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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
最終章!僕らのギャルゲーソングを紡ぐ物語は終わらない!主催イベント決行編
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第二百二話「和田軍団、いざ出陣!」

 和田たちがステージに立って演奏をするのは、久しぶりだろう。


 受験勉強。そして部活動の引退などもあり、和田たちは同好会メンバーとしてギャルゲーソングをライブでやる機会はないに等しかった。


 教室や部室で弾いたのを聴いたが、決して実力は衰えていない。先輩たちの腕は、去年と変わらず曲を弾きこなすレベル。


 だが、それは観客がいない場所でのこと。いわば、お遊びのようなものだろう。


 そんな彼らが、もうすぐステージで曲を披露する。


「大丈夫かなー? 去年ぶりでしょー、ライブをやるのは……心配ー」


「とは言っても、和田先輩たちの演奏力はすごいですから。ねえ、岩崎先輩」


 軽口で話すがどこか心配している響子。それに対して、実力で大丈夫だと期待をする瑠偉たち。


 どちらも言っていることは理解できる。僕的には瑠偉の言うように、和田たちの腕を持ってすればライブは問題なくできる。


 しかし、本来いるはずの金本はいない。彼がいてこそ、和田たちのパフォーマンスは光るのだ。


「芹沢さん……頼むぞ」


 そう小さな声で僕はつぶやく。


 みんなが見守る中、和田たちのパフォーマンスが始まる時間だ。


 会場の空気は、先ほどの仙道たちがやったライブの余韻が残って熱気を感じる。この次のバンドはどんなものか、期待しているようにも見えた。


 ――ざわざわ。


 ステージに立つ和田たちは、自分たちで簡単なセットチェンジをしている。


 音楽スタッフなどはいないため、仙道たちもそうだったがバンドがそれを自らやる必要があった。


 幸いにも、仙道たちと同じようなセットであるため手間取ってはいない。


「えー、おまたせしました。これからライブをやるのですが、その前に一言だけ」


 和田はギターを構えながらステージに置かれているマイクスタンドで、いきなり観客に向けて話す。


 突然のオタクによるマイクパフォーマンスに、会場がどよめいていく。


 ――一体、なにを言うつもりなんだ……和田先輩は。ここで、変な空気にしたら最悪イベントが終わってしまう。


 イベント全体的に見れば成功しているし、観客の数も最初に比べれば明らかに増えている。仙道たちのライブが終わった時点ですでに観客のいるスペースが満杯だ。


 和田の発言一つで、その観客たちが一斉に帰ってしまうこともありえる。


「頼むから……和田先輩、金本みたいに変なことを言ったり奇声を上げないでくれ」


 思わず僕は手で拝みながら、そう口走ってしまう。


 心配をする僕らに気付かずに、和田は深く息を吸って吐いて口を開く。


「真のギャルゲーソングというもののすごさを……見ていただこう」


 そう言い放って、速攻で和田はギターを弾き始めた。


 たった、一フレーズ。


 ギャルゲーソングのイントロのリフであるのに、心が引き込まれるような気がした。


 その原曲を知っている人。そうじゃない人とか関係なく、彼のギターの音色とテクを見て聴いてしまう。


 そんな確信するほど、会場の雰囲気は変わった。和田の言った一言がわずか開始数秒で証明されたように。


 ――ダッ! ダッ! ダダン!


 ギターの音に合わせるように、岡山もドラムが割って入って荒木のベースも重低音で重ねる。


「瑠偉の言う通りだったな、響子」


「だねー、というか……リハよりも音のメリハリがすごくない? 全然、曲の入り方が違うじゃんー」


「ああ。多分、急遽変更してぶっつけ本番でやったな……だけど、まるであらかじめ相談して決めたみたいに曲をうまく弾いているよ、先輩らは」


 滝沢さんや仙道のライブに触発されたからだろうけど、それでもいきなりアレンジを変更する行動をしたのはおどろきだ。


 結果的に良いスタートを切ったが、冷静で感情に流されない性格だと思っていた和田の意外な一面も見れたのかもしれない。


 曲のイントロで観客の関心を引き、掴みはばっちり。


 ――ここからは、芹沢さんのボーカルでどうなっていくかだな。


 芹沢さんはギターを弾きながら歌い始めていくが、その場の圧があるからか突然のアレンジ変更に対応できなかったのか、声がぎこちない。


 ギャルゲーソングだけに限らずイベントで初めて観るバンドの評価はボーカルの声がいいかを重視する。


 芹沢さんはギターがメインだし、ボーカルはそこまで特化しているわけではない。


 仙道のような感情を最大限まで爆発させたり、滝沢さんのような独特な世界観を持ってるとは言えない。


 だが、ギャルゲーソングを好きな気持ちとそれを伝えたい想いは僕らと同じ。


「他のバンドなど気にしなくていい……ただ、君の想いを歌に乗せて届ければいい。ギャルゲーソングの良さを」


 芹沢さんの実力はそんなものではない。やると決めたらやる女の子。


 僕はそう口にして、芹沢さんを見守る。


 和田たちの楽器演奏に観客は反応を示しているが、芹沢さんの歌はまだ人に響いているとはいえない。


 それはおそらく彼女もわかっているだろう。芹沢さんは、どこかタイミングを図るように歌い続けてギターを弾いている。


 サビへ向かうと芹沢さんはギターを弾く姿勢を変えて弦を思いっきりはじく。そして、マイクスタンドに口を近づけて歌声を響き渡らせる。


 感情がばっちりと入ったトーンで、綺麗に取れた音程で歌うメロディ。


 歌詞はギャルゲーだとわかるくらいのオタク向けなものだけど、そのギャップが斬新に聴こえる。


「なんか、芹沢さんのプレイスタイルって岩崎先輩に似てますね」


「うん、それはあたしも思った。サビの入り方も、盛り上げ方も岩崎先輩だね」


「そっ、そうか?」


 横で聴いていた瑠偉たちが芹沢さんの演奏する姿を見てそう感想を言う。意外な言葉に僕はおどろくが、そこへ響子も口を開いた。


「ありゃー、完璧に真似ているというか……まー、キョウちゃんには言わないでおこうかな」


「なんだよ、その意味深な言い方は……」


「気にしなーい! けどサビに入った途端、最初に比べてオーディエンスの反応が良くなってきてるねー」


 響子がそう言った後すぐに、観客席から大きな歓声が巻き起こっていた。


 僕は視線を変えて、ステージに目を向けると芹沢さんが普段見せないくらいのノリで和田たちと弾いていた。


 その姿を見て、僕は思う。それは去年、彼らと一緒に弾いていた自分を見ているようだと。


「このままいけば……このギャルゲーソングをみんなへ確実に届けることができる」


 過去の自分がそれを証明できたように、芹沢さんたちのパフォーマンスを見て僕は確信する。


 まだ曲は一曲目。和田たちと芹沢さんのライブはここから、さらに熱狂させていく。

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