CⅩⅦ IJIAT (対峙)
「この霧は……能力暴走の名残……か。」
余噴の禍根にたどり着いた俺とレイが見たのは、辺り一面に広がる霧だった。
紫色のその霧は、遊霊の色とよく似ていた。
漆も、白銀も、赫も、蒼も、なんなら術式の使い方すらも知らない状態で能力暴走を起こした俺が放ったのは紫色の〈憤怒〉だ。
もはやあれは俺の能力なのか……何かを噴出するような形の能力は俺の術式として神の駒には刻まれていなかった。
神の駒は、チェスの駒のような形をしている。
しかし中身は空洞になっており、内側には最高神が術式を刻んでおり、そこに刻まれた術式を神は原動力を使い操る。
そして、すでに破損している〈傲慢〉、〈憤怒〉、〈強欲〉の神の駒を調べてみたところ、〈傲慢〉と〈強欲〉にはビー玉ほどのサイズの球体が隠されていた。こちらについてはまだ解明できていない。
神は一度神の駒の空洞部分を読み取って術式を把握する。
俺もマモンに手伝ってもらいながら神の駒を調べたが鳩の住処でフルカスに放った"〈紫〉の噴出"は俺の術式ではなかった。
つまり、神の駒には術式以外の”第2の能力”があり、あの時の暴走はその力の影響だろうと今のところは考えている。
その能力が何なのかと言うのは一切見当もつかない。
〈傲慢〉や〈強欲〉の”第2の能力”も、発現した際にどんな影響が起こるかわからないのでとりあえず今は〈闇への贈り物〉で異空間に放り込んだ。
「なんか、すごいオーラだね」
「あぁ………とりあえず2、3日は歩くぞ。
〈鳩の住処〉の頃の道が残ってればそのペースで到着だけど道なんてなくなってる可能性もあるからもっと長くなるかもな」
「えぇ〜」
「ついてきたのお前だろ」
嫌がるレイを引きずるように運んでいると、一つ集落らしきものが見えてきた。
ただ、集落といってもとても文明は退化しているように見えた。
〈鳩の住処〉にあった集落は山の中の田舎、といったイメージで日本でも見えそうな景色だった。
だがこれは違う。
布と枝でできた貧相な寝床のようなものがたくさんあり、焚き火で肉をやく親子の服はボロボロで、痩せ細った体が服から見えていた。
「文明が退化している、と言うよりは発展させることが難しい状態か」
「どういうこと?」
ここの気候は作物の収穫も厳しいだろう。
なんとか生き残っている細い木を使っているところを見ればそれは明らかだ。
それに肉。何か魔物はいるのだろうがこれがまた強くてなかなか肉を手に入れられないといったところだろう。
そしてそこに突如大きな顔が現れた。
それはまるで、実態を持つ遊霊のようだった。
顔の直径は5mほどで、これを倒せばしばらく旅の間の飯には困らないだろう。
「よし、レイ!こいつ倒すぞ!」




