第四十八話「ライブが決まったよ!全員大集合だ!」
「えー。第二回、音楽研究同好会の会議を始めまーす……」
――パチパチ。
小さな拍手が部室に鳴ると、僕は話を続ける。というのも、こんな会議をしなければいけない理由は、前日に部室に現れた生徒がきっかけだった。
「まあ、僕もどんな経緯でそうなったかわからないけれど、生徒会からの要請だ。来週に行われる部活動の大報告でライブをやることになったわけだが」
そう。部室に現れたのは生徒会の役員。そして、その口からは僕らに大報告会で演奏をやってほしいという。
「けど、なんでー? それって、軽音楽部の代わりに出ろってことでしょうー? どうしたのよ、軽音楽部は」
「そうですよ……いきなり、ステージの上で。しかも、学校の偉い人たちの前で弾くんですよね? 急な話で頭が追いつかないです」
「ライブと言っても、練習中の曲を人前で弾けるほど完璧じゃないから不安かなあ」
みんなは突然のライブをやることに、消極的。たしかに、それは僕も同じ気持ちであった。
演奏できる曲は少なく、そのために新しい曲を覚えている最中に来たライブの要請。普通ならば、断るのが正解だろう。
「それなのに、金ちゃんが勝手にオーケーしちゃったのがなあ……」
「あの人、すごい笑みを浮かべて生徒会の人と話してたよな。自分は弾かないくせにさ」
よりによって、承諾をしたのは居合わせた金本。僕らの意見など聞きもせず、一人で決めてしまった。
同好会にはもう籍をおいてはいないのだが、あの金本を止められる者などいないも事実。結局、そうこうしている間に僕らがライブをやることが決定事項となる。
「けど、本当に軽音楽部の人はどうしたのかな? 出れないってよほどのことよね?」
「ああ。なんでも、最近の流行りであるウイルスに感染して入院したらしいよ。正直、ざまぁと思ったね」
大報告会に出る予定であった軽音楽部は、不幸なことに部員の全員がウイルスによって不参加。そう生徒会の人が話していた。
そこに同じようなバンドをやっている僕らの同好会が、代わりを務める。
「まあ、生徒会や金本先輩を止められるようなことはほぼ無理だろうし。ここは、僕らでやるしかない!」
「やるしかないのは結構ですけど……当日に弾くのが覚えたばかりの曲でいくんですか?」
「ああ。三曲は時間的に無理だからな。ここは、芹沢さんの選んださくりんが歌う曲のカバーでいく!」
ライブができることになったのだから、ここは新曲を披露するにはもってこいだ。この機会を逃したら、いつライブができるのかわからない。
僕は絶好のチャンスだと思い、そうみんなに話す。それを聞いたみんながしばらく黙った後、大きくため息をついた。
「はあ……岩崎先輩がそう言うなら、俺たちは従うしかないですよね」
「だねえ。けど、やっぱり人前でドラムをやりたいって欲のほうが強くなるものだし。やるしかないよね!」
最初に話したのは瑠偉と瑠奈。二人がそう答えると、僕はうなずく。
「こういうハプニングって、あたしらは何度もあったしねー。みんながやるなら、歌うしかないでしょー!」
「ああ。去年のように、堂々と体育館のステージで歌ってやれ!」
元より、響子がライブをやることに反対するわけがないとわかっている僕はそう言ってやる。
「芹沢さんはどう? 形はどうあれ、また学校で弾くことになるんだけれど……」
「うん! わたしは大丈夫だよ、岩崎君。みんなで練習を頑張ってきたんだし、わたしはみんなとギャルゲーソングを届けたい」
「ううう……芹沢さん」
芹沢さんの強い意思に僕はつい感動してしまう。なにより、彼女の口からギャルゲーソングを届けたいという言葉にうるっとした。
「でも……大報告会までに、曲が完璧に演奏できるかが心配。それに、わたしが選んだ曲でいいの?」
芹沢さんはそう不安そうにしながら、僕らに話す。
まだ自信を持って弾けるとはいえない状態である、僕らのバンド。それに、瑠偉たちの選曲より自分が選んだ曲をやっていいのかという申し訳ない気持ちが芹沢さんにはるのだろう。
「俺たちことは気にしないでください。芹沢先輩の選んだ曲。それに、あのアレンジしたやつのほうが、良いに決まってますよ!」
「そうですよ! むしろ、そっちのほうがやる気が出ますよ」
「二人とも……ありがとう」
芹沢さんは瑠偉たちに頭を下げて感謝を述べると、二人が恐縮する素振りで芹沢さんと話している。
――とりあえず、みんながライブにやる気を出してくれて良かった。
「ほう……では、話がまとまったとこでいいかね? 岩崎君や」
僕がみんなを見ていると、横から気持ち悪い声が聞こえてくる。振り向く先には金本の顔が至近距離にあった。
「うわああああ! 気持ち悪い顔だ! なんですか、いきなり……金本先輩」
「きさまあああああ! 気持ち悪いとはなんだああああ! 見慣れた、優しい先輩の顔だろうが」
「そんな顔を近づけてくるんですから、気持ち悪いに決まっているでしょう! というか、なにをしに来たんですか?」
いきなり現れた金本におどろきつつ、そう尋ねる。
「ふっ……君たちが大報告会で成功をするために一肌脱ごうとね。この金本が率いる、最強の助っ人を用意したのだ! さあ、カモーン!」
――ガラガラ。
金本のハイテンションな声が部室に響く。そして、扉が開く。
「やあ、岩崎君。なにやら、面白いことになってきたようだね」
「けっ、けど……生徒会も無茶なことを言ってくるなあ」
「今年の生徒会も、前とたいして変わらないよな。けどまあ、たしかに面白そうではあるね」
「……先輩たち」
そう言って中に入ってきたのは和田や荒木。そして、岡村。かつての音楽研究同好会にいた先輩たちだった。
「あの……いったいどういうことですか? 受験勉強で忙しいのでは?」
「君は僕らに会うたびに、受験勉強のことを話すね」
そう和田は呆れたように答える。
「まあ、受験勉強が少し落ち着いたからね。だから、金本に言われて僕らも手伝いにきたのさ」
「まさか……先輩たちが僕らに?」
「そうに決まっているだろう! 当日まで、僕らが各パートの指導をしてやるのだ。安心したまえ、僕らがいれば数日で完璧になるだろうさ」
そう金本は僕らに向かって、大声で口にする。
こうして、金本たちによる協力で僕らは練習をする。来る、大報告会のライブを成功させるために、音楽研究同好会のフルメンバーが集結した。




