↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第六章 休め!
PR
35/36

第四話 人助け

賑やかな通りを、僕たちは再び歩いていた。

先ほど見た魔道具だけじゃない。

店先には見たことのない食べ物や道具が並び、道を歩く人たちの声があちこちから聞こえてくる。


「ノエルお兄ちゃん、見て!あれ美味しそう!」


シャロが少し先の露店を指さす。


「さっき焼き菓子食べてなかった?」


「あれはさっきだよ!」


「そんなに時間経ってないと思うけど……」


「美味しそうなものは別なの!」


「そういうものなの?」


「そういうもの!」


「ははっ。シャロに聞いても食い物の話しか出てこねぇぞ。」


エインが笑いながら言う。


「だっていっぱいあるんだもん!」


「まあ、気持ちは分かるけどね。」


「アリスも?」


「だって、あんなに美味しそうなものが並んでたら気になるでしょ?」


「ほら!アリスも同じだよ!」


「私は見てるだけだから!」


「本当に?」


「……たぶん。」


「ははっ!結局同じじゃねぇか。」


「もう、エインまで!」


そんな話をしながら、僕たちは通りを歩いていく。


「──ですから、結構です。」


「……?」


ふと、人混みの向こうから声が聞こえた。

声のした方へ目を向ける。

通りの端に、一人の女性が立っていた。

その前には二人の男がいて、何かを話しているようだった。


「そんなこと言わずにさ。少しくらいいいだろ?」


「すみません。急いでいますので。」


女性はそう言って横を通り抜けようとする。

けれど、男の一人がその前へ回り込んだ。


「ちょっと話すだけだって。」


「……困ります。」


「……」


どうやら、知り合いというわけではなさそうだ。


「どうしたの、ノエル?」


僕が足を止めたことに気づいたのか、アリスが振り返る。


「あそこ……」


僕が視線を向けると、アリスも女性たちに気づいたようだった。


「ああ……なるほどね。」


「何かあったの?」


シャロも不思議そうに首を傾げる。


「いや、ちょっとな。」


エインは女性たちの方へ目を向けた。


「……少し待ってろ。」


「エイン?」


「すぐ戻る。」


エインは何事もないように、女性の方へ歩いていく。


「悪い、待たせたな。」


片手を上げ、女性へ気さくに声をかける。

その表情は柔らかく、まるで知り合いに会ったときのように自然だった。


「……え?」


女性が驚いたようにエインを見上げる。


「探したぞ。こんなところにいたのか。」


エインは普段と変わらない調子で言葉を続ける。

女性は一瞬戸惑っていたものの、すぐに何かを察したようだった。


「……ごめんなさい。少し店を見ていて。」


「ったく。先に行くなって言っただろ。」


エインは困ったように笑う。


「で、こいつらは知り合いか?」


「……いえ。」


「そっか。」


エインは男たちへ視線を向ける。


「悪いな。連れが待たせたみたいで。」


男たちは何か言いたそうにしていたが、エインと女性を交互に見ると、諦めたようにその場を離れていった。


「……ふぅ。」


男たちの姿が見えなくなると、エインは女性へ向き直った。


「悪かったな。勝手に知り合いのふりして。」


「いえ、とんでもありません。」


女性はほっとしたように微笑む。


「助かりました。ありがとうございます。」


「気にすんな。困ってるように見えたからな。」


「本当に、ありがとうございました。」


女性はエインに向けて頭を下げた。


「エイン!」


女性と話し終えたところで、僕たちもエインのもとへ向かった。


「おう。悪い、待たせたな。」


「さすがエイン。慣れてるねぇ。」


アリスがからかうように笑う。


「何がだよ。」


「女の人を助けるのが、だよ。」


「困ってたから声かけただけだろ。」


「ふふっ。そういうことにしておくね。」


「ったく……」


二人のやり取りを聞きながら、僕はふと女性へ目を向けた。

頭には獣の耳があり、腰のあたりからはふさふさとした尻尾が伸びている。

獣人だ。

黎明の翼(アルバ)でも見かけたことはあるけれど、こうして近くで見るのは初めてかもしれない。


「……」


尻尾が、ゆっくりと左右に揺れている。


「……ノエル?」


「……?」


「触っちゃだめだよ。」


「……触らないよ。」


「すっごく気になってる顔してるけど?」


「だって……動いてるから。」


「そりゃ動くでしょ!」


アリスが思わず笑い出した。


「ノエルお兄ちゃん、尻尾が気になるの?」


「……少し。」


「ふふっ。」


そのとき、女性が小さく笑った。


「そんなに珍しいですか?」


「あっ……すみません。」


慌てて視線を逸らす。


「いえ。お気になさらないでください。」


女性は優しく微笑んでいた。


「それでは、私はそろそろ失礼しますね。」


女性は僕たちに向かって小さく頭を下げる。


「本当にありがとうございました。」


「おう。気をつけてな。」


「はい。それでは。」


女性はもう一度微笑むと、人混みの中へ歩いていった。

その後ろ姿を見送りながら、僕は小さく息を吐く。


「……いい人だったね。」


「そうだな。」


エインが頷く。


「それにしても、ノエル。」


「ん?」


「そんなに尻尾が気になったのか?」


「……そんなに見てた?」


「ははっ!そりゃもう、じーっとな!」


エインが楽しそうに笑う。


「もう、エイン。あんまりからかわないの!」


「お前も散々からかってただろ。」


「それはそれ!」


「なんだそりゃ。」


二人のやり取りを聞いていると、隣から小さな声が聞こえた。


「……お腹空いた。」


「シャロ?」


「いっぱい歩いたから、お腹空いちゃった!」


「さっき焼き菓子食べてたよね?」


「それはおやつだもん!」


「……そうなんだ。」


「ふふっ。まあ、そろそろお昼だしね。」


アリスが空を見上げる。


「ちょうどいい時間じゃない?」


「そうだな。どっかで飯にするか。」


「やったー!」


シャロが嬉しそうに両手を上げる。


「それなら、いいお店知ってるよ!」


「アリスのおすすめ?」


「うん!料理がすっごく美味しいんだから!」


「へぇ……」


「それに、結構量もあるよ!」


「ほんと!?」


シャロが目を輝かせる。


「そこがいい!」


「まだ何が食べられるか聞いてないけど……」


「美味しくていっぱいなら大丈夫!」


「ははっ!決まりだな。」


エインが笑いながら言う。


「じゃあ、案内よろしくな。」


「任せて!」


アリスは胸を張ると、僕たちの先を歩き始めた。

その隣を、シャロが嬉しそうについていく。


「何が食べられるかなぁ!」


「行ってからのお楽しみ!」


「えー!教えてよー!」


二人の賑やかな声を聞きながら、僕もエインと一緒に歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。