CⅩⅩⅩⅨ Ⅱ NEHIJAMUSARAK (烏丸事変 Ⅱ )
室町小路広場。
〈暴食〉を司っているであろう魔獣、仮称〈豚〉と相対しているのは玄武とミカエル、さらに神造神剣の分身1億人分だ。
真っ黒な豚。
所々濃い赤の模様が入っているが、それでも圧倒的に黒の面積が多い。
身長は3mほどだろうか。
頭から尻尾までは10mほど。
「まぁ、僕ができるのは支援で、玄武君ができる攻撃は触手で殴るぐらい。
切り刻む力がある神造神剣がいてくれて助かるね。
僕たちだと防戦にしかならないから」
サタンや他のメンバーに比べて自分たちが戦力としては低めの位置にいることはしっかり自覚している。
その上で役割分担を行い神造神剣をこちらに連れてきてもらったのだ。
「1億人分の兵力として好き放題使ってくれ。」
という神造神剣の言葉もある。
「〈武運の慈悲〉」
僕は神造神剣と玄武のために、戦闘における恩恵を与える術式を発動する。
玄武は硬い。攻撃というよりは壁として扱う感じだろう。
彼にも支援はしたが、神造神剣がいないと死ぬと言っても過言ではない。
神造神剣は剣を抜き、〈豚〉の腹に潜り下から攻撃を決めた。
腹から漏れ出てきたのは血や内臓ではなく、瘴気だ。
濃い赤。
〈豚〉の模様と同じ色の赤だ。
「天使!亀!何があっても今持っている食料には手を出すな!
最悪の場合、死ぬぞ!」
神造神剣の言葉の指している意味を理解したとき、とんでもない恐怖を感じた。
〈余憤の禍根〉に狼型の魔獣がいたという報告はサタンから聞いていた。
紫の瘴気が蝕む中に生息している魔獣。
狼型の"遊霊"を生み出すサタンの術式が反映されている。
ならばこの瘴気にもベルゼブブの術式が反映されている可能性がある。
「で、でも……サタンの場合は神の駒の中にあった球体を使ってあの瘴気を出してるんじゃ………」
そう。それなら憤怒以外の神の駒の球体をこちらが保管している以上術式は発動されない。そう思った矢先のことだ。
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「ね、ねぇみんな?
〈嫉妬〉と〈暴食〉の神の駒と………研究のためにユウキから預かってた〈傲慢〉と〈強欲〉の球体………入れてたポーチごとなくなってるんだけど…………」
俺が壊さずに保管した神の駒と壊れているのを保管してある神の駒は全てレイに研究用として渡してあった。
研究所を運営する科学者なはずだ。何か進展があることを期待していたのだ。
ただ、〈余憤の禍根〉に向かうにあたり〈色欲〉の神の駒だけはレイナに預けていた。
〈蠍部隊〉からすればキーアイテムだ。
奴らの予想しないところに隠すべきだろうからと思っていたのだが………
「私は……あ、あります。〈色欲〉の駒!」
レイナは持っている。
つまり、レイが〈蠍部隊〉からこっそり駒を盗まれたということになる。
確か〈蠍部隊〉を見かけたのはレイだ。
もう、そういうことだろう。
どうやら、〈怠惰〉を司る〈熊〉と〈色欲〉を司る〈蠍〉以外は術式の効果を使える可能性が高いとみなすべきらしい。




