喫茶店の死闘
「どこに行っても逃がさんぞ!」
俺は藤森勉日本人とアメリカ人のハーフの男子高校生だ。俺は帰還してから最近まで引きこもりライフを屋敷で送っていたのだが、メイドが俺のことを密告しやがった。
俺はイケメンエリート高校生(自称)で、三次元に可愛い妹もいるし、二次元に嫁がいるのでリア充だ。変態とか俺のことを妹はバカにするが、変態で何が悪い。最近は一緒にお風呂に入ってくれなくて、お兄ちゃんは寂しいです。
それはいいとして、警察を蹴散らしたらDDPFの奴等が俺を処分しにやって来た。企業ホームページで見た如月とかいう2月野郎がこの場にいないのは幸いだ。運が良かった。
あいつと俺はほとんど入れ替わりだったが、あいつが異世界で戦っているのを見たことがある。あれは強すぎる。まず勝ち目がない。今日は非番なのか、他の現場にいるのかもしれない。
奴がいないので俺に生き残る可能性ができた。
俺は絶対に捕まってやるもんか。日本でも野良帰還者の数はそこそこいるらしいし、パパンとママンは大金持ちなので逃亡資金は十分にある。数人程度なら返り討ちにしてやる。
「聞いた話だと、この先の喫茶店に行くと良いことがある!」
あの女は胡散臭かったが、喫茶店に行くべきだと俺は本能的に悟った。そして、喫茶店に飛び込んだ。
「ありゃりや?」
何人か人はいたが、それだけだった。勘が外れた。
まあ、いいや。こいつらを人質にすれば問題なく敵の魔法を封じることができる。
「おい、かかってこいや。俺に勝てると思うなよ!」
俺に勝負を挑むとは良い度胸だ。この容姿で実は運動音痴な俺にどこまで通用するかな?
「紅蓮爆裂疾風拳!」
俺は力の加減が下手である。だから、相手に攻撃するときは常に全力である。俺はすべての力を拳に込めて、相手に殴りかかった。目の前に紅蓮の溶岩を飛ばし、相手にぶつける技だ。
凄まじい熱量で敵を焼き尽くすのがこの技の特徴だ。攻撃速度が遅いのが難点だが、今回は敵の1人の足に当たった。
「痛てぇよ。体が溶ける。誰か助けてくれ。」
この技は相手の魔力を吸収し、でかくなる。少しでも溶岩が付着したらお陀仏だ。
「ぎゃあああ」
足を飲み込み、胴体を飲み込み、最後に頭を飲み込んだ。俺が開発したオリジナル魔法だ。対type1用に開発した技だ。当たったら死ぬ。
「よくも仲間を殺してくれたな!許さん!」
さっきまでと違い、本気で潰すつもりのようだ。4人いたのが3人になった。1人ずつ狩ってやる。各個撃破だ。
「炎の踊り子」
「豪腕の豚男」
「土竜王」
3人とも身体能力を強化するタイプの技を使ってきた。中々の錬度だ。実践経験豊富であることが一目で分かる。
こちらもオリジナル魔法を見せてやろう。
「激おこぷんぷん丸」
俺のオリジナル魔法であるぷんぷん丸は魔法で形成された名剣である。こいつの一太刀を受けると良い。
炎を纏った女が最初に突撃してきた。直線的な攻撃だ。動きを見切って俺は女を正面から切り捨てた。真っ直ぐに振り下ろすだけである。ぷんぷん丸は魔法を反射する。火だるまの女が大火傷を負った。
「気を付けろ、あの剣は魔法を反射するぞ!とっとと魔法を解除しろ!」
もう遅い。俺は敵に肉薄し、豚男に攻撃した。魔法が逆流し、相手の体がズタボロになった。俺のぷんぷん丸を前に魔法は無力。
「後はお前だけだ。覚悟しろよ。」
「くそったれ、死んでたまるかよ。」
俺は奴の魔法を反射できるが、向こうも魔法を使わなければ意味がない。俺の魔法も初見殺しなのでネタが割れたら有効打にはならない。詰まるところ、体術勝負となる。
敵が右拳を突き出すが、俺はこれを避けて、カウンターの左アッパーを相手に叩き込む。運動は得意ではないが、喧嘩は得意だ。相手の動きを見切ってひたすら攻勢に出る。俺は相手の足を引っ掻けて転ばし、相手の上に覆い被さって首を締め上げた。そして、柔道の裸締めを決めた。
「が、は、は、あ」
