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オタクと美少女はバンドでギャルゲーソングを知らしめたい?!  作者: 獅子尾ケイ
最終章!僕らのギャルゲーソングを紡ぐ物語は終わらない!主催イベント決行編
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第二百三話「ギャルゲーソングを歌うバンドはどうにもすごいのだ」

 和田たちと芹沢さんのバンド構成は、正直どんな演奏になるかわからなかった。


 僕よりもギターやボーカルを長くやってきたわけでもなく、ギャルゲーの知識も同好会メンバーの中ではそこまであるとはいえない。


 けれど、彼女なりの努力でそれらをカバーしてきた。


 その結果、今ではバンドの即戦力でもある。


「こうやって見ると、悪くないバンドだよねー」


「ああ。和田先輩たちとも波長が合っているのか、音に違和感がない」


 演奏を聴く僕と響子は、芹沢さんの姿を見ながらそう会話をしている。


 和田たちの楽器を弾くレベルは高い。ライブが進むたびに昔の感覚を取り戻している。それに対応できる芹沢さんのテクニックも見事だ。


「普通のバンドとして見ても、中堅以上の実力だし……なんだったら僕よりも上だな」


「まちがいないー! けど、少なくとも観客の何人かはギャルゲーソングを弾くバンドでも悪い印象に思えないっていう考えを持っただろうねー」


 そう言って響子は観客席の方を見つめて話す。僕もその方向へ目をやると、一際にぎわってライブを楽しむ人が見えた。


 バンドのティーシャツ。派手な髪型。見るからにライブハウスが好きそうなイメージで、おそらく仙道たちのファンだろうか。


 ギャルゲーとは無縁。もしかしたら、そんなものを気に入るはずがないといった人たち。


 けれど、そんな人たちもギャルゲーソングだと知っても他のバンドと同じように受け入れてくれている。


「去年もそうだったけど、こういう光景を見たり感じるのが一番ギャルゲーソングをやっててよかったと思う」


「それなー!」


「ああ。僕らもああいう雰囲気で、ギャルゲーソングの良さを最大限に披露しよう」


 僕はそうライブを楽しむ人たちを見て、そう響子に話す。


 そこへ、瑠奈が僕らに声をかけた。


「先輩! わたしたちもいるってことを忘れないでくださいよね! それに、オリジナルのギャルゲーソングも大いに知らしめてやりましょうよ」


「そうですよ。坂田氏のために作った曲をアピールできるチャンスです!坂田氏もひょっとしたら見に来てくれてるかもですし」


 瑠偉もそう話に加わる。二人の言いたいこともわかるし、もちろんそのつもりだ。既存のカバーも全力でやるが、オリジナルもそれ以上の意思を持って弾く。


 このイベントでオリジナルをやるのも目的の一つだし、ライブでやるとどう反応されるかを知る機会でもある。


「けどまあ、さすがに坂田氏は来ないだろう……な?」


 瑠偉が坂田氏が来ているかもと言って僕は観客席を見渡すと、隅っこのほうで双眼鏡でステージをのぞく怪しい人物を見つける。


 ――坂田氏だ。


 あのオタク感を醸し出す人物は、金本か坂田氏しかいない。


 一瞬でわかってしまう僕は呆れつつも、少し坂田氏の様子をうかがう。最初こそ双眼鏡で覗くだけだが、次第に体を揺らしてノッてきていた。


 原曲を知るオタクが、ライブでああいうノリでいるということは少なくともギャルゲーソングを知る人が満足する演奏だと思うことができる。


「あれ、坂田氏じゃんー!」


「ああ。なんだかんだ言って見に来てくれたみたいだね……こそこそしないで普通に見ればいいのに」


「オタクで陰キャなら、しかたないでしょー。まあ、ギャルゲーを知る人もイベントを見に来てるはずだけども、みんなああなのかねー」


「オタクにもとりけり……」


 坂田氏に気がついた響子がそう話す言葉に僕は答えると、出入口のほうからさらに人が来る姿が見えてくる。


 どう見てもオタクだろう。スマホをいじりながらコソコソといじりながら、観客席に入ろうとするとその人の多さにおどろく顔をしているのがよく見える。


 それと同じタイミングで、芹沢さんたちは曲を終え次の曲を弾き始めた。


 演奏が始まると、それを聴いてテンションが上がったのは、来たばかりのオタクたちだ。


「この曲って……」


「ギャルゲーソングの中でも有名な曲だねー。知ってる人ならライブで聴けてうれしいはずー」


「まあ、弾いてみた動画はよく見ますけどバンドでカバーは見かけないから気持ちはわかりますね」


「見た限りでは原曲に厳しいオタクがああいうテンションで盛り上がっているんですから、ひとまず受け入れは安心ですねえ」


 瑠偉の言う通り、聴いた原曲を知るファンが熱狂して聴いてくれてるようでホッとする。


 しかし、弾き始めであそこまで観客に魅せる芹沢さんたちのパフォーマンスレベルがこのイベントで格段に上がっている。


 そう思わせるほどの曲とバンドの完成度だ。


 岡本の叩くドラム。曲が進むにつれてその迫力が増していく。ハイハットをスティックでたたく時のシャーンという音が、耳に強く残る。


 ドラムのリズムに合わせながら、ベースを弾く荒木。ピックで弾かず、今回は指で弦をはじいて鳴らす。抜群の安定したベースラインで、原曲と同じフレーズを正確に再現している。


「こうやって改めてライブであの二人の演奏を聴くと、そのすごさがわかるな」


「だねー。一緒にライブしてた時もすごいのはわかってたけど、聴く側でいると、違って聴こえるね」


 去年、彼らと一緒に演奏していた僕と響子はそう荒木たちの演奏を聴きながら思ったことを口にする。


 彼らはギャルゲーソングというものを心から好きであることや、それを人に聴かせたいという思いが、アンプから出る音で伝わってくる。


「けど、やっぱりギターを弾く二人がなによりも映えさせていますよね」


「同じリズム隊ですからわかりますけど、ギターが曲全体の雰囲気を形にしてるのがはっきりとわかるテクニックで弾いてますよ……先輩たちは」


「ああ。和田先輩のギターが曲の土台を作って、芹沢さんのギターとボーカルが曲のイメージとギャルゲーの世界観を届けているよ」


 芹沢さんと和田のギター。くやしいが、二人の相性は僕に比べて格上だ。


 そう思わせてしまうほど、ステージから聴こえるギターの音色すべてが聴き心地がいい。


 ――わああああああ!


 それが同じだと思っているくらい、観客の歓声は大きくなっている。ギャルゲーソングの良さがこの場にいる人に確実に届いた証拠だ。


 歓声に応えるように、芹沢さんたちはステージで弾き続ける。


 まだ、ライブは終わりそうにない。

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