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五章4〜“冒険者カード”

 足に力を入れて踏み込む。

 その足で地面を蹴る。

 戦闘中ではない事を考慮してそんな物音を立てないように意識もする。


 静かに速く…エイルーナと若者に接近する。


「おいおい…」

「うちの連れがすいません、用が無ければ後にしてもらっていいですか?」


 エイルーナの肩を掴もうとする腕を止める。

 力加減はその手を止める程度…、特に忘れてはいけないのは満面のスマイルだ!

 笑顔とは人間関係において最も重要な緩衝剤だ。

 笑顔を忘れてはいけない。


 ちなみに俺の接近に反応していたエイルーナは、さりげなく道を譲っていた。

 お陰で俺が変に出しゃばってる感じに見えなくない。


「……あー、お前の女か?」

「そういうのじゃありませんよ」


 自然と周囲の視線が集まってくる。

 そこまで子供に見えないエイルーナは、元からそれなりに目立つ。

 その目立つ女をナンパしようとした若者を子供みたいな奴が止めに入るのだ。

 そりゃ目立ちますし、見ちゃいます。


 全身をロープのようなもので覆っている如何にも旅装って感じの男を見上げる。

 なんだろうか、この男の目は……赤い…青髪に赤い目とは目立つ容姿をしているな。。

 男の連れが後ろからその男の肩を叩いて出るように促している。

 それに従って俺の手を振り払って出口へと歩いて行った。

 結局なんだったんだろうか?彼らは……。


「なんで止めたんですか?」


 若者達を見送っていた俺の背からエイルーナが質問を投げてくる。


「止めなきゃ揉めたりしてないか?急に肩触られて殴ったりなんてベタなことしないよな?」


 エイルーナはそれを聞いて顎に指を当ててうーん…と悩む。

 すぐにその仕草をやめると背を向けてレイス達の元に歩いていく。

 沈黙は肯定と受け取っておこう…とりあえずだが…。


 途中で足を止めてこちらへと振り返る。


「…そういえばあの2人……グリンダムの入口で見たような気がしません?」

「ん?…んーー」

「まぁ、別に変な事でもありませんね」」


 俺はそんなに注視してなかったからか全然覚えてない。

 話した訳でも何でもない連中だし…。

 でもエイルーナの言う通り、アイツらも他所者…というか放浪する冒険者でここに居ても何も不自然な事はない。

 お互いがお互いに勝手に納得してミシェイル達の元へと向かう。


「とりあえず情報…」

「冒険者登録をしよう!」


 レイスが何か言おうとしたところにミシェイルが目を輝かせながら被せてきた。


「…別に必よ…」

「護衛や案内役を探すのも依頼すればいいし、登録していたら依頼の手間が減るらしいぞ?それに今後道中魔物が出たりしたら素材を売れるじゃないか!」


 ミシェイルなりに色々調べたのかと思えば、ミシェイルの手には冒険者登録のススメというしおりが握られている。

 さっき見たんだな…。


「別にお金は…」

「余裕がある方がいいだろう?何かあった時の身分証明にも使えるらしいぞ?」


 身分証明証か、それは便利だな。


「「………」」


 無言で見つめ合う2人…。

 隣のエイルーナに視線を移せば目が合う。

 エイルーナは多分ミシェイルに賛成だろうな…。

 感情的には、だが必要ないんじゃないかって考えもあるのだろう。


「あーー…もういいよ、さっさと登録しちゃおう…」

「ありがとう!」


 レイスが根負けしたようだ。

 ミシェイルがキラッキラなスマイルをレイスに向けると、すぐに受付に走っていく。

 エイルーナがミシェイルを追いかけていく。


「なんで反対してたんだ?俺もあって困る事は無いような気がするけど…」

「冒険者ギルドのシステムがわからないからさぁ、俺やミシェイルちゃんの身分はあんまり出ない方がいいかなって」


 確かにそう言われてみれば危険の可能性があるのかもしれない。

 だがミシェイルはもう元王女に過ぎないし、レイスは紛れも無い王子だけど…。


「でも無理っぽいから諦めたよ、なるようになるでしょ?」


 レイスはそう言って2人の後を追いかけた。

 不安要素は避ける為ってとこだけど…、ミシェイルが絶対に譲らなさそうというのは同意だな。


 俺も後を追う。

 エイルーナが受付の人から記入用紙を貰っている。

 名前を書く欄の横に血の印を押す欄がある。


 “レオリス・アストラル”

 そう記入する。


 指先を剣で軽く切って、血印を押す。

 全員が記入を終えるとエイルーナがまとめて再び提出する。

 受付の女性が、誰かの紙を見て首を傾げるが、すぐにエイルーナに一言告げた。


「なんだって?」

「冒険者カードを作るので待っててください…だそうです、それとクラン登録されるのであれば今のうちにクラン登録の準備をしておくといいらしいです」


 “クラン登録”

 ゲームでもよく聞く言葉なのである程度理解できる。

 またもや何か説明書的なものを取ってきたミシェイルが待ってましたと俺に手渡してくる。


「俺たちには関係ないな…」

「えっ…」


 さらっと流し見てすぐに俺がそう呟くと、ミシェイルが声を漏らす。


「クランの条件として、拠点となるギルドを選択する事!つまり根無し草同然の俺たちには今のところ関係ないって事だ」


 読めばわかるが結構条件はいい。

 ギルド専属の宿の割引だったり、クランが大きくなればクラン専用の建物を借りれたりと、後は金を借りたりできる。

 他にも特典も多いし1つの街に留まるなら使うべき特典だが…。


「むぅ…なら仕方ないな…」


 あからさまにガッカリした顔をするミシェイル。

 なんか可哀想に見えてきた。

 すぐにエイルーナが呼ばれて、俺たちもゾロゾロと付いてくる。


「では一度カードをお渡ししますので、カードにマナを注いでください、それでもう一度回収して確認後、登録完了となります」


 俺たちはそれぞれカードを受け取る。

 材質は鉄のように硬い。

 マナを注ぐとカードの表面が光を放って文字が浮かび上がる。

 それは自分の名前と所属クラン、ギルドランクはみんな仲良くEランク。

 このカードは最初にマナを通した者と別のマナではカードに文字が表示されないらしい。

 そのメカニズムも非常に興味があるが教えてくれたりしないのだろうな…。


 俺たちは再度カードを渡して少し待つ。

 今度は数分で終わる。

 俺たちは冒険者になった。


「登録完了しました、お疲れ様でした。」


 冒険者カードゲットだぜ!


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