五章2〜“岩城塞都市ヨーグ”
岩城塞都市ヨーグへ到着した。
山の中腹にある大きな街。
特徴はなんといっても巨大な岩壁である。
山の上に不自然な形で顔を出す岩壁。
それは山の中では決して場所を見失わないという役目もあるのだろう。
街ではあるものの戦時には砦と化すこの街はその名の通り城塞都市である。
街の入り口には衛兵の見張りがあり、手荷物検査があった。
俺たちはもちろん何事もなく通過。
俺の記憶…というよりイメージではドワーフとエルフは不仲な気がした。
なので手荷物検査の時にレイスに対して何かあるかと少し身構えたが、何もなかった。
そりゃそうか…こんなとこで揉め事…しかも衛兵が旅人となんてよくはないだろう。
街中に入れば特にゼレーネと大差ない…というべきか、建物は変わらず欧州チックなファンタジーなのだが、地面は手付かずというなんとも中途半端。
そこまで拘りがないからなのかなんなのかわからないが…。
山中の街ということもあり、木造りの家や石造りの家がほとんどだ。
特に石造りの家が多い、おそらく材料の問題なのだろう。
「とりあえず今日は宿に入って休みましょう」
馬を預けに行っていたエイルーナが帰ってきた。
彼女はそのままそう告げると、再び俺たちを先導するように歩き始めた。
周囲の街を観察しながらゾロゾロとその後に続く。
ドワーフというのは身体的特徴が人間と比べて見分けしにくい気がする。
基本的に背は低い。
子供の俺たちより少し高いくらいか?
男性のヒゲ率はザッと見た中でも90%を占める。
そして恰幅が良いのだ。
低い身長も合わせてより小さく見えてしまうのは気のせいか?
女性は特にわかりにくい。
小柄であるのは同じだ。
俺たちと変わらない身長の女性も多い。
ただ人間でもたまに小さい人もいるし別に珍しくもない。
そして平均的に膨よかだ。
丸々として実に柔らかそうだ。
ついでにほとんどがエイルーナに負けず劣らずの巨乳である。
ドワーフの国でドワーフの都市であるが、ここは首都アルステムに行くにも、他に行くにも経由しやすい位置にある大きな街らしい。
つまりはドワーフ以外の種族も結構見かける。
獣族や人間…相変わらずエルフは少し少ない。
もしかして本当に不仲だったりするのかもしれない。
ちなみに世界で各種族の数の割合だと、全体の約50%は人間らしい。
やはり人間様は数だけは多いと……。
次点で約20%が獣族、エルフやドワーフそれぞれ約10%らしい。
俺は始めてこの事実を聞いた時の感想は、概ね予想通りという感じだった。
残り10%はなんか色々だろ。
俺の知ってるファンタジー知識で有名なのでも、オークとかオーガとかはどうなるのか、小人族とかもあるのかわからない。
オークはともかくオーガはツノがあるからな…この世界ではツノがあるモノを魔物や魔獣として危険視する事が多い。
オーガはかなりの確率で魔物扱いされているだろう。
歩き出して数分で、宿が決まった。
エイルーナが1人で中に入って確認、そのままその宿に決まった。
1軒目で決まったのは時間的にもいい。
部屋はもちろん男女別である。
部屋はベッド2つがあってテーブルと椅子があるシンプルな造りだ。
押入れのような収納の出来る荷物入れがある。
全体的にも和室なんだか洋室なんだかよくわからないが気にしない、というかこんな事を気にするのは俺だけなのかもしれない。
完全に安全とはいかないが、グリンダム全体としてはかなり治安は良い方らしい。
なんとなくでしかないが、この街も治安が良さそうだ。
つまり安全かどうかで聞かれたら安全と答えるだろう。
部屋の確認をした後、荷物を置いた。
風呂はあるのか、部屋に備え付けなのか…。
共同であればあるのか、外に銭湯的なものはあるのか…。
体がベタベタする…しばらく濡れたタオルで体を拭く程度だったので、元文明人としてはお風呂に入って汗を流したいという感情がある。
だが、それよりも優先されたのは文明人としての感情よりも、生物としての本能だ。
何かというと…そのままベッドに飛び込んだまま意識を無くした。
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起きたら夜中だった。
窓から見える空は美しい星々が視覚に訴えかけてくる。
なになに?俺の美しさに一言?
なにそれ嫌だ…レイスみたい…。
その本人はというと、ベッドにいなかった。
「腹減ったな…」
ふと静寂の中自分の呟きが響いた気がする。
呟いたのは自分だが、無性に寂しくなったの気がする。
かといってやる事もない……ない事はないけど…。
ふとそのまま窓の外の景色を眺めてみた。
ペルロやゼレーネと違って比較的夜は暗い街だ。
明かりが少ない。
ただ気配はあるし、店も人通りもない事はないのだろう。
空は星だけではない…、月もある…今日は歪な形に見えるな。
思えば月を見上げる度に満月の夜な気がする。
その時は余りいい事が起きない気もするな…。
背後に気配がして、振り向くのと同時に扉が開く。
「あ、起きてたんだね」
「何処にいってたんだ?」
帰ってきたレイスの姿を見て何となく察してはいたものの、一応聞いてみた。
「え、お風呂だよ?この宿大きい浴場が付いてるんだって!そこに入ってきたんだ!」
少しテンション高めな感じでそう語るレイスは、珍しく歳相応に見える。
「いいね!俺も入ってこようかな!」
「入っとくべきだなあれは!」
そういうレイスの言葉に心躍らせながら、風呂の用意をする。
といっても着替えを用意するくらいだが…。
「あ、なぁレイス…」
「なに〜?」
「その風呂って混浴だったりする?」
なんとなく頭をよぎった事を聞いてみた。
レイスは少し目を丸くした。
だが次第に口角を吊り上げる。
「残念だねぇ、俺もちょっと期待したんだけどね」
「…マジかぁ〜」
こんなくだらない会話は少し久々な気もする。
何かとやる事に追われて、意味のない会話なんて何かを伝える時の前置きでしかなかったりする。
普通に考えれば意味なんて皆無なこの会話が少し嬉しかった。
「でもルーナちゃんとかのすごーーく気にならない?」
「確かにな!あいつでかくなってきてるし、なんかたまに目のやり場に困るしな」
「あからさまに見てるのバレたら殺されそうだしね!」
こんなくだらない会話に癒される事が…仲間がいる事に感謝出来る。
というか内容は男子中学生のソレである。
「たまに水浴びとかなんかソワソワするよな」
「そろーっとトイレとか行こうかと思うよね」
「わかるわかるっ!」
それでも話は止まらない。
内容はグズかもしれないが…男なんてこんなもんでいいんだ。
「それより先に風呂入らないと多分閉めちゃうよ?」
「え、んじゃ行ってくる!」
「俺は先寝とくよ!」
「ああ、おやすみ」
レイスの言葉で俺は部屋を出た。
出てから場所わかるかと不安になったが、すぐにわかった。
こんな会話はたまにはして息抜きも必要だな、と感じる。
まだガキのくせに何言ってんだろうかって思われそうだな…。
中身だけなら結構いい歳になってきているものだが.そんな事を言ってはいられない。
今を笑って精一杯やっていこう。
久しぶりの風呂を堪能する事ができた。
元日本人として物足りないとこもあるが、これは素晴らしい文化である。
日本人がこっちに来て広めたわけじゃないのだろうけどね。




