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五章5〜“優しい情報屋”

 冒険者カードなるものを入手した。

 前世でいうアレだな…身分証明証、大きさは免許証くらいか?


 見た目は真っ黒のカードだ。

 裏面は無地そのもの、材質は鉄のように硬い何か…。

 表面には大きく冒険者ギルドのマークがデカデカと描かれている。

 これにマナを注ぐとカードが光を帯びて表示される。

 つまりはマナには前世でいう指紋認証とかそんなのと同じで個人を判別出来るくらいの差があるという事だ。

 常に発見に溢れているな…この世界は…。

 いや、元の世界も慣れてしまったせいでそう感じなくなっただけなのかもしれない。

 ガラケーからスマホに変わった時なんてワクワクが止まらなかったものだ。

 それなのに数年どころか数日で完全にそのワクワクは忘れ去られてしまう。

 慣れとは恐ろしい……。


 ミシェイルやエイルーナも俺と同じようにカードを興味深そうに弄っている。

 レイスもはじめはそうだったが、すぐに飽きたようだ。


「レオ!情報収集でも行こっか?」

「ああ、そうだな、2人ともあんまりうろちょろするなよ?」


 レイスからの提案に乗る。

 俺もそろそろ飽きたからな、スマホと違って色々やれるわけでもないし…。

 エイルーナもそんな感じがするが、ミシェイルはそんな事ないようだ。

 エイルーナに目でミシェイルを見ててもらうように促す。

 伝わっているのかはわからないが彼女は頷いた。


「さて、やりますか」

「ちなみにレオはどんな感じでやるの?」


 えっ?

 どんな感じ?と言いますと…そうですねぇ…。

 俺は腕を組んで考えるフリをする。

 大体の人間が腕を組んだり、顎に手を当てたりと良くある考えるポーズをする時は、半分くらいは別にどうでもいい事を考えてるらしい。

 もちろん本題について考えてないわけじゃない。

 今はドラマとか漫画とか前世の知識を漁ってやり方を考えてみる。

 つまりはこんな感じらしい。


「レイスはわかるのか?」

「わかるわけないじゃん、わかってたら聞かないよ?」


 相変わらず何か微妙に一言多いレイス節。

 慣れてきたけど機嫌が悪い時とか殴りたくなるよね。


「じゃあ優しそうな人に聞いてみよう!」

「あ、それもそうだね!あの人とかどう?」


 レイスは指差したのはピンクの髪で、露出の多い服を着た人族の女性。

 優しそうだね…うん!

 何より美人だ!


「…俺もそれがいいと思う!」


 ちなみに俺は前世で彼女が居た事がある訳はない。

 ナンパなんてした事は勿論ない。

 母と妹とは喋れる。

 バイト先の女性やクラスの女子は自分から声をかけるなんてのは余程の用事がないとこなせない。

 声なんか裏返ったり…ちょっと緊張する。

 この世界に来てからミシェイルやエイルーナ、クリスにミリターナやアルミーナ、さらにはミトレアやメイリーンといった年齢こそバラバラだが女性比率の高い生活をしてきた。

 さながらハーレムもどきと言っても言い過ぎとは言われまい。

 昔に比べてちょーっとは改善されているのだろうが女性免疫は少ない。

 一言で言うならまぁ、DTである。


 DTの人はわかる事だが、見知らぬ女性にこちらから声をかけることの難易度は非常に高い。

 エイルーナに剣を使わずに勝てって言われるより高い…それは言い過ぎか…。


「ちょっといいかな?」


 予定外だ!

 ここからさてどっちが声をかけるかという駆け引きが始まるかと構えたがそんな事はなかった!

 これが王族の自信なのか!

 これがイケてるメンズの力なのか!


「あぁ?んだよ、ガキに興味ねぇんだよ!鼻の穴1つにされたくなきゃどっか行けってんだ」


 “撃”・“沈”


「……はーい」


「………」

「………」

「人は見かけによらないね」

「…そうだね…」


 店員さんに聞いて、店主兼ヨーグのギルドマスターを紹介してもらった。

 口髭を蓄えたドワーフのおじさんが現れた。


「えっと、情報が欲しいんですけど、詳しい人とか居ますか?具体的には西の港町リズまでの経路と魔物についてです」

「ん?もしかしてお前らアレか?魔導学園に行くのか?」


 おや?なんかものすっごい都合のいい話の予感がするぞ?


「どうしてわかるの?」


 レイスが店主の言葉に食いついた。


「お前ら子供だけだろ?リズから船で渡るのはリンドルム大陸だ、そうなりゃ子供の行き先なんてそんな多くねぇ…最近グリンダムでもそうやって魔導学園に向かう奴らが多いからピンと来たわけよ!」


 店主渾身のドヤ顔!

 ただドヤ顔してもいいくらいの勘の鋭さだ。

 ギルドマスターになるとこんな推理まで出来るのか…。


「なんてな、お前アストラルだろ?その家紋、つまりは招待状かなんか来たんじゃねぇか?」

「えっ…」


 アストラルというのがバレるのはわかるが…それ以上に招待状まで…。


「魔導学園の招待状は名家には届いてるらしいからな、アストラルって名前を知らない奴いねぇさ!」


 居たんですけどね…。

 ここに来る前バッチリ居たんですけどね……。


「すごいねぇおじさん、でもあんまり…」

「おっと、ワリィワリィ、情報だったな…、そこの明るい髪した露出の多いボインの姉ちゃんがいるだろ?人族の…」


 ん?うん確かにボインだな。

 髪の毛も桜のように明るいな。

 露出の高い服を着てるなぁ…。

 優しそうな美人だな…うん!


「ナタリアっつうこの辺の道から人まであらゆる事に詳しい情報屋だ、しっかり対価を支払えば情報を売ってくれるぜ」


 そうか…彼女が情報屋だったのか。

 レイスの勘もすごいもんだな。


「だが…」


 店主は俺たち2人を見て眉を寄せる。


「何かあるの?」


 それにレイスがさらに質問する。


「ナタリアは昔子供を産んですぐに誘拐されたらしくてな…そっから何故か子供嫌いになっちまったらしい」


 なんですかこのエピソード…。

 確かに可哀想なお話ではあります。

 でも…何故嫌いになったのか…。


「へぇ…嫉妬かな?」

「わからねぇが、心ってもんは複雑に出来てるからなぁ」


 この2人のへんな空気感もちょっとついていけません。

 でも子供嫌いなったのも、色々葛藤があったのだろう。

 結果子供を嫌いになるしかないって事だったのかもしれないし…、店主のおじさんの言う通りそんなに単純じゃないからな、心ってのは…。


「まぁなんとか口説き落とせよ、2人とも可愛い顔してんだからよ」


 そのまま笑って俺たちの背を叩く。

 レイスと視線が合う…。

 ナンパ、頑張りますか…。


 俺はレイスの肩に手を置いて親指を立てた。


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