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五章8〜“異世界グルメ焼鳥”

 


 やってしまった…。

 昨日は久しぶりにじっくりトレーニングをする事が出来たので、張り切って振りまくってしまった。

 結果夕飯を食べて風呂を済ませると、ぐっすり眠ってしまったのだ。


 本来ならば…いやこの場合でと今日は旅の休暇中なのでいいのだ。

 逆に疲れを取る為に必要なのでいい事なのだが…。

 デート未経験の俺には準備をする時間が必要だったり……主に心の準備が。

 しかし、そんな事は言ってられないのだ!

 すでに昼前だ!

 まずは顔を洗って髪の毛を整えます。

 間違っても寝癖なんてものがないように!


 そして次は服装です。

 この世界のオシャレは今のところ俺にはよくわかりません。

 しかし世界は違い文化は違えどデートの服装で大切なのは清潔感です…って昔雑誌に書いてた気がするぞ!

 そしてタイミング良く俺たちがここについてから纏めて洗濯したとこなのでいい感じに乾いています。

 なのでとりあえず持ってきてる中で俺的にカッコいいコーディネートをするしかありません。


 しっかり鏡に映る自分の姿を確認する。

 長い赤い髪の毛を1つにまとめてある…後ろ姿は女の子だなこりゃ…。

 変なとこはない!

 あとは剣を持って外へ向かう。

 オシャレどうこうではなくこれがないと既に落ち着かないのである。

 そういえばレイスがいないな、同室なんだけど…出掛けたのかな?


 ミシェイルが宿の前に立っていた。


「あ、最後だぞ!レオ!」


 え?最後?


 レイスとエイルーナもいた。

 まぁ、そうですよね…、普通に考えてそうですよね…、ええ知ってましたとも…がっかりなんてしてませんから…。


「どうかした?元気ないね…俺と自分の美しさを比べて絶望しちゃった?」

「私は意味不明な事を言う貴方に絶望しています」


 いつも通りのレイスに、冷たく言い放つエイルーナ。

 レイスがまるで凍りついたように色が抜けて灰色に染まって固まっていく……ように見える。

 なんか気合い入れてた自分が恥ずかしくなってきた。

 デートじゃなかったのはなんか残念…かもしれないけど、別にみんなで出掛けるのも悪くないよな。

 異世界に来てからこんなのも無かったし…。


「さっさと行こうぜ〜」

「待たせたのはレオだろ!」

「一番遅かったですよね」

「え、ルーナちゃん誤差の問題じゃなかった?」

「“一番”」


 4人で街に繰り出した。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねぇねぇ、装備もいいけどさぁ、先にお昼にしない?」


 街を歩く俺たち4人。

 男女グループあるあるの前に女の子2人、後ろに男2人が歩く。

 ちなみに男が前で女が後ろでも可。

 レイスが後ろから前の2人に声をかける。


「私は構いませんよ?」


 簡単に返すエイルーナ。


「いいな、またしばらくキャンプ生活になるし、名物料理とかあればいいが…」


 乗り気になるミシェイル。

 俺たち4人の中で一番食べるのはミシェイルだ。

 レイスはかなり少食だ。

 俺は前世と比べてしまうからだろうか、あまり食べない…というよりは。美味しいと思わないので結果的に食事が進まない。

 好き嫌いも圧倒的に多い。


 その点エイルーナは好き嫌いなくしっかり食べる。

 そしてエイルーナの倍は食べるミシェイルさん。

 ちっちゃくて細いその体のどこに入るのか…、俺とレイスの食事量を足しても及ばない、流石にエイルーナも入れると勝てるかな?

 うちのメンズはなんて情けないのだろう。


「グリンダムの名産品…あ、酒か…」


 考えようとした瞬間に浮かび上がる答え。

 ドワーフは酒が大好きなのは変わらない!やはりどこの国よりも酒も豊富だ。

 といっても沢山の種類の酒があってもドワーフ達は火酒とかいうアルコール度数なんぼですかこれって酒しかほとんど飲まないらしいが……、火酒とは文字通り火がつく酒なので、あとはご想像にお任せしよう。


 そのまま街を進んでいくと、非常に食欲を唆る香りが漂ってくる。

 店の客が食べているのは串に刺さった肉に、ドロっとしたタレがかかっている…肉の種類がわからないからこんな言い方もなんだが、俺の知る前世の知識から近い見た目でいうなら…焼き鳥だ。


「あれにしよう!」


 匂いに誘われたのは俺だけじゃないようだ。

 ミシェイルが餌を目の前に置かれた犬のように見える。

 目を離したらすぐに飛びつきそうなほど興奮してるのが見てわかる、ピンと立った耳と扇風機の如く振り回す尻尾の幻影が見えるのだから。


 もうこうなったら他も見て店を探すなんて事は出来そうにないな…。


「じゃあ入りますか」


 俺たちは焼き鳥?屋で昼食を取ることにした。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 店に入り注文を済ませる。

 しばらく待つと肉を焼く音と、食欲を唆る匂いが強くなってくる。

 空腹もあって口の中には唾液が溢れてくる。

 それを飲み込みながら料理を待つ。

 俺はそんなに期待していないつもりだが、やはり食欲を唆る香ばしい匂いがすれば自然と期待も膨らむ。


 そして小柄でふくよかなドワーフのおばちゃんの手によって料理が運ばれてきた。

 前世のようにネギまとか皮とかモモと、種類があるわけではない。

 ちかみにグリンダムの山に生息する山鳥の肉らしい。

 山鳥の肉を焼いて、それに酒を混ぜて作った甘辛いタレがたっぷりと絡められている。

 串に乱雑に刺さっている肉からは皿にドロっとした赤茶の不健康そうなタレが垂れている。


「いただきます!」


 辛うじてタレが付いていない串の持ち手を指で摘み持ち上げる。

 タレが机に溢れないように注意深く口に運んでいく。

 一口…口に含むとそのまま串から肉を引き抜く。

 口の中にはタレの甘みが広がってくる。

 柔らかな肉にしっかり下味がついているからだろう。

 噛めば甘みの中に適度なスパイスが効いているのがわかる。


 この世界の料理で1番自分に合わないと思うのは味ではなく、臭いだ。

 香辛料などをしっかり使っているのだろうがそれでも肉の臭みは消えない。

 調理が悪いのか素材の問題か、素人の俺には判断しかねるが、それが一番嫌な点である。


 しかしこの肉はどうだ?

 普通に食べれば恐らく辛いと感じる程の味付けに、甘みのある濃い味付けのタレ。

 俺の1番気にしていた臭みも感じない。



「美味っ!」

「美味いなこれ!」

「美味しいですね」

「まぁまぁだね」


 なんか1人リアクションが薄いが半分以上は好印象なのだから美味しいのだろう。

 というか俺がこの世界に転生してきて初めて美味しいと感じた料理だ!

 屋敷で作ってくれていたミリターナやアルミーナ。

 旅の最中も食事を用意してくれるエイルーナには申し訳ないのだが…。


 前世でもそうだが、俺は庶民だったので素材の味どうこうより濃い味付けのB級グルメの方が舌に馴染むのだ!


 食が進む進む!

 まぁ量としてはミシェイル1人でなかなか凄いが…。


 あっという間になくなってしまった。


 まだ食べれるがそう思う時がやめどきなのだ!

 これ以上食べると食べ過ぎて動けなくなったり、無理して動いて気持ち悪くなったり…。

 ここらでやめておくのが1番美味しく食べ終えることか出来るのだ。


 各々が口元のタレを拭き取り立ち上がる。

 俺たちは本来の目標だった装備を整える為、店を後にした。





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