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四章7〜“庭みたいな森”

 この世界の馬は素晴らしい。

 前世の馬は競走馬でも自動車と同じくらい。

 大体60キロ前後らしい。


 しかしこの世界の馬はもっと速い。

 もちろん計測器がない上体感でしかないが、本当に飛ぶ様に速く走るのだ!


 さらに馬力が違う。

 食事か環境か何が影響してかはわからないが、馬が力強い。


 何より乗り手のマナを与える事でさらに加速する。

 マナが風の抵抗を減らして軽く速くするのだ。

 かなり練習したけど。

 総じて環境の厳しさ故か元の世界より馬が逞しい。

 まぁ元の世界の馬に乗ったこと無いから比べるのも変な話だよね。



 ということで今は並んで並走している。

 天気も良く風が気持ちいい。

 周囲は一面平原と言うべきか…。

 たまに岩山があったりするが、基本的に緑が広がっている。

 前を向けば少し大きい森が見える。

 少し大きいなんて言葉は、王都から逃げる時に抜けた森を見なければそうは思わなかっただろう。


 あの森は色々と大きかったしな。

 ちなみに目の前の森を抜ける予定だが、あの森は何度も来ている。

 サバイバルに慣れる為という演習も行った。

 なのであの森はよく知っている、庭みたいなものだ。


「日暮れまでに森を抜ける?」


 並走している中レイスが確認をしてくる。


「あー…どうしようか…」


 あの森なら野営も容易だろう。

 木の実なども把握しているし食事に困る事もない。

 現存種の魔物も比較的大人しく弱い。

 夜襲の心配も低いが、夜の森は時に予想を上回る危険を仕向けてくる。


「…よし、少し無理してでも今日中に森を抜けよう!」

「わかりました!」

「わかった」

「あいよ」


 各々が返事を確認すれば、馬を抱くように前屈みになる。

 この世界の乗り手のマナを吸収するのだ。

 手からマナが触れているのが分かる。

 力が…命が僅かにだが抜かれているような錯覚を受ける。


 しかしその分馬は加速する。

 普段でも飛ぶ様に速く走るが、それどころではないほどに…。

 景色を楽しむ余裕なんて無くなる。

 姿勢を正すと、風に呑まれて落馬するだろう。

 そんな状態で馬を操るのだ。

 そりゃ要訓練です。


 風を切り裂き草原を駆け抜ける。

 天候も見晴らしも良好。

 必要以上に注意を払う必要はない。

 真っ直ぐに森へ向かっていった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 森に着いた。

 アストラル領は自然に囲まれた土地故に、馬もまた森や山に適応している。

 かといってここで馬にマナを与えて加速はしないが…。

 外ほど視界が良くないので、ある程度の速度で街道を進む。


 この森は基本的に徒歩で行動していたが、馬で通るのも初めてではない。


「お腹すいてこない?」


 先頭を行くのは基本的にレイスだ。

 その後にエイルーナ、ミシェイル、そして俺。


 レイスは何かと移動するとなると先頭に立つ。

 索敵能力が高いのもあるが、こういう時だけは率先して前に進む。

 ちなみに俺は毎回1番後ろな気がするな。


「もう昼時か?」

「朝食から時間も経ってますし、確かにいい時間かもしれませんが…」


 ミシェイルの問いにエイルーナが答えた。

 その後全員が足を止めずに振り向いてくる…。


「……なんだよ」

「どうする?…って」


 最近最終決定は俺にって風潮がある。

 信頼されているって事だから素直に嬉しいと思わなくもないが…。

 やはり少し重圧にも感じる。

 何故か俺がリーダー扱いされているのは納得がいかない。

 そもそも年齢ならエイルーナだ。

 しかし立場的には色々やりにくいと思う。


 では肩書き?

 エルフの国の王子様と、バルメリア王国の…今は少し難しいか。

 なんにしろレイスかミシェイルでいいのでは?と思っている。

 しかし視線が…。


「はぁ…拠点にしてたでっかい木があったよな?そこまで進んでから休憩しよう」


「わかりました」

「了解だ」

「あいよぉ」


 各々返事をしてそのまま前を向いた。







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 でっかい木。

 植物には詳しくない俺にはなんの木なのかわからない。

 ただこの森の中心辺りにあって、この森で多分1番大きい木だ。

 あまりにも雑なのは許してほしい。


 サバイバル演出の際はこの木を拠点というか目印にして活動していた。

 なので周囲の警戒するポイントなども全員が慣れている。

 比較的安心して休憩することが出来るだろう。


 昼食は来るまでに回収しておいた果物だ。

 果物がなる木を覚えていたのでそこを通ったルートでこの場所に来た。

 1日目なので食料に困る訳ではないが、節約出来るところは節約するべきだろう。


「俺この果物苦手なんだよね…誰か皮むいてくんない?」


 林檎に文句を言うレイス。

 皮が気にくわないらしい。

 子供かと突っ込みたくなるが、子供なのだ。

 サバイバルの時もそうだが、森の中で食材を探すと「これ食うの?」というものが用意されたりする。


 簡単に言えば虫とか虫とか虫だ。

 俺は前世から今でもそうだが虫は嫌いだ。

 勿論蜘蛛を見かけただけで緋色の瞳になって殺意を撒き散らして暴れたりしない。


 しかしヒッ、と少しビビる。

 ちなみにレイスも同じ感じだ。

 だがうちの女性陣は違う。

 逞しいのだ。


 虫を食べる事になったら俺は泣きそうになりながら食べるかどうか悩む。

 レイスは食べない、空腹を選ぶ。


 エイルーナはと言うと…。

「虫は栄養価が高いのでサバイバルには欠かせませんよ?」

 と、当たり前のように食べる。

 ミシェイルに関してはそんなエイルーナの言葉を聞いてふーんって感じで気にも止めない。

 この王族感の無さはある意味すごい。

 初期の印象とは全然違うものだと…。

 まぁ月日も流れたしな!

 環境が変われば人は変わるのだ。


 レイスの為に皮を剥く奴なんていない。

 沈黙が流れるのでレイスは仕方ないと、そのまま食べる。

 はじめからそうすりゃいいのに…。


 水分補給も少ししてから、再出発する事にした。

 この森はそんなに広くないので、可能なら夜までには出ておきたいからな。

 再び馬を走らせる。



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