第二章第九話『王都』
戦闘後の王城は静寂に包まれていた。
転がる死体の数々。崩れた城壁。血に染まった地面。
アヤトの精神にも大きな負担がのしかかっていた。
「ノア……!」
アヤトは倒れているノアへ駆け寄り声をかけたが、返事はない。眠っているようにも見えるが、顔色は決して良くはなかった。アヤトは自分の上着を脱ぎ、簡易的な枕としてノアの首元へそっと添える。
「すぐ戻るからな。」
そう言い残し、アヤトは王城へ向かった。大きな扉の前に立つ。
ドンッ! ドンッ!
「おーい!」
「誰かいないのかー!」
何度か扉を叩いたが返事はない。このままでは埒が明かない。人の家の扉を勝手に開けるのは気が引けたが、今はそんなことを言っている場合ではなかった。
ギィィ……
重たい音を立てながら扉が開く。城内は驚くほど綺麗だった。外の惨状とはまるで別世界。磨き上げられた床。豪華な装飾。高級そうな絵画。アヤトは辺りを見渡しながら声を上げる。
「もしもーし!」
「誰かいませんかー!?」
「おい。」
「……ッ!」
背筋が凍った。首元に冷たい感触。剣だ。そして強烈な殺気。本能が叫ぶ。
――動くな。
アヤトは恐る恐る両手を上げた。
「は、はい……」
「貴様は何者だ。」
低く重い声。
「ノアはどうした。」
「え……?」
アヤトは冷や汗を流しながら振り向こうとした。すると首元の剣がさらに押し付けられる。
「誰が振り向いていいと言った。」
「す、すみません……」
アヤトは固まった。だが、その声には焦りが混じっていた。怒りだけではない。心配している。そんな気がした。
「もしかして……」
「ノアのお父さん……?」
その瞬間だった。ピクリ、と男の手が止まる。数秒の沈黙。
そして、
「ノアは無事なのか。」
先ほどよりも少し弱い声だった。アヤトはゆっくり頷く。
「生きてる」
「ただ目を覚まさないんだ」
「だから助けてほしくて――」
最後まで言い切る前に、
ガシッ!
男はアヤトの肩を凄まじい力で掴み、アヤトは振り返る。
そこにいたのはノアによく似た亜麻色の髪を持つ男性。
年齢は四十代ほど。
威厳に満ちた瞳をしていた。
「案内しろ。今すぐだ。」
アヤトは思わず頷き、二人は急いで城の外へ向かった。
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そこは夢の世界だった。
ノアは一人、何もない空間に立っていた。
「ここは……?」
その先には赤い髪の少女が立っている。顔は霞がかかったようによく見えない。だが見ていると、不思議と懐かしい気持ちになった。
「あなたは誰?」
「……」
「ここはどこなの?」
「……」
「昔どこかで会ったことある?」
「……」
何を聞いても返ってくるのは沈黙だけだった。ノアが困り果てていた時、少女はようやく口を開く。
「また……」
「え?」
「自分をもっと大事に、ね……」
「何を言っているの?」
「いつ、も見てるから……」
「……」
「……」
「また会いに来てね……」
少女がそう言った瞬間、世界にひびが入った。
パリンッ――
砕け散る世界。
ノアの身体は底の見えない闇へ落ちていく。
あの少女はずっとこちらを見ていた。
やはりその顔は、どこかあの子に似ていた。
「あなたは誰なの……?」
少女は微笑む。
「……いつか、その時まで……待ってるからね。」
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視界がぼやける、見覚えのある天井。
「私は……いったい……ん?」
右手を誰かに強く握られている、よく見ると父だった。
「お父様……」
「ん……」
ノアの声に反応し、父が目を開く。
「おお、ノア!」
「起きたか!」
だが次の瞬間、父の表情が変わった。
「ん? お前……」
「ん?」
「どうしたノア」
「なぜ泣いている?」
「え?」
ノアはそこで自分が泣いていることに初めて気づき涙を拭う。
だが止まらない。
「あれ……?おかしいな……」
「なんで涙が止まらない……」
父は何も言わずノアを抱きしめた。
「それだけ過酷だったんだ。」
「力になれなくてすまなかった。」
「違うの……それだけじゃない……」
あの子は昔どこかで…
「アリシア…?」
「ノアあの一緒にいた男は誰なんだ?」
「あ!」
ノアは突然立ち上がる。
「アヤトは!?」
「どこにいるの!?」
「彼なら治療が終わり、早々に出て行ってしまったよ」
「え!?」
「なんで引き止めておいてくれなかったのよ!」
ノアは急いでベッドから降りようとする。
「ノア!待たんか!」
「そんな急いだところで彼はもう近くにはおらんわ!」
「なんで!?」
「もうここを出て3日は経ったからだよ」
「え!?」
「私、三日も寝てたの!?」
「そうだ」
「もう着替えるからお父さん出て行って!」
「早くアヤトを追いかけないといけないの!」
「わかった、わかった」
父は呆れたようにため息を吐き、部屋を出ようとしたが何かを思い出したかのように振り返り一つの徽章を差し出した。
「ならこれだけ持っていけ」
「これって……」
「そうだ」
「あのアヤト君が置いていった」
「本当に必要なのは自分ではない、と言ってな」
ノアは目を見開く。
「ジョワ様の徽章……」
「なんでアヤトが……?」
「そうか」
「ノアは気を失っていたから知らないと思うがあの時、絶体絶命のところをジョワ様が助けてくださったそうだ」
