五章3〜“冒険者ギルド”
翌日…やる事は決まっていた。
まずは情報収集である。
具体的には何かというと、今後の移動経路の状況の確認。
例えば魔物は出るのか、山賊のエリアがあるとかだ。
流石ドワーフと言うべきか、やはりと言うべきか…。
山には沢山の炭鉱があるらしい、つまりは洞窟などの穴がある。
洞窟などの穴が多いとやはりゴブリンなどの魔物が湧いてくる。
特にゴブリンは非常に良く見かけるそうだ。
定期的にパトロールや討伐隊を結成しているらしいが、奴らはそれでも減らない。
さながら人型ゴキブリである。
そもそも戦闘力は非常に低いのに何故あそこまで繁殖出来ているのかなどの謎は多いが…。
嫌な事を思い出しそうだ…。
とりあえずそんな情報収集を一日かけて行う。
そしてその情報を元に護衛や案内役を探す。
「情報を集めるには何処だ?酒場?」
ゲーム脳の俺。
「情報屋とかじゃないのか?」
それはそうなんですけどねミシェイル姉さん…。
「こういう時は冒険者ギルドでしょ!これだけ大きい街なら絶対あるし」
え?
なんだって?
冒険者ギルド?
なんて素敵な響きなんだろうか!
異世界に来たらとりあえず行かなければならない場所トップ3に入ること間違いなしだ!
えっ?あと2つ?
………。
「こっちです」
レイスの言葉に行き先が決まったと、エイルーナは地図を思い出すように一瞬だけ静止すると、そのまま先導を始める。
彼女は本当に有能である。
そんな彼女も朝から宿の庭で剣を振って怒られていたのはここだけの話を。
冒険者ギルドへ向かう俺の足取りは軽い。
楽しみで楽しみで仕方がないのだ!
もちろん実際はでっかい酒場程度だとは思っているが、そういう事ではない。
異世界ライフを満喫するにはやはり欠かせないだろう!
しかしあくまでも情報収集に行くのだ、もしかしたら何かのついでにもしもの時のために一応冒険者登録しておく事があるかもしれない。
もしかしてだけどね?
可能性の話であるからね?
浮かれているのは認めよう。
しかし俺は表情には出さない。
あくまでも情報収集めんどくせぇ〜って感じを出しておく。
あれ?なんか中学生っぽい?
ふと横を見るとミシェイルと目があった。
「楽しみだな!」
「えっ?な、なにがです?」
「冒険者ギルドだ!かつて私も冒険者に憧れていた…自分がそんな冒険者になんてなれると思っていなかったからな!」
ミシェイルの目は純粋に輝いているように見える。
なんか楽しみなものを素直に楽しみだと言える彼女が羨ましい…、そうか…これが若さか…!!
実年齢オッサンには厳しいぜ!
「見えてきましたよ?」
先導するエイルーナが振り向いてそう告げる。
木造りの大きな建物。
大きなといっても二階建…つまり縦には大きくない。
横に大きいのだ!
そして冒険者ギルドのマーク…竜に乗る戦士の紋章が刻まれている。
「早くいこう!」
テンションの上がったミシェイルがそう言って俺の手を引いて駆け出していく。
後ろを振り返れば無表情を装ってるつもりかもしれないが、口元が緩んで、鼻の穴を広げて興奮が隠せていないエイルーナ。
彼女も冒険者に憧れを持っていた1人なのかもしれない。
自由の象徴のような感じだし、家柄やらなんやらで、本来自分の選択肢が少ないエイルーナにとっても恐らく憧れる職業なのだろう。
そもそも職業なのだろうか?
レイスはというと苦笑いしている。
こいつは真面目に興味なさそうだな。
俺はそのままミシェイルに手を引かれて行く。
冒険者ギルドの前に2人で立って見上げる。
視線の先にはもちろんギルドマークだ。
「おおおおおおお〜」
何がおおおおなのかはよくわからないが、そう言いたい気持ちはわからなくもない!
人は興奮してテンションが上がるとボキャブラリーへ貧相になるものなのだ、ソースは俺。
遅れてレイス達が後ろからやってくる。
「楽しむのはいいけど、目的忘れないでよ?」
「もちろんだ!」
レイスの言葉に元気よく振り返るミシェイルは、拳を握って力強く頷いている。
「本当に観光だな、こりゃ」
俺もその様子につい笑ってしまう。
ミシェイルのそういう純粋な面は見てて嫌な気はしない。
「いこう!」
ミシェイルはそう言ってすぐに冒険者ギルドに入って行く。
俺たちも後に続いた。
中は一言で言うと独特の臭いだった。
決してジャスミンな感じではない。
ベタな事に冒険者ギルドは酒場も兼任しているところが多い。
もちろんこのギルドも例外ではない。
昼前にも関わらず飲んでいる。
さらに言えばここはドワーフの国グリンダム。
どいつもこいつもあめりかも酒飲みばかりだ!
ここにくる道中でも、歩きながら飲んでるドワーフを見かけた。
酒場に入ればそりゃ飲むだろう?入る前から飲んでるやつばっかだけどな。
扉を開けてまずやってくるアルコールの臭い、そして奥に入るに連れて増える汗の臭い。
つまりは臭い。
レイスはあからさまに嫌そうな顔をしているが、いつかのゴブリンの穴に比べれば可愛いものだと俺は思う。
だからといって臭いのは臭いんだけど…。
「おおおおおおお〜!」
感嘆の声を上げるミシェイルを、見て笑っている冒険者もいる。
周囲を見渡せば様々な種族の老若男女がいる。
「ギルドは初めてか?」
言ったそばから俺たちより少し上ぐらいの人族らしき青髪の若者が、エイルーナに声をかけてくる。
つまりはナンパである、俺たち連れがいるのにナンパするのも凄い、ていうかその男の連れはフード被っててわからないが、身体つき的に女じゃあ……。
「あ、間に合ってるんで」
そんな男達を冷たく遇らうエイルーナ。
しかしその光景はいつかのデジャブな気がした。
そしてその末路も……。
レイスはエイルーナなら大丈夫だろうみたいな顔をしている。
それよりミシェイルの方を見とかなきゃ…みたいな。
俺は違うと思うのだ。
エイルーナは簡単に言うと敵味方の温度差が激しく、そして極端なところがある。
敵となれば当たり前のように斬り捨てる事が出来る。
彼女の世界には敵か、味方しかいないのだ。
普通…なのかわからないが敵がいて味方がいてその他がいるみたいなのが一番多いのではないかと思う。
クリスもややそんな感じだった。
さらにクリスは温厚に見えて短気だし喧嘩早い。
エイルーナはどうだろうか?
短気かといえば…少なくとも気が長い方ではない。
喧嘩早いかといえば違うかもしれないが、売られた喧嘩は全て買うタイプなのは間違いない。
結論は出ている。
念には念を…だ!
そしてその様子をしっかりと警戒を含んだ観察を行いながら、状況を察した。
俺は足に力を入れて踏み込んだ。




