第三十九話「足りない!こうなれば、増やすしかあるまい!!」
体育館を無断で使用したことを生徒会にバレて、僕は生徒会長からひどく怒られる。
「はあ……また反省文を書かなきゃなのか」
結果的に僕らは一週間の活動停止。それに、同好会代表者の反省文の提出だ。
顧問の許可を得ようとも、事前に生徒会や学校側に相談しないでやってしまったのが悪いらしい。
少し納得がいかないものの、僕はおとなしく反省文を書いている。
「さあ、キョウちゃん! さっさと書いちゃいなさいよー」
「ええ、そうですよ。それくらいをやってもらわないとです」
部室の中で僕が書いていると、横で響子たちが話している。
体育館で僕がやったミスを、根に持つような態度。たしかに、悪かったと思っているが、なにもここまで責めることもないだろうか。
「あーあ。あのミスがなければ、完璧に合わせられたのになー」
「……うぐっ」
ダメ押しで響子が、僕に聞こえるような声でわざとらしく口にした。
「けどさ。初めてにしては上手くできましたよね? 音がピッタリと合っていたし」
「そうねー。普通はどこかおかしい所とか出てくるんだけど、歌っていてそういうのはなかったなー」
「演者として言うのもアレですけど、バンドのアレンジもいい感じでしたね」
僕を除いて、みんなは体育館でやった練習を振り返っていた。
元々はエレクトロ系のテクノっぽい曲調だが、それをロックバンドの音にアレンジした。ガラリと変わる曲の雰囲気に、僕は自信を持っている。
このアレンジで文句はないし、間違いなくライブでもウケるはずだと。
「後はライブをやりながら調整していくって感じでいけばいいかなー。ほら、その時のライブによってポテンシャルが変わったりするしー」
「曲を覚えた意味ではオーケーですよね? けど、まだあたしたちって演奏できる曲が二つのみですよ」
話は変わって、瑠奈がそう響子に相談している。バンドとしてできる曲数は、たしかに少ない。
やはり、演奏できるギャルゲーソングを増やすのも必要だ。
「だったらさ! またみんなで曲探ししよう。前みたく、ビビッとくるギャルゲーソングに出会えるかも!」
僕はそう席を立ち、隣で話す響子たちにむかって話しかけた。
「岩崎君、そこの文字が間違えているよ?」
「芹沢さん……」
そんな僕に、芹沢さんは冷静な口調で反省文の誤字を指摘する。今は反省文に集中しなさいという覇気を彼女から感じた。
「まあー、たしかにそうよねー。本格的なライブを考えるなら、レパートリーを増やすのが当たり前かー」
「ギャルゲーソングを広める目的なのはわかりますけど。正直、ほとんどが良曲すぎて全部をおすすめしてあげたいくらいですよ」
「それはそうだけど……なかなか受け入れづらいジャンルなのが、現実なのよねえ」
はあっと瑠奈がため息をつく。事実、彼女の言う通りでギャルゲーソングの良さを広めるのはそう簡単ではない。
去年の僕らが行った活動でも、大きく変えたとは言い難い。
「けどー。じわじわと浸透させていけばいいんじゃない? この学校にいる生徒の一部は、普通にギャルゲーソングを聴いている人もいるし」
「え? そうなんですか?」
響子の言葉に瑠偉はおどろく。まさか、ギャルゲーソングを聴く人が他にいたことが意外みたいだ。
「うんー。まあ、同じ学年の男なんだけどねー! 見るからに陰キャっぽいんだけど、結構古いギャルゲーを聴いてたねー」
「スマホの美少女ゲームが主流なのに、よくもまあ聴きますね」
「古いって言っても、全然悪くない曲だと思うよー? イヤホンから漏れた音聴いたけど、あれはいい曲で間違いないしー」
「少なからず、この同好会の活動のおかげ……ってことですかね?」
「んー。そうじゃないかな? ギャルゲーソングを再認識させれるのは、あたしらの同好会でやらなきゃだしー」
理由はどうあれ、響子の言うようにこの学校にいる生徒の何人かは僕たちの活動で再びギャルゲーソングを聴き始めたのは間違いない。
地道であるけれど、ちゃんと活動をやってよかったと思うこともあった。
「僕らのやってきたことにはきちんと意味があるってことだ。だからこそ、さらに知らしめていく必要があるんだよ。よし、反省文は完了だ」
反省文を書き終えた僕はそう口にする。
「とりあえず、もっと弾けるギャルゲーソングを増やしていかなきゃだな」
「けど……やっとこの前の曲を弾けるようになったばかりですよ? すぐにまた新しいのをって難しくないですか?」
瑠奈はそう心配そうに答えるが、僕は大丈夫だとうなずく。
「瑠奈の言うこともわかるけれど、やっぱりやりたくなるだろ? 自分らが好きなギャルゲーソングをバンドで弾くのを」
僕も含め、この同好会にいる人間は、ギャルゲーソングが好きなはずだ。そうならば、心の中で思っていることがある。
――ギャルゲーに使われている、この好きな曲を自分で弾いてみたい。そして、それを誰かに聴かせてやりたい。
そんな思いがあるはず。ギャルゲーソングが好きであり、楽器を弾くのも好きならばと。
僕がそう投げかけように話すと、瑠奈たちは確かにそうだという表情を浮かべる。
「わたし、いろんなギャルゲーソングをもっと知りたいし、届けたいと思う!」
いきなり、芹沢さんはそうはっきりとし声で僕らに話す。
このメンバーの中で、彼女はまだギャルゲーをそこまで知らない。けれども、芹沢さんは芯があるような思いで口にしていた。
それは、芹沢さんの中でギャルゲーソングが素晴らしいものだと本気で思っているからだろう。
「まあ……それを言われたら、俺たちだって」
同じことを考えていた瑠偉と瑠奈は互いを見て、そう口にする。結局のところ、僕らは全員同じ考えを持っていた。
「じゃあさー! みんなでもっと考えよっか! 聴いてもらいたいギャルゲーソングを」
最後に響子が締めるように、僕らへ声をかける。
「ああ! どんどん曲を弾けるようになって、ギャルゲーをライブでやる! 聴く人に届けよう!」
「「おおー!」」
僕の言葉に、全員が声を上げる。
こうして、僕らの新たなギャルゲーソング探しがまた始まる。




