研究、研究、研究(主人公視点始まります。)
「ばあや、大丈夫?」
ベットに横たわったまま、声だけが聞こえてくる。
「大丈夫だから、大好きな研究をしてきなさい。ちーがここにいてくれるから、ね?」
「うんわかった。」
私はそう言い残し、部屋を出る。
最近している研究は、『体が動きにくいばあやのために腕をもう一本生やす研究』だ。
どうして急に元気がなくなったのか、それはわかる。
老衰、生物ならば誰でもあること、でも私が一人前になって独り立ちするまでは離れないって言ってたし、ばあやのためになる研究を続けることは間違ってないと思う。
そうだ、育てた植物を使ってスープを使ってあげよう。
健康に良いものを食べたら、今よりも元気になってくれると思うから。
「ばあや、野菜たっぷりのミルクスープ食べて。」
そう言いながら、部屋に入った。
ばあやは少し驚いて、いつもの笑顔に戻った。
「ばあや、体はどう?動かしにくいかな?」
「少しだけね?」
スープを啜るばあや。
それをじっと見つめるちーと私。
静かで、ばあやがスープを啜る音が響くだけの空間。
だんだんばあやの鼻を啜る音が混じってきた。
「どうしたの?ばあや?腕とかが動かしにくいと思って、3本目の腕を生やす魔術を作っているの、もう少しだけ待ってね。ばあやの役に立てると思うから。」
なにか味付けや野菜に問題があったのだろうか?
よくわからない。
「どうしてばあやは泣いてるの?」
ばあやからは、わからないことは聞いて、全部はわからなくてもいいからわかろうとするあなたが好きと言われ育ってきた。
特に人の気持ちなどは、少しだけ難しい。
「なんでもないの。でも、さみしくさせてしまうと思って『愛』を知り始めたあなたなら一人でやっていけるのだろうけど、リナの成長を最後まで見届けられないことが悔しいの。さみしいの。」
「さみしいなにそれ?」
「ふふっじきにわかるわ。」
しばらくちーと遊んだあと、私はばあやから空の食器を受け取った。
「じゃあ、ばあやのために研究をするよ。」
そう言いながら、部屋のドアに手をかけた。
「わかった、スープありがとうね、料理もできるようになって素敵なお嫁さんになれるわ。」
「お嫁さんにはならないと思う。だってなんで、王都から女の子を連れ出して田舎で暮らす小説を読んで思ったけど、他人のためにあそこまで本気になって、努力して、私は人にあんなことしないし、されないと思う。魔女の森に男の人はいないから結婚?みたいなのはしないでしょ?」
「わかるのよ。あなたはいつか、ずっと一緒にいたいと思えるような人と出会うから。」
「うーん、まぁそっか。小説みたいに、現れてその時になったら、ばあやの前に連れてきてあげるからね。」
内心ないだろうなと思いながら、そう告げた。
「ありがとう。きっと素敵な人だわ。ごめん、おせっかいだったわね。」
「気にしないで、嬉しいよ。」
おせっかいは別に悪い気はしない、大切にされている感じがするから。
ばあやを残し部屋を出る。
自室で、魔術の術式についても一度、確認する。
「ここが、ちょっとだけ変?」
「いや〜、そうなるのか。」
3本目に腕については、正直うまくいっていない。
筋肉の再現が足りないのか、はたまた腕を生やす場所がいけないのか、手詰まり状態なのだった。
今日はだめな日だなと見切りをつけて、睡眠の準備に入ることにする。
布団に入り、今日の一日を振り返る。
「ずっと一緒にいたい人か。」
私は、ずっと研究できれば満足だと思う。




