【よんじゅうよん】きれつ/いじょう/ぜろ
『 』。
さーて、やっと着きましてよ。瑠璃さんのHPはもう赤いよ??
「ここに亀裂が生じてしまったようだね」
ケインさんが慎重に空間の一片をしきりに凝視しているけれど、魔力が微弱な瑠璃には何も見えませーん。
「つまり、何物かが異空間から侵入した形跡があるということだ」
「……え」
アルを見て、ケインさんを見た。二人とも目を私から逸らした。
つきり、と胸が痛んだ。
え、ちょっとなんか嫌な雰囲気。
「これは……王宮に報告しなければ、ならない」
* * *
「調べてみたところ外部から、つまり異世界から何者かが侵入してきた形跡があります」
ベリアルの声が謁見の間に涼しく響いた。父王の傍で突っ立っているしかない私には何もできないが、どうやらルリが疑われているらしい。
ルリは異世界からやって来た少女だ。
つまり、今回侵入してきた者の目的によっては、ルリは……。
「……」
フォンティーヌを長年納めてきた王は、滅多に口を開かない。
今日もまた、無言と言う催促でもってべリアルの報告を促した。
「はい、更に調査したところどうやら侵入者は『影の頭蓋』以上の魔力を持ち合わせています」
「!」
王は僅かに目を見開いた。
滅多に感情を露わにしない王にしては、大変珍しい事だった。
落ち着き払っていた王は事の重大さを理解したようだった。
「……『影の頭蓋』は、衰えた」
しゃがれた声で王は答えた。
瞬時にベリアルは反駁。
「魔力は衰えることを知りません。誕生した時から常に一定です」
王が黙り込む。
やはり父としても、王としても見たことのない焦りの感情を露わにして。
しかし私には分からない。『影の頭蓋』とはなんなのか…。
周りの者も分かって居ないようだった。
「王。発言の許可をお許し下さい」
「許可する」
「はっ『影の頭蓋』とはなんなのか教えて頂きたいのですが」
私は、地面にひれ伏しながら、王の気配を伺った。
王は、ベリアルの方を見たようだった。
周りに配置された数少ない側近も、じっと視線を2人に絞っているようだった。
「今後一切の発言を許可する」
「『影の頭蓋』とは、史上最強ともいわれる要塞です。歴代の魔術師の魔力が頭蓋に納められています」
よく、分からない。
「発言の許可を」
王が頷く。
もう慣れてしまった発言の許可を求めるこの制度を、ベリアルは嫌っているようだった。
「つまり『影の頭蓋』は、人間ではない。そして魔術師が束になって掛かって来ても敵わない存在?」「yes. 私の保有魔力の2倍はあるでしょう。つまりその侵入者に我々は勝てません」
歴代の魔術師の魔力分÷2がベリアルの保有魔力なのか?
待て、待て。
つまり……規格外ってことだな。
しかし侵入者はそれを上回る、らしい。
* * *
「 話を逸らすことによって瑠璃の報告の話題にすることは回避した」
「それは……時間の問題ということですね。ルリは気付いていますか?」
物憂げな顔でカイルが問う。
美しい群青色の髪を指で弄りながら、カイルはベリアルの答えを待つ。
「聡い少女だからな、見かけによらず」
もう奪わせはしない。誰からも愛しい存在を奪わせはしない。そうだ、大事なら奪わせなければよい。単純かつ明快なAnswerだ。
「敵と、決まった訳ではないですから」
カイルが、優しい声で言う。 それを跳ね退けるように、顔を上げると。
「私はッ…」
と言ったきり黙り込んでしまう。
それでも守る自信がないのは…力で敵わないと分かってしまったからだろうか?
目的が分からない以上、なにも出来ないけれど。
もう――限界。