「嘘……」
「本当だ」
「またモーセに狙われる可能性があるから、ノアが持つべきだとアヤト君が言っておった」
「……」
ノアは徽章を強く握り締めた。
「ありがと…」
「だからお父さんは早く出て行って!」
「はいはい」
父は娘に追い出されるように部屋を後にした。
部屋に一人残されたノアは小さく呟く。
「アヤトったら……どこに行ったのよ……」
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三日前――
アヤトは街を一人歩いていた、色々なことがありすぎた。
この世界に来て何日も経ったような気がする。
だが実際には、まだ一日しか経っていない。
この後のアヤトのやるべきことは決まっていた、情報整理だ。
「まず、この糸。」
アヤトは手を見つめる。
「なんで手から糸が出るようになったんだ?」
思い返してみると確かノアの糸を見て真似をすると糸が出た。
「いつからだ?この世界に来た時から使えてたのか?」
アヤトは頭を抱えて上の空だった。
グゥ〜
「腹へったなぁ」
前いた世界にはこんな言葉があった。
「腹が減っては戦はできぬやな!何か食べたい!」
ノアの父さんにありがたいことに感謝のお金をいただいたのと、この世界の通貨の価値も教えてもらった。この世界の通貨の価値は話を気限りだと大体、
金貨1枚で日本円で10000円、銀貨1枚で1000円、銅貨1枚で100円といったところだ。
一応その上には白金貨というものがあるらしい、1枚日本円で100万円ほどだ。
そして今アヤトは金貨1枚、銀貨8枚、銅貨20枚をいただいた。日本円で言えば2万円ほどだ、正直命をかけて戦って2万円は割りに合わないが貰えるだけ全然マシというものだ。
アヤトは商店街に出て、焼き鳥のような串屋で串を3本買った銅貨3枚だった。
「うまいな…」
恐らくここに来た瞬間にこれを食べていたらこんな反応はできなかっただろう、これはお世辞にも美味いとは言えない、味は薄いというより味ついてないただ焼いてる肉って感じだ。だけど、死ぬような経験をして数日何も食べてないアヤトにとってはめちゃめちゃ美味だった。だけどやはり…
「日本の食は凄かったんだな…」
アヤトは焼き鳥を食べながら考えていた。
「それにしてもなんで糸出たんだろうな…」
「今この世界に来てから、糸出たり、めっちゃ足速くなったり、未来視でき…」
「ん…?」
「あ!未来視!忘れてた!」
アヤトは重大なことを忘れていた。アヤトは未来を確かに見たはずだったが昨日起きたことは未来視では見ていないことだった。
「未来を変えることはできた…」
確か未来視は触れた相手の未来を見ることができると仮説を立てた。
それだとノアを起こした際ノアに触れたがノアの未来はもう見れなかった。
ということはノアの未来を救うことが成功できた、もしくはそもそもこの仮説が間違っていてそもそも触れることが条件じゃない場合もあるが、限りなく前者で間違いはないだろう。
となると、未来は変えられること、未来を見る条件が、触れること、この2つは間違いないだろう。
そういえば騎士にもぶつかった時未来視は発動し残念だが未来通りの結末にはなった。
未来視は正しい未来ということはほぼ確定である。
「…まさか」
俺が今まで触れて未来が見えた相手は、ノアと騎士の二人、そして俺が急にできるようになった能力が、糸を出す能力と今までなかったようなパワーの二つ、もし今俺が考えている仮説が正しいなら――
「未来を見た相手の能力をそのまま使えるってことか……?」
いやまだ確定ではない、騎士の能力を実際に見ていないからだ、だが騎士のような見た目にあの腰の大剣を見る感じ力が強いのはわかる。この仮説が本当に正しい場合はとんでもない能力だ。
もしどんな力もコピーできて能力に上限もないなら…
「俺って、めちゃくちゃ強くね……?」
ただ未来視の条件が人の死である限り、必ず面倒なことに巻き込まれることとなる。
アヤトはため息をつく。能力を得るたびに誰かを助けなければならない。そのたびに自分も危険へ飛び込む。
「能力は欲しいけど、毎回命懸けは正直勘弁だな……」
だがこのことを考えすぎても仕方ない、未来視は運だ。これから一生発動しない可能性だってある。なら今ある能力の理解を深める方がいい。
「糸は便利だよな。」
攻撃、防御、移動。
応用性は抜群だ。
そんなことを考えながら街を歩いていると――聞き覚えのある声が飛んできた。
「おう!兄ちゃん!」
「あ!」
昨日はお金もなく何も買えない俺に情報だけを親切に話してくれた昨日の八百屋の店主だった。
「昨日は急に話しかけて悪かった!今日はちゃんと金もあるし、リンゴ一つもらっていいか?」
「お!一文無し卒業したか!」
店主は豪快に笑う。
「服も昨日より全然マシになったな!」
「だろ?」
アヤトも笑いながら金を差し出した。
その瞬間だった。
店主の手に触れた途端――
世界が止まった。
投稿遅くなってごめんなさい〜〜
第二章どんなストーリーにするかをすごく考えに考えてめっちゃ面白いストーリーがあらかた完成しました!!
この物語は第二章からが本番なんだなって作ってる本人が思うくらい話が一気に進みます!
新キャラも何人か登場しますし、アヤトも自分の能力の理解をどんどん深めていって第二章で一気に強なる予定ですぅぅううう!
是非面白かったら次の話も見てね!
よろしくお願いいたします!!




