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Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第五章 魔法
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第一話 帰還

その後、ベルフォードには黎明の翼(アルバ)から数名の隊員が到着した。

街の警戒と影狼(シャドウウルフ)についての調査を彼らに引き継ぎ、僕たちは黎明の翼(アルバ)へ戻ることになった。

戻った頃には、空が茜色に染まり始めていた。


「帰ってきたー!」


そう言ってアリスが大きく身体を伸ばす。


「アリス先輩も報告あるだろ。」


「分かってるって!早くご飯食べたいし、先に報告済ませてくるねー!」


アリスはそう言い残すと、報告部の方へ駆けていってしまった。


「報告部には俺から報告しておくけど、ノエルはどうする?」


「ついて行くよ。まだ分からないことばかりだから。」


「私も行きます。何か進展があるかもしれません。」


「分かった。じゃあ一緒に行こう。」


僕たちも報告部へと向かっていった。


──────────


報告部へ入ると、中では何人もの隊員が行き交っていた。

任務を終えた隊員たちが報告をしたり、職員が書類を整理したりしている。


「ここが報告部……」


「来るのは初めてか?」


「うん。」


カイルは慣れた様子で受付へ向かうと、職員に声をかけた。


「ベルフォードから戻った。任務の報告をしたいんだけど。」


「お疲れ様です。ベルフォードの件ですね。」


職員は手元の書類を確認する。


「先ほどの報告はこちらにも届いています。詳しいお話を伺いたいので、奥の報告室へお願いします。」


「分かった。」


職員に案内され、僕たちは奥へと進んでいく。

通された部屋には、一つの机と向かい合うように椅子が並べられていた。


「それでは、こちらにお掛けください。」


僕たちが席に着くと、職員も向かい側へ腰を下ろす。


「では、ベルフォードで起きたことについて、改めて詳しくお聞かせください。」


「分かった。まずは──」


カイルが、ベルフォードで起きたことを順番に話していく。

街で出会った、僕の名前を知る謎の青年。

噴水広場に突然現れた影狼(シャドウウルフ)。

そして、その個体が通常よりも明らかに強かったこと。

職員は時折確認を挟みながら、一つ一つ記録していった。


「なるほど……ではこちらからも情報を提示しますね。」


職員は端末を器用に操作すると、画面が空中に浮かびあがった。


「影狼(シャドウウルフ)の出現場所ですが、裏路地ではないかと考えています。」


「裏路地?」


カイルは眉をひそめる。


「最も早い目撃情報が、噴水広場から少し離れた裏路地です。」


「それだけじゃ、裏路地に出現したと断定するには早いだろ。」


「それが……」


職員の表情が曇った。


「それ以前の目撃情報が今のところ報告されていません。」


「街の外でも目撃情報はないのですか?」


「……残念ながら。」


「では、本当に街中で突然現れた可能性があるということですか?」


「まだ断定はできません。ただ、その可能性はあります。」


職員は端末の画面を閉じた。


「もしそうだとすれば、普通ではありえないことです。少なくとも、これまでに同様の事例は確認されていません。」


「一体だけだったことといい、妙に強かったことといい……やっぱり普通の影狼(シャドウウルフ)じゃなかったってことか。」


「現在、現場に残された痕跡も含めて調査しています。ですが、今のところ原因までは……」


コンコン──


不意に、報告室の扉を叩く音が響いた。


「入るぞ。」


「セ、セレス総司令官(イコライザー)……!」


報告室に入ってきたのは、セレスだった。

カイルは緊張からなのか、背筋を伸ばす。


「任務終わりだろう?気を楽にしていい。」


セレスは僕たちの傍まで歩み寄る。


「大変だったみたいだな。」


「うん。初任務でこんなことになるなんて思わなかったよ。」


「今回は異例の事態だった。だが、よく対応してくれた。」


「みんなのおかげだよ。」


「……そうか。」


セレスは小さく笑みを浮かべた。


「ベルフォードの件は私のところにも報告が来ている。」


セレスは近くの空いている席に腰を下ろした。


「街中に現れた影狼(シャドウウルフ)については、引き続き調査を進める。それと──」


セレスの視線が僕へ向けられる。


「お前の名前を知っていたという青年のこともな。」


「……うん。」


青年の姿が脳裏に過(よ)ぎる。

柔らかな笑み。

穏やかな声。

道を尋ねてきた普通の旅人だった。

だけど、確かに僕の名前を呼んだ。

曖昧な記憶を探っても、やはり何も出てこない。


「その方は見つかりましたか?」


「いや。報告された特徴をもとに情報部で照合しているが、まだ該当する人物は見つかっていない。」


セレスは小さく首を振った。


「あぁ、そうだ。もう一つ報告しておかないとな。」


カイルが僕を見る。


「ノエルの光のことだ。」


「光?」


職員が聞き返す。


「影狼と戦ってた時、ノエルから金色の光が出たんだ。それも、かなり強い光だった。」


「……また出たのか。」


セレスが静かに呟く。


「うん。でも、前とは全然違った。」


僕は自分の手のひらへ視線を落とした。


「あの子を守らなきゃって思った瞬間、勝手に身体から溢れてきたんだ。」


自分の手のひらをそっと握る。

そしてセレスに視線を向けた。


「前に言っていたよね。あの光は、僕だけが持つものだって。」


「……あぁ。」


「なら……あれは僕の力なの?」


セレスはすぐには答えなかった。


「……カイル。」


「はい!」


カイルは改まって、姿勢を正す。


「悪いが、席を外してくれるか。」


「……わ、分かりました!」


カイルは少し上擦った声で返事をした。


「君もだ。ここから先は私が引き継ぐ。」


「承知しました。」


二人は椅子から立ち上がる。


「……じゃあ、俺は先に飯でも食ってるよ。」


「うん。今日はありがとう。」


「礼はいいって!ノエルも初任務、お疲れさん。」


軽く手を上げて、カイルは職員と共に報告室を出ていった。

扉が閉まり、報告室に静寂が戻る。

残ったのは、僕とリリア、そしてセレス。


「……」


ふと隣を見ると、リリアが僕の手をじっと見つめていた。


「リリア?」


「……あ、すみません。」


リリアは小さく首を振る。


「少し、考え事をしていました。」


「……そう。」


セレスはそんな僕たちを静かに見つめていた。

やがて、小さく息を吐く。


「やはり場所を変えよう。」


「え?」


「話すことがある。」


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