第一章第八話『vsモーセ③』
ノアは力尽き、アヤトは魔力切れ。
まさに絶望的な状況、そんな中、一筋の光が差し込んだ。
「君たちさ、何やってんの?」
青髪の青年が歩いてくる、その瞬間、モーセの表情がこわばった、そしてアヤトへ向けていた攻撃の手を止める。
「まさか、あなたが来るとはね……」
「だ、れだ……?」
アヤトが問いかけると、青年はニコッと笑った。
「僕の名前はジョワ。よろしく、アヤト!」
「なんで俺の名前知ってんだよ!?」
「さっきノアちゃんが呼んでたからね!」
ジョワは楽しそうに手を叩いた、そしてモーセへ視線を向ける。空気が揺らいだ。
「さてと。君は何してるのかな? モーセ」
「……」
「はぁ、興醒めだな。ジョワが来ちゃったら何もできないじゃん」
「よく分かってるね。で? 何してたの?」
「君に話す義理はないね」
ジョワは少しだけ表情を消した。
「モーセ。これはお願いじゃない」
「答えろ」
空気が変わる、アヤトですら思わず息を飲んだ。
モーセも数秒黙り込む。
「……」
「まぁいいや」
ジョワは肩をすくめた。
「五大皇帝を剥奪しようか」
「…それは君にもできない事だろう?」
モーセは即座に言い返す。
「五大皇帝は誰かに認められてなるものじゃない。なるべくしてなるものだ、だから辞めさせる事もできないはず…」
「モーセ」
ジョワは静かに言った。
「君、何も分かってないね」
「は?」
「君を殺す」
「……」
「ただそれだけで済む話だろう?」
アヤトは完全に置いていかれていた。五大皇帝?殺す?何の話だ?考えても分からない、だから黙って聞くしかなかった。
「殺す?」
モーセが笑う。
「ハッ。笑えない冗談だな」
「冗談じゃないよ」
ジョワは真顔だった。
「君をこのまま放置していたら、またノアちゃんが危険な目に遭う。」
「だったら今ここで倒した方がいい」
モーセは小さく舌打ちした。
「ノア様を狙ってる事まで知ってるのか、ほんと何でも知ってるね」
ジョワは眠るノアを見た。
「君が前々からノアちゃんを狙っていた事は知ってた、間に合って本当に良かったよ」
「……ジョッ!」
モーセが何かを言おうとした、その瞬間だった。
ドンッ!!!
モーセの身体が吹き飛んだ、アヤトには何が起きたのか見えなかった、ただ次の瞬間には、モーセが遠くの瓦礫に突っ込んでいた。
「ゴホッ!」
「ゴホッ!」
血を吐きながら立ち上がる。
「いきなり殴るなよ……肋骨全部粉砕したわ」
「いてぇな」
ジョワは首を傾げた、モーセはため息を吐く。そして両手を上げた。
「降参、無理無理、アンタ相手にできるほど肝据わってねぇよ」
「命乞いか?」
「違うね」
モーセは笑った。
「逃げるが勝ちってやつさ、死んでたまるかよ」
「逃がさないよ?」
ジョワが一歩踏み出す。
「はいはい分かってますよー」
モーセは肩をすくめる、そして眠るノアを見る。
「ノア様、また必ず会いに来るからね」
次にアヤトへ指を向けた。
「それと君、アヤト君、名前も顔も覚えた次会ったら必ず殺す」
「まぁ、それまで生きてたらだけどね」
「じゃあな、ジョワ!」
モーセは羽のようなアイテムを取り出した。それを空へ掲げる。
「ッ!」
ジョワが動く。
しかし――遅かった。モーセの姿は煙のように消えていた。
「……あーあ」
ジョワは頭を掻く。
「やられたね、マジックアイテム持ってたか」
「まぁモーセなら持ってるよなぁ……」
「マジックアイテム?」
「お、アヤト!」
ジョワは思い出したように振り返った。
「大丈夫?」
「大丈夫かって聞かれたら全然大丈夫じゃねぇよ!めちゃくちゃ痛ぇ!」
「だよね!」
ジョワはポケットから小さな瓶を取り出した。
「はい、これ飲んで」
「なんだそれ?」
「回復ポーション!体力も魔力も全部回復するやつ!」
「何それチートすぎるだろ!ほぼ仙豆じゃねぇか!」
「センズ?は知らないけど、早く飲んで!」
アヤトは半信半疑で飲み干した、瞬間。
身体の奥から力が溢れる。
「うおっ!?すげぇ!めっちゃ回復した!」
