに見せて答える。


「そのコーラスとハモリなんだけどー、あたしだけじゃなくてーみんなにもやってもらおうかなって思うのよー」


「「それはおまえが、楽をしたいだけじゃないのか?」」


 僕と金本は同じことを口にした。すると、響子が不機嫌そうな顔をする。


「ちがうよー! ほら、曲のコーラスって複数人が一緒になって歌うところもあるでしょー? 雰囲気を際立たせるには、いいかなーって」


 たしかに、コーラスを歌う人数が多ければ、それだけ曲の雰囲気は良くなるしバンドの演奏も盛り上がる。


 より原曲を再現するならば、響子のアイディアは正しい。


 しかし、僕と金本はそこで疑問を持った。


「おまえはともかく、他のみんなは楽器を弾きながら、コーラスができるのか?」


 楽器を弾きながら歌うのは、そこそこ難しい。芹沢さんたちにそれができるのかが問題だ。


「ふっふっふ! そう言われると思って、さっきみんなで集まって軽く練習をしたのでーす!」


 得意げに話す響子はみんなを呼び、横に並ぶ。


「とりあえず、今回はコーラスだけでも聴いてごらんなさーい!」


「おっ、おおう……」


 僕は響子の勢いにおどろきながらそう口にすると、原曲に音が聴こえてくる。


「はい! せーの!」


「「「ふにゃああああぁ!」」」


 響子の掛け声の後、三人は大きな声で歌い出した。その声は、バラバラで誰一人もタイミングが合っていない。


 さならが、悲鳴のようなコーラスに僕と金本は言葉を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