相手が窒息死するまで俺はやめない。思い切り締めて、抵抗が弱くなったところで首を引きちぎって殺害した。
先程の男と女がそれぞれ携帯で本部に連絡しようとしていたので、素早く喫茶店にあったフォークを首に投げつけて止めを刺した。
「よっしゃああ、勝った!」
簡単に制圧できた。事前にDDPFに所属する奴らの戦闘データをパパンから受け取っていたのが幸いした。そのおかげで勝利をもぎ取ることが出来た。
さあて、次は……
「ば、ばけもの」
「人殺し」
「マ、ママ」
目撃者はいらない。後始末をさせてもらう。
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「さっきから見られていたな。」
戦いの一部始終が外からも見られていた。店は完全に焼き尽くしたが、店の外にいる野次馬を殺さなくてはならない。
「きゃああああ」
「死ね」
集まっていた野次馬に攻撃をし、魔法で跡形もなく消し飛ばした。スマホで俺を撮影しているだろうが無駄だ。俺は周囲の光を魔法で屈折させているのでぼやけて見えるはずだ。顔も違った風に写真には写る。
一匹残らず逃がさない。俺は思い違いをしている野次馬を断罪する。
「紅蓮爆撃破」
戦いを見ていた奴はあの世に行ってもらった。そして、この辺り一帯半径50メートルを爆発させて吹き飛ばした。
「あの喫茶店の中の魔力の痕跡とビルの上から感じる魔力が完全に一致する。接触してみるか。」
俺は相手に会おうとしたが、その時には既にいなくなっていた。
「俺の敵か味方か分からない以上、迂闊に近づくことはできないな。また今度会うとするか。」
今はこの場を脱出することから始めなくてはならない。大暴れしたからな。あまり長くここにいると2月野郎がここに来てしまう。そうなったら秒殺されてしまうので、それだけは避けたい。
ここを離れたらネットカフェ生活を始めるとするか。
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「全滅か。」
大爆発の発生から20分後、俺は現場に駆けつけたが、そこにはぽっかりと穴が空いていた。穴の中には建物の残骸と多数の誰のものか判別のできない肉片が落っこちており、野次馬たちが写真を撮っていた。
俺は何で居合わせなかったのだろうか。今日は兄弟の運動会に行ってきたが、後悔している。今回の休暇は上からの命令で無理やり取らされた。つまりは標的に逃げられることは出来レースだったのだろう。最初から全滅する予定だったのだ。
「誰か情報を漏らした奴がいるな。」
今日死んだ4人はDDPFの中では手練れだった。type1に迫る強さだ。一人のtype4に遅れを取るとは思えない。全滅したのは相手が無茶苦茶強かったというよりも、手の内が読まれていたからではないか。クレーターの規模から考えるとそうだと思う。今回の敵はtype1クラスの実力者であることに加えて、情報のリークがあり、事前に対策をされていたのだろう。
俺がいれば確実に殺せたはずだ。今回の任務が失敗したせいで世間ではDDPFを非難するだろう。そして帰還者たちに対する憎悪も増す。
今回、脱走した男を各国のDDPFの支部で指名手配にかけたが、一般市民には公開されていない。主な理由は3つある。
第一に市民では帰還者を捕らえるのは不可能だからだ。下手に刺激すれば死人が出る。最低でも軍か同じ帰還者が出動しなければ話にならない。よって、市民には秘匿している。
第二に藤森家はこの国の政界と財界に多大な影響力を持つ名家だからだ。今回の任務はDDPFが独断専行して遂行したのだ。全ての責任はこちらが負うことになっている。たとえ政府からの圧力があったとしても、こちらが勝手にやったことにされるのだ。
第三に藤森勉はtype4だからだ。放置してもそこまでの脅威にはならないからだ。
