↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第六章 休め!
PR
34/36

第三話 魔道具

「着いたよ!」


アリスがそう言って振り返る。

その先には、たくさんの人で賑わう通りが広がっていた。

道の両側には色とりどりの店や露店が並び、あちこちから楽しそうな声が聞こえてくる。

食べ物を売る店。

衣服や装飾品を並べた店。

見たことのない道具を扱っている露店もある。


「……すごい。」


「でしょ?」


アリスは得意げに笑う。


「ベルフォードに来たなら、ここは見ておかないと!」


「有名なの?」


「うん!ベルフォードでも特に賑やかなところだよ。」


アリスは行き交う人たちへ視線を向ける。


「この辺りは遠くから来た人も多いんだ。」


「遠くから?」


「観光だったり、商売だったり。黎明の翼(アルバ)を見に来る人もいるしね。」


「黎明の翼(アルバ)を?」


「そ。せっかくベルフォードまで来たなら、一度は見てみたいって人も結構いるんだよ。」


「へえ……」


黎明の翼(アルバ)が有名だということは聞いていた。

けれど、そのために遠くから人が訪れるほどだとは思っていなかった。


「だから、この辺りにはいろんな地方のものが集まってくるんだよ。」


「いろんな地方の?」


「うん。食べ物もそうだし、服とか道具とかもね。」


「へえ……」


改めて通りを見渡す。

よく見ると、店先に並んでいるものも一つ一つ違っていた。

見たことのない果物。

色鮮やかな布。

不思議な形をした道具。


「ほら、見てないで行くよ!」


「あ、うん。」


アリスに呼ばれ、僕も賑わう通りへ足を踏み入れる。

人の流れに混ざりながら、店先に並ぶものへ目を向ける。

どれも見慣れないものばかりで、ついあちこちへ視線が動いてしまう。


「……ん?」


ふと、一つの露店が目に留まった。

並んでいるのは、食べ物でも装飾品でもない。

小さな箱や、透明な石のはめ込まれた道具。

何に使うのか分からないものが、いくつも並んでいる。


「……あれは?」


僕が足を止めると、アリスも振り返った。


「ああ、魔道具だね。」


「魔道具?」


「うん。もしかして、よく知らない?」


「名前は聞いたことあるけど……」


改めて露店へ目を向ける。


「どんなものなの?」


「簡単に言えば、魔力を使って動く道具かな。」


「魔力を……」


「ほら、ノエルも持ってるでしょ?」


「僕も?」


「LINK(リンク)。」


「……LINK(リンク)?」


思わず、自分のLINK(リンク)へ手を伸ばす。


「これも魔道具なの?」


「そうだよ。」


「知らなかった……」


「魔力を流して使ってるのに?」


「……そう言われると、確かに。」


アリスがくすっと笑う。


「LINK(リンク)は黎明の翼(アルバ)で使ってるものだから、ここに並んでるものとはちょっと違うけどね。」


「じゃあ、ここにあるものも魔力を流せば使えるの?」


「ものによるけど、大体はそんな感じかな。」


「へえ……」


改めて並んでいる魔道具へ目を向ける。

そう言われても、どれが何に使うものなのかはまったく分からない。


「……これは?」


僕は、透明な石のはめ込まれた筒を指さした。


「それが気になるかい?」


不意に声をかけられ、顔を上げる。

露店の奥にいた店主が、こちらを見て笑っていた。


「はい。これは何に使うものなんですか?」


「そいつは風を起こす魔道具だよ。」


「風を?」


「ああ。暑い日に涼んだり、濡れたものを乾かしたりするのに使うんだ。」


「へえ……」


見た目はただの筒にしか見えない。

この筒から風が出ると言われても、いまいち想像できなかった。


「試してみるかい?」


「いいんですか?」


「もちろん。そこに少し魔力を流してみな。」


店主に言われ、筒を手に取る。

透明な石の部分へ意識を向けながら、ゆっくりと魔力を流していく。


「……こうかな。」


ふわっ。


筒の先から、柔らかな風が吹き出した。


「……出た。」


「上手いじゃないか。」


「これ、もっと強くできるんですか?」


「ああ。流す魔力を増やせば、その分だけ風も強くなるよ。」


「なるほど……」


僕は筒を眺める。


「じゃあ、もう少し──」


魔力を少しだけ増やす。


ブワッ!


「わっ!?」


強い風が顔へ吹きつける。

前髪が一気に持ち上がり、視界が開けた。


「……」


一瞬、妙な沈黙が流れる。


「ぶはっ!」


最初に吹き出したのはエインだった。


「お前、なんだその頭!」


「え?」


「ノエルお兄ちゃん、髪すごい!」


シャロも声を上げて笑う。


「ちょ、待って!そのまま、そのまま!」


アリスまで笑いながら僕を見る。


「そんなに変?」


「変っつーか……ははっ!駄目だ、腹痛ぇ!」


「……」


僕は魔力を流すのを止める。

ふっと風が止まり、持ち上がっていた髪がぱさりと落ちた。


「……そんなに笑わなくても。」


「悪い悪い。」


エインはそう言いながらも、まだ笑っている。


「全然悪いと思ってないでしょ。」


「よく分かったな。」


「分かるよ。」


「もう一回やって!」


面白かったのか、シャロもキラキラと輝く瞳でこちらを見上げている。


「やらないよ。」


「えー!」


「なんで残念そうなの?」


乱れた前髪を手で直しながら、もう一度筒を見る。


「でも……面白いね。」


「気に入った?」


「うん。」


僕はもう一度、ほんの少しだけ魔力を流してみる。


ふわり。


今度は、さっきよりも穏やかな風が吹いた。


「……これくらいかな。」


「お、今度は上手くできたな。」


「魔法って、こういうことにも使えるんだね。」


「そりゃそうだ。」


エインが笑いながら答える。


「戦うためだけにあるわけじゃねぇからな。」


「他にもあるの?」


「そりゃな。火を起こすものもあれば、水を出すものもある。探せばいくらでもあるぞ。」


「そんなに……」


改めて露店に並ぶ魔道具へ目を向ける。

今までは何に使うのかも分からなかったものが、少しだけ違って見えた。

魔法は戦うためだけのものじゃない。

誰かの生活を少し便利にするためにも使われている。

そんなことすら、今の僕は知らなかった。


「ノエル、そろそろ行くよ!」


いつの間にか、アリスとシャロは次の店を覗いていた。


「あ、うん!……ありがとうございました。」


魔道具を店主へ返し、僕はエインと一緒に二人の後を追った。

まだ、この街には僕の知らないものがたくさんある。

そう思うと、少しだけ楽しみになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。