すこしだけ大人になったね。
「リナ、お誕生日おめでとう。」
今日、リナは15歳の誕生日を迎えた。
亜人種である『魔女』は女しか生まれないし、研究していると勝手に子どもが生まれる種族なのだ。
それ故、家族という概念すらほとんどない。
完全個人主義な種族だ。
誕生日すら記憶している人のほうが少ない。
そんな中で、毎年誕生日を祝っている。
「ばあや、ありがとう。誕生日のプレゼントは何?」
毎年、実験器具や昆虫の抜け殻などを要求される。何年も一緒に暮らしているが、時々この子も魔女だな〜なんて思ってしまう。
「今年はこれね。」
差し出したプレゼントは本2冊。
恋愛小説と学術本である。
「うわ〜、嬉しいばあやありがとう。」
そうやってニコニコするリナを見て、やっぱり私が15年やってきたことは間違えじゃないことじゃない、正しく育ててあげられている、そう思えてくる。
実際、魔女は人族の文化の発展には必要不可欠であり、はじめはこの子にしっかり人のために力を使い研究に励む子になるように教育しようと頑張っていた。
最初はわかってもらえないことも多かったけれど、だんだんわかるようになってきて、人も亜人も変わらない、そう思わせてくれる。
優しい子だから、同じく優しい人と夫婦として愛を育むなんて、魔女の子に望むのは少しおかしいかしら?
おせっかいを焼いてしまうのは母親として当然のこと。
故に何もおかしくはないのだろう。
「ゴホッゴホッ、」
「ばあや、どうしたの?最近咳が多い気がするけど?」
「いいや、元気よ?大人になったあなたが、何を成し遂げるのか見届けるまで死ねないわ。あなたの母親だからね?」
「ふふっ」
体を労ってくれるようになった。
他人を気にかけるようになった。
そんなことができる魔女はこの森でこの子だけだろう。
決して、親ばかとかそういうのではない。
◇◆◇◆
トカゲのジェイルを飼い始め、1年と6ヶ月ほどで寿命を迎えて死んでしまった。
世話はずっとリナがしていて、餌を上げたり、脱皮のお手伝いをしたりしていた。
手のひらを這うジェイルを愛おしそうに見つめていた。
紛れもない家族だった。
「胸の中がぐるぐるしてる。わからないばあや。」
そう言っていた彼女に、悲しいという気持ちを教えた。
そこではじめて、死ってものをほんとうの意味を理解してくれたようで、二人でお墓を作り、お祈りをした。
少しずつ、ゆっくりでも成長していっている、この子を最後まで見守らなければ、そう思いながら早速本を読み始めた彼女の方を見る。
◇◆◇◆
リナが、プレゼントした本を持って部屋に来た。
「ばあや、亜人種と人って何が違うの?」
もう寝ようかと思ったとき、声をかけられた。
「もう寝る時間よ?明日教えてあげますから寝ましょう?」
「今がいい。気になって寝られない。」
はあ、本当にこの子は。
「わかっていることは亜人はほぼ人であるという事実だけ。人も獣人も魔女も竜人もエルフも全員変わらないわ。何も違わない、姿より中身を見れる優しい魔女になってほしい。」
「うーん。まあわかった。姿が違うだけで、ほとんど同じ。」
「そうよ。実際に見て話すとわかると思うけど、ほんとに違いはないわ。」
「でも、魔女はこの森から出れないし、みんな出ようと思わないんでしょ?私も出ようなんて思わないし。」
「まあ、気になったら森を出ればいいじゃない別に。」
色々経験をして、素敵なおとなになってね。
『大好きよ、リナ。おやすみなさい。』
そう言い、おでこにそっと口づけをした。