この世界ではtype1やtype3が出現すると衛生からの画像が乱れ、出現した周囲の空間が歪むのに対して、type4は雑草のように気づいたら発生している。そしてtype4レベルなら戦闘機を出動させれば簡単に殲滅することができる。その気になればいつでも殺せる。もっとも、採算が合わないのでそのようなことはしない。
結局、異世界に行ったこともない無能どもは何もできないのだ。そして、俺のようなDDPFに所属している帰還者が代わりに対処してあげなければどうしようもないのに、俺達を蔑み、こき使い、使い潰すのだ。
「俺はこのままで良いのか?」
薄給で雇われ、同じ異世界からの帰還者を殺害し、誰にも感謝されることもなくずっと影からこの世界を守っていく。そんなことを俺は望んでいない。俺はそもそもこの世界に帰りたくなかった。否応なく長男としての責任がのしかかり、俺にブレーキをかけた。
異世界でもしちゃんとあの6人が連携していれば、俺達を呼んだ国の国王の暗殺を防ぐことができ、強制送還されることもなかった。そして、今も向こうにいたはずなのだ。
あの毎日がスリルに満ち溢れた世界に俺は飢えている。
ここに来てからずっと雑魚狩りしかやっていない。2年の間ずっと退屈だ。兄弟に再び会うことが出来て嬉しかったのも事実だが、俺がいない方が彼等も幸せだ。
俺がいるだけで家族は周囲から苛められ、のけ者にされる。俺がいなければ、あいつらは辛そうな顔をしなくて良いのだ。俺がいる必要性はない。
俺はtype4を限界まで極めたが、この力を活用する場はここにはない。
いっそのこと、あの六人を倒しに行くべきか?無理だ。type4ではtype3に絶対に勝てない。俺一人の力では勝てないのだ。
仲間がいる。一人では倒せない。
「何でこんなことを考えているのだろうか?」
俺は家族を大事にしたくてわざわざ自分から機械を取り付けてもらって、DDPFになったのではないか?俺は何をしたいのだろうか?
さっきから考えが纏まらない。とりあえずは現状を上に正確に報告するべきだろう。
だが、明日にしよう。今日はまだ休暇だ。家に帰って寝よう。
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翌日、俺は出勤が憂鬱でサボってしまった。昨日まで生きていた仲間が死に、その遺族の方に報告しに行った。
「死んでくれた良かった。」
「ざまあみろ。バチが当たったんだよ。」
「これで私達も救われる。」
「あいつが死んでくれてほっとしているぜ。」
自分の家族が死んだのに、声高に喜ぶ者もいた。俺は同僚の遺族が嬉し泣きしているのを見ると、無性にやるせなくなる。
あいつらが一度でもお前たちに直接、危害を加えたのか?
家族がいなければDDPFに所属することもなく、好き勝手に生きることができたのだ。ふざけるな。
「おい、遺体はいらないよ。葬式なんかしたら金がかかるからね。帰還者は人じゃないんだろ?ならそっちで遺体を勝手に処分しておいてくれよ。」
こんな奴ら、地獄に落ちれば良い。
「あ、あ、あ、あ」
じょばああああ
俺の怒気に少し当てられただけで恐怖のあまり失禁する情けない奴らだ。下等生物どもめ。
「遺体の心配はしなくて良い。国が回収して実験に用いるから、そもそも帰ってこない。だが、あいつらはお前らのところに帰りたかったはずだ。それだけは知っておいてくれ。じゃあな。」
気分が悪い。もう帰る。
俺はそのまま帰宅することにした。
舗装された道路を歩き、そびえ立つ高いビルを見上げながら、なぜ異世界にいた頃は帰りたいと思ったのか、今となっては不思議だと思った。
こんな世界、なくなってしまえばいい。
「怖い顔してるね、良ければ相談に乗るよ。」
「誰だお前。」
帰り道、突如そいつは俺の目の前に現れた。
「よお、あんちゃん。ちょっと時間をもらっていいか?」
これが奴との邂逅であった。後に相棒となり、共に戦うことになるとはこの時の俺はまだ知らない。




