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Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第四章 初任務
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第三話 街

街門をくぐった瞬間、賑やかな声が辺りに広がった。

行き交う人々、通りに建ち並ぶ店、子供たちの笑い声。


「この街は覚えているのか?」


「……ごめん、思い出せない。」


「じゃあ──」


カイルは僕の目の前に立った。


「ようこそ!ベルフォードへ!」


満面の笑みを浮かべて、カイルは高らかに言った。

ベルフォードという街なんだ。


「まずは大通りから案内するぜ!」


その言葉に少し胸が高鳴る。

この街で、どんな出会いが待っているんだろう。


「ここには、色んな出店が並んでいるんだ。」


カイルが大通りを歩きながら説明する。


「焼きたてのパンはいかがー!」


「採れたての果物だよ! 甘いよー!」


「今日獲れた新鮮な魚だ! 安いよ!」


あちこちから威勢のいい呼び込みが響き渡る。

焼きたてのパンの香ばしい匂いに、甘い果物の香り。

人々の笑い声も重なり、大通りは活気に満ちていた。


「すごい……」


すると、一人の商人がこちらに向けて手を大きく振る。


「リリアちゃんじゃない!」


「こんにちは。」


店へ近づくと、甘い香りが鼻をくすぐった。


「ちょうど新作のクッキーが焼けたのよ!味見してくれないかしら?」


「えっ、いいんですか?」


「もちろん!リリアちゃんの感想は参考になるから!」


リリアは星型のクッキーを受け取る。

そしてそのまま口へと運んだ。


「美味しい……!」


「蜂蜜を練り込んだ生地に、星砂糖を使ったクッキーなの!」


「それで星蜜クッキー……絶対、人気になりますよ!」


「そう言ってもらえて嬉しいわ!」


すると、商人はこちらにも星蜜クッキーを差し出してくれた。


「あなたたちもどうぞ!」


「いいんですか?」


「もちろんよ!」


星蜜クッキーを受け取った。

焼きたての香ばしさと、砂糖の甘い香りが鼻をくすぐる。


さくり。


一口かじると、軽やかな食感とともに、優しい甘さが口いっぱいに広がった。


「……美味しい。」


「でしょ!」


商人の笑顔につられて、僕も笑みをこぼした。


「うまっ!!」


カイルもクッキーに目を輝かせていた。


「私、この店のクッキーが大好きなんです。紅茶ともよく合うんですよ。」


「そうなんだ。またゆっくり見てみたいね。」


「その時は、私のおすすめを教えますよ。」


「楽しみにしてるよ。」


「はい。」


リリアは嬉しそうに頷いた。


「さ!仕事に戻るぞ!」


「頑張ってね!」


「ありがとうございます。」


商人に見送られながら、僕たちは再び大通りを歩き始めた。


「……任務中に良かったのかな。」


「街の人たちとの関わりも立派な任務だぞ。だから気にすんな。」


するとリリアがくすりと小さく笑った。


「どうしたの?」


「いえ。昔のノエルさんも同じことを言ってたなと思って。」


リリアは懐かしそうに目を細める。


「『任務中にいいのかな』って気にしていました。」


「……そうだったんだ。」


少しだけ胸が温かくなる。

思い出せなくても、昔の僕は今の僕と変わらなかったのかもしれない。

そう思うと、少しだけ嬉しかった。


「ベルフォードは広いからな。」


カイルは大通りの先を指さした。


「今歩いてるのが商業区だ。店や出店が多くて、一番人が集まる場所なんだ。」


周囲を見渡す。

食材を抱えて歩く人。

子どもたちを追いかける親。

荷物を運ぶ商人。

どこを見ても、人々の暮らしで溢れていた。


「この先には噴水広場がある。」


「噴水広場?」


「あぁ。待ち合わせや休憩によく使われる場所だ。」


「もうすぐ見えてきますよ。」


少し歩くと、視界が開けた。


「ここが噴水広場だ。」


広場の中央では大きな噴水が陽の光を受けてきらきらと輝き、水音が心地よく辺りへ響いている。

ベンチでは談笑する人々や遊ぶ子どもたちの姿があり、穏やかな時間が流れていた。


「落ち着く場所だね。」


「休憩にちょうどいいんですよ。」


「おいおい、休憩はまだ早いぞ。」


その言葉に思わず僕たちは笑い合った。

本当にいい街だ。

昔の僕も、この景色を見ていたのだろうか。

この街を歩き、笑い合う人たちを見て、同じように穏やかな気持ちになっていたのだろうか。

答えは分からない。

それでも、この景色を好きだと思う気持ちだけは、今の僕自身のものだった。



「……すみません。」


不意に後ろから穏やかな声が聞こえた。

振り返ると、一人の青年がこちらに歩いてくる。

黒い髪に、深い紫の瞳。

どこか旅人のような身なりをした青年は、柔らかな笑みを浮かべていた。


「少し、お尋ねしたいことがあるのですが。」

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