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Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第三章 新たな一歩
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第六話 小さな一歩

それから数日後。


僕は毎日訓練を続けていた。

エインからは基礎訓練を受け、クロウからは実戦訓練を受ける日々。

最初は思うように動かなかった体も、少しずつ教わったことを覚え始めていた。

どちらの訓練も決して楽ではない。

それでも、不思議と苦には感じなかった。


「始めるぞ。」


訓練場の中央で待っていたクロウが、短く声をかける。


「今日は前より長く立ってみせろ。」


「うん!」


クロウに向けて木剣を構える。

構えの姿勢も、初めと比べて幾分か様になってきた。


「来い。」


クロウの言葉と共にスタートを切った。

間合いを詰めると同時に右へ踏み込み、体を捻る勢いを乗せて左から木剣を薙いだ。

しかし、クロウは眉ひとつ動かさずに僕の剣を受け止めた。

反撃の隙を消すために、一歩後ろへ引く。

すると、再び間合いができた。

前みたいに一方的じゃない。

戦えている。


「次は俺からだ。」


クロウは迷いなく踏み込み、木剣を振りかぶる。

相変わらず早い……!

僕はその剣を受ける体勢に入った。

この時、僕は剣ではなく、クロウを見ていた。

一歩大きく踏み出した。

クロウの剣は重たい。

真っ向から受ければ押し負ける。

なら──

クロウの剣と、僕の剣がぶつかり合った瞬間、僕は腕の力を少しだけ抜いた。

そして左に一歩踏み出す。


「……!」


クロウをすり抜け、背後を取ることに成功した。

それでも、クロウの肩は微動だにしない。

今しかない……!

僕は剣を上段に構えた。

クロウに勝てる……!

そう思った瞬間だった。

クロウは踏み出した足を軸に体を回転させた。

そして視界の右側から、クロウの蹴りが迫る。


「やめ!」


エインの大きな掛け声に、体が硬直する。

僕の顔ギリギリのところで、クロウの足が止まっていた。

あの状況から、クロウは回転蹴りをしようとしていたのだ。

クロウが足を下ろすと同時に、僕も剣を下ろす。


「いい動きになってきたじゃねぇか。」


エインが嬉しそうにしながら、僕たちに近づいてきた。


「最後、少し焦っただろ。」


エインはニヤニヤと笑い、クロウの肩を小さく叩く。


「別に。」


エインの手を払い除け、クロウは一歩前に出る。


「前よりは動けている。だが、攻撃のテンポが遅せぇ。」


「テンポ……?」


「勝てると思っただろ。」


その言葉に胸が少し高鳴る。

クロウの背中を見た瞬間、勝てると思ったからだ。

それを見抜かれた。


「背後を取ったまでは百点。でも考えすぎたな。」


エインがクロウの隣に並んだ。


「迷った一瞬で、こいつはもう次の手を考えていた。」


「……はい。」


「それでも前進だ。クロウの背後を取れたんだからな。」


エインの大きな手が僕の頭に乗る。


「迷うな。己を信じろ。そうすればお前は強くなる。」


自分を信じる……

自然と木剣を握る手に力がこもった。


「ま、今日はここまでだな。」


「今日はもう終わりなの?」


「セレスに呼ばれててよ。悪ぃな。」


「クロウは?」


「任務だ。いつまでお前を見れるほど暇じゃない。」


それなら仕方がないと、僕は一人で訓練場の中央へ立つ。

足運び、それから素振り。

体に馴染むまで何度も繰り返す。

まだ届かない。

でも、今日初めてクロウの背後を取れた。

少しずつでも前に進めている。

この積み重ねは、きっと無駄じゃない。

木剣を振る。

一振り。

また一振り。

エインの言葉。

クロウの言葉。

その全てを思い返しながら、僕は剣を振り続けた。

強くなるために。


──────────


訓練を終え、木剣を片付けるためにエインとクロウは武器棚へと向かう。


「……それで?お前から見たあいつはどうなんだ?」


「別に。」


クロウは僕に視線を向けて、少しだけ目を細める。


「ただ、想定よりも思い出すのが早い。」


エインは嬉しそうに笑う。


「だろ? あいつは昔から、そう簡単にへこたれる奴じゃねぇよ。」


その言葉にクロウは一つ息を吐く。


「……昔は昔だ。今はまだ、戻り始めたばかりだろ。」


クロウは木剣を静かに武器棚へ戻した。

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