CⅩⅨ IHSAYABOK=OTAYAH AYSNAKOYS (召喚者ハヤト=コバヤシ)
僕は、なんやかんやあってクラスの人気者と付き合うことになった。
前の彼女との関係を友達にズタズタに引き裂かれたことがきっかけだった。
そして紆余曲折あって幸せになったかと思えば
「どこ?ここ」
わけのわからない異世界に飛ばされ、
わけのわからない剣を持たされ、
わけのわからないモンスターに「違う」と言われ、
わけのわからない穴に迷い込んだ。
しばらく穴をさまよって、モンスターを倒してその肉を食べながらなんとか生き延びていた。
地面には白骨化した死体が転がっていることもおかしくないこの異世界は僕らには過酷だったがでもまだ、辛くはなかった。
〈蠍部隊〉とかいう組織が現れた。
「お待ち下さい旅のお方。」
「僕達のことですか?」
というと、リーダー格らしき男はあぁしまったと言わんばかりの表情で
「あぁ失礼。いいえ、隣にいる男性ではありません。あなたの内にあるのは秘めたる〈憤怒〉。
私達の用があるのは隣の女性!!あなた様はその男性を自分のものにしたいという〈色欲〉を秘めている!」
何を言っているのか分からなかった。そして、何を言いたいのか、というニュアンスも方向性も伝わってこなかった。
「ごめんなさい、僕達はもともとこの世界の人間じゃないからかこの世界の仕組みも何もわかってなくて……」
「あぁ、"召喚者"!!あなた、"召喚者"ですか!!
アスモデウス様の器としてちょうどいい!私達の期待を更に上回る素質!!素晴らしい!」
「は?アスモデウス様?素質?」
アスモデウス、"召喚者"、器、初出のワードがポンポン湧いてくる。
全く理解が進まない。
「〈憤怒〉の邪神……いや、失礼。今は"聖神"か"最高神"か……サタンという男に殺された〈色欲〉の邪神。
そして私達が仕える最高の方。その復活にあなた様の体を使わせていただきます。」
「え……いや、そんなの……」
彼女に拒否権は無かった。
「今その素晴らしさがわからずとも、今後教科書になるような活躍をなさるのですから」
などとわけのわからないことを言われ彼女を連れて行かれた。
しかし、彼女をその"器"とやらにするのには上手く行かなかったらしい。
「火葬して差し上げるもよし、どこかに捨てて忘れてしまうも良し、ここで剥いてしまうもよし。
まぁ死体ですし好きにしたらいいですよ」
あぁ、やっと、わけのわからないこの世界で唯一理解できた。
彼の言う通り、僕は心の内に〈憤怒〉があった。
引き裂かれるような心の痛みに耐えかねて、僕は男めがけて走り出した。
"魔王"とかいうのに渡されたその剣で僕は男に斬りかかる。
「ほほぉ、その〈神器〉……あなたが神であれば苦戦したでしょうね」
そんな呆れたような声とともに繰り出されたのはただの拳、だったはずだ。
大きく吹き飛ばされ、腹からは出血も見られた。
絶望的だ。
この世界のルールも秩序もわからない。
神の復活のために人を平気で殺して、儀式は失敗しているのに人の死を見てこの態度だ。こんなことは普通なのかもしれない。
僕は驚くほど軽くなってしまった彼女の死体をお姫様抱っこで抱えたまま崩れ落ちた。
でも、このタイミングで僕は1つの行動目標を持った。
「お前は………絶対に許さない。逃げても必ず、この世界の裏側まで追いかけてやる!!」
〈蠍部隊〉は、僕の手で壊滅させたい。
それが、"召喚者"ハヤト=コバヤシの行動目標であり、
この世界で唯一の、彼の生きる理由だった。




