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五章15〜“限界”

「芸がねぇなぁ……まぁ悪かねぇけど」


 爆風に同じように先程と同じように吹き飛ばされてきた俺を迎えるように座っているルシエルが、俺を見下ろしてそう口にする。


「…はぁ…はぁ…悪かったな…、芸がなくて…」


 変わらず身体は痛いし、2度目だ…変に倦怠感もある…マナ不足ってところか?


 俺は剣を杖のようにして起き上がる。


「約束通り…仲間のとこま」

「気が早いなレオリス・アストラル」


 一瞬何のことかわからなかった。

 だがすぐに理解して振り返って剣を構える。


「…自分でフラグかよ…」


 せめて他人にフラグを…なんて考えてる場合じゃない。

 しっかりと探れば確かに爆煙の中に気配がある。

 なんなんだよほんとに……。

 ルシエルといいこのストーンタイガーといい…自分の無力を思い知らされる。


 そういえば旅に出てからそうだな…。

 厳しい修行したからって自分の力を過信してたって事か?過信しないように過信しないようにって言い聞かせた結果これかよ…。


 マナの波動?を感じる。

 空気が震えるように肌に伝わってくる…多分魔法が来る……腰を落として攻撃に備える。

 予想通り煙を切り裂くように岩の弾丸が真っ直ぐに飛んでくる。

 さっきと同じように弾こうと思ったが身体が重い…自分が思っている以上に反応が鈍い…!


 ギリギリで軌道を逸らす事が出来たが、自分の限界が近いことがわかる。


「フラフラじゃねぇか…」

「なんだよ…手貸してくれるのか?」


 隣で俺を見て笑みを浮かべているルシエルにそんな言葉を返すと鼻で笑って少し距離を置く。

 そして虎は再び飛び付いてきた。

 さっきより飛び付いてくる速度が遅い…しかしさっきより高く跳ねている。


 マナの波動を感じる……。

 咄嗟に思考するより先に体が反応を見せて右手を突き出した。


「ッ!」


 空中から岩の弾丸が数発同時に放たれる。

 マナが不足してるとかそんな場合じゃない…、迷いを振り払ってインパクトアームズを発動する。

 空間に衝撃を与えて弾丸を破壊する。

 しかしそのまま落下してくる虎に対応出来ない。

 上から押し倒されるように乗りかかられる。


「うっっ!」


 剣を寝かせて剥き出しにしてくる口を受け止めて、乗りかかられる瞬間に織り込んだ足でなんとか蹴り出そうとするがここでもまた筋力不足…。

 この重量相手に距離を蹴り離すには至らない。


 鋭い爪が腕や肩に食い込み、熱と激痛を送り込んで思考を妨害してくる。

 暴れるように襲いかかってくる虎を剣を、脚を使って必死に食い止める。

 その度に肩に腰に足にと爪が食い込んで肉を破っていく。

 血液が吹き出すように身体中が悲鳴を上げている。


 なんで俺がこんな目に……。

 そんな雑念が脳裏を過る。

 ルシエルに命乞いした方が助かる確率が上がるわじゃないか?

 やめろやめろやめろ!

 もしかしたらルシエルは助けてくれる可能性だってあるかもしれない……。

 そんな事はない、可能性が低すぎる。

 助けた上で交渉の末仲間を助けられるかもしれない。

 そんな都合のいいようになると思うか?

 あいつも雇われで働いてたんだ…ほら俺たちには金だけはあるぞ?

 報酬は金じゃなかったろ…それに今は持ち合わせがない。


「こんな事考えてられる…かぁぁぁ」


 必死に力を込めて虎を引き剥がそうとするが、引き剥がせない。

 自分の身体もそうだが、もう一つの限界が来ていた。

 先程回収した剣が限界を訴えている。

 僅かに亀裂が入り、亀裂はゆっくり…確かに広がっている。


 それを見て覚悟を決めた。

 虎の口元を押さえていた刃は真ん中より少しズレた位置で折れてしまった。

 同時に虎の牙は俺に襲いかかってくる。


 折れた刃を左手で、柄を握ったままの右腕を突き出して虎の口に向かって突き出す。

 当たり前のようにして腕が口の中に入っていく……。


「ただで食えると思うなよ!」


 俺の右腕を噛み切ろうと降りてくる牙より先に左手に握った刃をつっかえ棒のようにして抑える。


 虎の口内から血が吹き出すが、やはり折れた刃では長さも足りず、牙は俺の右腕に食い込んでいる。


「がああぁぁぁぁぁぁ」


 牙を必死に押さえ込みながら口内の右腕に意識を向ける。

 痛みが熱が意識を奪い取ろうとするが、それに屈するわけにいかない。


 現状自分の状態は最悪なのは間違いない。

 必死で牙を掴んでこれ以上…骨を断たれないように対抗して、足でもがく。

 さらに虎の口内の折れた剣を使ってどうにか……。

 虎は俺の右腕に食らいついたまま俺を振り回そうと首を引き始める。


 限界は理解している…だが、やるしかない!


「イン…パクトォォォ!」


 残っているマナありったけを右腕に集めて、放出する!

 鈍い音と共に虎は俺の右腕を離して吹き飛ばされた。


 虎は少し離れた場所で横たわっている。

 まだ息があるのはわかっている…トドメを刺さなければいけない!

 だが武器が無い…立ち上がる力が無い。

 腕に足に体に、爪や牙で引き裂かれた箇所から流血が止まらない。

 何よりマナ枯渇している。

 血が足りなくてフラフラしているのか…マナのせいでフラフラしているのか……。


 視界が暗くなっていく…。

 ルシエルが寄ってきているのがわかる…。

 何か言っているがわからない……。

 俺は…仲間を……助けないと……。


 意識は沈んでいった。



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