↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第六章 休め!
PR
36/36

第五話 外食

アリスに案内されて、僕たちは賑やかな通りから少し外れた場所へやってきた。


「着いたよ!ここ!」


アリスが足を止めたのは、一軒の料理店の前だった。

木製の看板が掲げられた建物からは、食欲をそそるいい香りが漂ってくる。


「わぁ……!」


シャロが目を輝かせる。


「美味しそう!」


「まだ頼んですらないだろ。」


エインが笑いながら言う。


「だって、いい匂いするもん!」


「ふふっ。ここの料理、本当に美味しいんだから!」


「アリスはよく来るの?」


「うん!休みの日とか、たまにね。」


そう答えると、アリスは慣れた様子で扉を開けた。


「さ、入ろう!」


「お邪魔しまーす!」


シャロが元気よく続く。

僕もエインと一緒に店内へ足を踏み入れた。


「……わぁ。」


思わず声が漏れる。

店内にはいくつものテーブルが並び、あちこちから楽しそうな話し声が聞こえていた。

料理を運ぶ店員。

湯気の立つ皿。

美味しそうに食事をする人たち。

その光景を見ているだけで、なんだかお腹が空いてくる。


「いらっしゃいませ!四名様ですか?」


「はい!」


「それでは、こちらへどうぞ!」


店員に案内され、僕たちは窓際の席へ向かった。


「やった!窓際だ!」


シャロが嬉しそうに椅子へ座る。

僕もその向かいに腰を下ろした。


「はい、こちらが本日のメニューです。」


店員がテーブルに置いたものを、アリスが早速手に取る。


「さて、何にしようかなぁ。」


「私、お肉!」


「早ぇな、おい。」


「だってお腹空いたんだもん!」


エインが呆れたように笑う。

そんな二人を見ながら、僕もメニューへ目を落とした。


「……いっぱいあるね。」


「迷っちゃうでしょ?」


「うん。どれも美味しそうで……」


「ノエルは何が食いたいんだ?」


「えっと……」


改めてメニューを眺める。

肉料理に魚料理。

温かいスープや、色とりどりの野菜を使った料理。

どれも気になる。


「……おすすめってある?」


「それなら!」


アリスが勢いよく顔を上げた。


「私のおすすめ、教えてあげる!」


アリスはメニュー表を指さす。


「私のおすすめはね、この鶏肉ときのこの包み焼き!」


「包み焼き?」


「そう!器の上を焼きたての生地で覆ってあって、中にはお肉ときのこがたっぷり入ってるの!」


「へぇ……」


「それでね、上の生地を崩すと、中から熱々のクリームが出てくるんだよ!」


「……美味しそう。」


「でしょ!?」


「じゃあ、僕はそれにしようかな。」


「ほんと!?絶対気に入ると思うよ!」


アリスが嬉しそうに笑う。


「アリスもそれにするの?」


「んー、今日はこっちかな!」


アリスが指さしたのは、香草焼きの肉料理だった。


「あれ?違うんだ。」


「だって、こっちも美味しいんだもん!」


「へぇ……」


「私はこれ!」


シャロが勢いよくメニューを指差す。


「お肉の大盛り!」


「お前は、さっきから肉しか言ってねぇな。」


「だって好きなんだもん!」


「まあ、好きなもんを食うのが一番だからな。」


「エインは?」


「俺か?そうだな……」


エインは少しだけメニューを眺める。


「牛肉の煮込みにするか。」


「それも美味しそうだね。」


「おう。こういうのはパンと一緒に食うのがうめぇんだ。」


「へぇ……」


みんなが選んだ料理を聞いていると、どれも美味しそうに思えてくる。


「……なんだか迷ってきた。」


「ええっ!?ノエル、もう決めたんじゃなかったの!?」


アリスが驚いたように僕を見る。


「だって、みんなのも美味しそうだから……」


「ははっ!なら、また来りゃいいだろ!」


エインが笑いながら言う。


「……また?」


「あぁ。別に今日しか来られねぇわけじゃないんだからな。」


「……そっか。」


そうだ。

今日食べられなかったものは、また別の日に食べればいい。


「じゃあ、今日は包み焼きにするよ。」


「うん!それがいいと思う!」


「それじゃ、注文しちゃおっか!」


アリスが店員を呼び、僕たちはそれぞれ選んだ料理を注文した。


「楽しみだなぁ!」


シャロが待ちきれない様子で足を揺らしている。


「お前、ほんと食い物のことになると元気だな。」


「いつも元気だもん!」


「違いねぇ。」


そんなやり取りをしているうちに、厨房の方から香ばしい匂いが漂ってきた。


「……いい匂い。」


「でしょ?待ってる間もお腹空いちゃうんだよね。」


アリスも厨房の方へ目を向ける。

しばらくして、店員が料理を運んできた。


「お待たせしました!」


テーブルの上に、次々と皿が並べられていく。

香草の香りが漂う肉料理。

たっぷりと肉が盛られた皿。

湯気の立つ牛肉の煮込み。

そして、僕の前には、こんがりと焼き色のついた生地で覆われた器が置かれた。


「……これが包み焼き?」


「そうそう!上の生地を崩してみて!」


アリスに促され、僕はスプーンを手に取る。

そっと生地を押してみると、サクッと軽い音がした。


「……あ。」


割れ目から白い湯気が立ち上り、温かな香りが広がる。

中には鶏肉ときのこがたっぷり入っていて、とろりとしたクリームが見えた。


「……すごい。」


思わず呟く。


「ね!美味しそうでしょ?」


「うん……!」


「じゃあ、食べよっか!」


「いただきまーす!」


シャロの元気な声に続いて、僕たちも食事を始めた。

崩した生地にクリームを絡め、そっと口へ運ぶ。


「……!」


サクサクとした生地の食感。

濃厚なクリームの優しい味わい。

柔らかな鶏肉と、きのこの香り。


「……美味しい。」


「ほんと!?」


アリスが嬉しそうに身を乗り出す。


「うん。すごく美味しいよ。」


「よかったぁ!」


アリスは満足そうに頷いた。


「ノエルお兄ちゃん!こっちも美味しいよ!」


シャロが自分の皿を指差す。


「そんなにいっぱい食べられるの?」


「余裕だよ!」


「ははっ!相変わらずの食いっぷりだな。」


エインはパンをちぎり、牛肉の煮込みにつけて食べている。


「エインのも美味しそうだね。」


「おう。なかなかいけるぞ。」


「また迷っちゃうな……」


「だから、次に来たとき食えばいいだろ?」


「……そうだったね。」


思わず笑みがこぼれる。


「ふふっ。じゃあ、次は何を食べるか決めておかないとね!」


「それも楽しそうだね。」


アリスが笑い、シャロも嬉しそうに頷く。


「私、次もお肉!」


「お前は変わらねぇなぁ!」


エインの笑い声が響く。

僕もつられて笑ってしまった。

テーブルには温かな料理が並び、楽しそうな声が絶えない。

こんなふうに、みんなと街で食事をするのは目覚めてから初めてだった。

何を食べようか迷って、初めての料理に驚いて、くだらないことで笑い合う。

ただそれだけの時間が、なんだかとても心地よかった。


「……また来たいな。」


ぽつりと呟くと、アリスが顔を上げた。


「もちろん!またみんなで来ようよ!」


「私も来るー!」


「次は何を食うか決めとかねぇとな。」


「……うん!」


そう答えて、もう一度包み焼きを口へ運ぶ。

温かな料理を味わいながら、僕はみんなとの時間を楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。