アヤトはすぐノアを見る。
「早くノアにも――」
「あ!待って!」
アヤトがジョワを見た時、ジョワは首を横に振った。
「ノアちゃんには効かない」
「なんでだよ?」
「ノアちゃんを苦しめてるのは魔力不足じゃない」
「力の反動なんだ」
アヤトの表情が曇る。
「じゃあ目が覚めるまで待つしかないと?」
ジョワは少しだけ目を伏せた。
「あぁ、今は目が覚めるのを待つしかない」
「なんだよそれ……なんでそんな危険な能力使うんだよ……」
ジョワは静かに答えた。
「モーセがそれだけ強かったからだよ、使わなきゃ勝てないと判断したんだ」
アヤトは戦闘中のノアを思い出した。力を使う直前。ノアは一瞬だけ自分を見ていた。
「まさか……俺を守るために……?」
ジョワは少し笑った。
「どうだろうね」
アヤトは自分の頬を叩いた。
「よし!」
「ん?」
「それはそれ!これはこれだ!」
アヤトはジョワを指差した。
「お前何者だよ!そんなめちゃ強い相手をワンパンしちゃうとか怪物だろう!」
「怪物とはまた酷いね笑」
ジョワは苦笑した。
「改めて名乗ろう、僕は五大皇帝第一席ジョワだよ」
「よろしく、アヤト」
「よろしく!じゃなくてよ、五大皇帝?そりゃなんだ?モーセも五大皇帝とか言ってたな、」
「まさかアヤトは何も知らないようだね…」
何も知らなくて当然だ、アヤトは先程この世界に来たばかりだ、恐らく昼頃にこの世界へ来て色々ありすぎて長く感じたが、まだ1日も経っていない。むしろこんな新しい情報だらけで良く頭が耐えているなと我ながら褒めてやりたいくらいだ。
「あーわりー俺はちと遠くの街からやってきてなんの情報も知らねーんだわ1から教えてくれ!」
「五大皇帝は世界中が知ってると思ってたのだけれど…まぁいいや」
「五大皇帝とはこの世界から選ばれた5名の事を指すんだ。誰かが指名してなれるものではないし、力を無くせばすぐに変わる、それが五大皇帝の称号なんだ」
「なるほどじゃあ五大皇帝は真の平等な最強が集まる席というわけか!」
「…」
「ん?待てよ」
「第一席?」
アヤトは固まる。
「待て」
「それってつまり――」
「お前が世界最強って事か!?!?!?!?!?」
「まぁそうなるね」
「すげぇぇぇぇぇ!!」
ジョワは少し照れたように笑った。
「そんなに褒められると恥ずかしいな」
アヤトは頭を抱えた。
「っていう事は俺たち世界で4番目に強い奴と戦ってたのか……」
「うん」
「そりゃ負けるわ!!」
アヤトのテンションの上がり具合に、ジョワは涙を流し声を上げて笑った。
「アヤトと話すの楽しいな!」
そして踵を返した。
「じゃあ僕は行くよ」
「待て待て!色々聞きたい事あんだよ!」
「僕は世界中を助けにいかなきゃなんだ!後はノアちゃんに聞いてくれ!」
「面倒になっただけだろ!」
「ちょっとだけね!」
ジョワは笑って立ち去ろうとしたが、急に立ち止まり振り向いた。
「そうだ、忘れてた」
ジョワは一つの徽章を投げた、アヤトが受け取る。
「それは?」
「本当に困った時に握って、死にそうになったら飛んでくる」
アヤトは目を見開いた、見覚えがあった、未来視で見た徽章に似ていた。
アヤトは笑った。
「…全部繋がってんだな」
「ん?なんか言ったかい?」
アヤトはボソッと言った為ジョワには聞こえなかった。
「こんなもん貰っていいのかよ!?」
「もちろん」
ジョワは笑う。
「ノアちゃんを頼んだよ」
「アヤト」
そう言い残し――ジョワは消えた。
静寂が訪れる、アヤトは手の中の徽章を見つめた。
世界最強の男。そんな怪物に託されてしまった。
理由なんて分からない。
だけど――
アヤトは眠るノアを見た。
「強くならなきゃな」
その呟きは誰にも届かなかった。
これが全ての始まりだとも知らずに。
第一章モーセ編終了しました!
次からは第二章になります!是非見てください!
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それじゃあまたねー!




