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シンクロノイズ  作者: 白鴉
世界の始まり
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2/3

chapter#1

名も知らない街路樹の葉が春風に舞い、街を染めている。


ソメイヨシノの開花予想が全国的にニュースで取り上げられ、花見の季節の訪れに世の中が浮き足立っているのが分かる。


いつもこの時期になると、不思議と上を見上げることが多くなるように感じた。


三月十八日、正午。

地元の国道である大通りから少し外れた商店街を、私は歩いていた。

いつもと全く変わらないのに、自分の気持ち一つで全然違うものに見えてくる。


風が強い日、雨が降っている日、交通整備をしている日、休日で人が多い日…。


見方によっては、ただの街にも表情や色んな姿があり、それを眺めるのが私は好きだった。


それに何より、ここには音が溢れている。


















私、音無唯《おとなしゆい》は、昔から耳が聞こえない。


生まれつきの、いわゆる先天性。

誰かに話かけられても気付かない。

近所の犬に吠えられても、反応を示さない。


そんな症状に、医師すらも先天性聴覚障害だと思い込んだ。



幼いながらに私は、それが自分の特異性だと受け入れ始めていた。




そして身も心も幼少期を抜けて、少女として自律してきた頃。


私は自身の特異性の

見解の相違を知ることとなる。



ふと母親に意識を向けた私は、今まで一度も聞こえなかった母親の声が、突然に聞こえた。



今思えば、これが開花の瞬間だったのかもしれない。



原因は分からないけれど、私が自発的に意識を向けた一つの生命体の声は、常人と同じレベルで聞くことが出来る。


つまり、意識をすれば対人で一人ずつなら会話が出来るということ。



これは、ただの聴覚障害などではない。



医学系の学会で取り上げられた例も一切なく、似たようなデータもどこにも記されていない。


私だけに備わる、異能とも呼ぶべき障害。




いつしか私は、次第にそれをコントロールし始めた。


頭の中の意識をTVチャンネルのように上手く操作して周囲の会話に合わせ、そしてあたかも常人と同じように振舞ってきた。


両親は、治るはずのない障害が治ったと、大喜びしていた。


医者も、驚きを隠せないようだった。



でもある日、意識操作を行った時に私は、自身の持つ特性の根幹に関わる事実に、気付いてしまった。



私の異能は、


これだけではなかった、ということに。

















初めは、単純なものだった。



あれはまだ、私が小学生の頃。



授業中に先生に意識を向けて、授業を聞いていた時。


先生の発する言葉とは別に、



ああ、帰ったらまた文句言われる…



というセリフが、頭の中に飛び込んできた。

最初は、戸惑いしかなかった。

音を持たず、セリフのみを頭で理解している。

一体、どういうことなんだろう…?


すると、授業中に先生が少し疲れたような溜息を吐いた。


するとすかさず、ある男子が


「先生、溜息なんか吐いちゃってどうしたのー?」


と、先生に問いかけた。


すると、先生はこう言った。


「最近、テストの採点やらのおかげで、帰りが遅いって嫁さんに言われてなぁ…早く帰らないと、また文句言われるんだよ…はぁ」





私はこの時、自分の中で、新たな力が存在していることに気が付いた。





私は、


意識を向けた人の心を

読み取ることが出来るんだ、と。




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