chapter#2
思念同調能力。
既存の言葉で言うところのサイコメトリックというものは、本来は触れた物に対しての同調という意味になる。
しかし私の場合は、意識を向けていることで思念同調を可能としているらしく、サイコメトリックとは違うものなのかもしれない。
しかしながら、他者の心が読めてしまうのはいい事ばかりではなかった。
普段、口には決して出さないような、感情の裏側まで見えてしまう。
人の精神の裏側というのは、普段からは想像もつかないほどに闇で満ちている。
私はその闇を、この力によって気付かされた。
それに、他人の心の中を勝手に覗き見ていいはずがない。
私は思念同調の力が備わってから今まで、人として踏み入れてはならない禁忌の狭間を彷徨っていた。
街の音は、生命体とは無縁の音が無数に存在している。工事現場の重機の音や、風が樹々を揺らす音。
そんな無機質な音しか、私は聞き取れない。
しかし、逆にそれが心地よかった。
何も考えず、ただ世界に流される時間が、私の心を癒していった。
高校一年生の春休み。
私は特にすることもなく、日々を消費していた。
本当なら、二年生のクラス替えを前にしたこの時期には、クラスでの仲間と遊びに行ったりして想い出作りに勤しむのかもしれない。
でも私は、クラスの中で誰か特別に仲がいい人がいたわけでもなく、何と無く孤立していた。
そんな私にも、
遊びに出かけるような間柄の友達が一人いた。
私は、12:30に地元の最寄り駅で待ち合わせ をしている友達の所に向かっていた。
そして駅のバスロータリー前に着いた私を見て、駆け寄ってくる少女が一人。
「唯、遅いよー!全く、この寝ぼすけさんは…」
「ごめんね、少し遅れた…おはよう、雫」
「ちょっとー!おはようの時間はもう終わったよ?ほら、シャキッとしなさい!」
「ふふ、相変わらずママみたいね、雫は」
「ママ言うな!…でも、悪くないかも。えへへ…」
椎名雫。
小学校からの同級生で、唯一の私の友達。
今まで小学校からずっと同じ学校で、高校も唯と一緒がいいと言ってあんまり勉強が得意じゃないのに、頑張って私の志望高校に合わせて来てくれた。
私のことになると過保護な面もあり、私は第二のママだと思っている。
基本的に真面目で、凄く明るくて、いつも静かな私に元気を分けてくれる、太陽みたいな子だ。
クラスが違うのは本当に残念だけれど、二年生のクラス替えに密かに期待していたりする。
「で、今日はどこ行くの?」
場所と時間だけ指定されて、何をするかは特に聞かされていなかったので、ふと聞いてみる。
「今日はね、唯と行ってみたかった喫茶店があるから、行ってみない?」
「うん、いいよ」
雫はオシャレな物や、お店を見つけてくるのが上手いから、こういう時は期待できる。




