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Memory 〜時紡ぎの旅路〜  作者: Rin凜Lin
第三章 新たな一歩
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第二話 訓練

部屋を見て回ったり、本棚に並ぶ本を眺めたりしているうちに、気付けば昼が近づいていた。


「ノエル様。」


シリルが穏やかに口を開く。


「先ほど、セレス様よりお呼びがございました。」


「セレスが?」


「はい。お時間がよろしければ、訓練場までお越しいただきたいとのことです。」


「訓練場……?」


思わず呟くと、隣にいたリリアも少し驚いたように目を丸くした。


「ご安心ください。戦闘ではなく、セレス様からお話があるとのことです。」


「……分かった。すぐに行くよ。」


少し不安を抱えながらも、訓練場へ向かうことにした。


──────────


シリルに案内され、リリアと共に訓練場へ向かう。

廊下に進むにつれ、遠くから掛け声が聞こえてきた。

木剣のぶつかり合う乾いた音も、訓練場から響いている。


「毎日訓練しているんだね。」


「はい。」


リリアが静かに頷く。


「皆さん、朝の訓練は欠かしません。」


訓練場へ足を踏み入れる。

そこでは大勢の隊員たちが汗を流していた。

その中央では、クロウが隊員たちを指導している。


「踏み込みが浅い!もう一度だ!」


厳しい声が訓練場に響く。

そんな様子を少し離れた場所から、一人の女性が静かに見守っていた。

白銀の長い髪。

黄金色の瞳。

総司令官(イコライザー)──セレス・ルミエール。

僕たちが近づくと、セレスがゆっくりとこちらを振り返った。


「来たか、ノエル。」


わずかに口元を緩めた。


「あの、話って?」


「あぁ。セレナからお前の容態を聞いた。」


セレスがじっと僕を見つめる。


「そろそろ戦闘訓練を始めてもいい頃合いだと思ってな。」


「え!?」


思わず声を上げる。


「なに、初めから厳しい訓練をしろとは言わん。」


「……本当に大丈夫なんですか?」


リリアも心配の声を上げる。

するとセレスの目が少しだけ変わった気がした。


「仲間を守るためには力が必要だ。」


真剣な眼差しだった。

自然と自分の手に視線を落とす。

守るための力……


「だから、お前にはもう一度剣を握ってもらう。」


セレスの静かな一言が、胸の奥へ深く響いた。

僕は一度、深く呼吸をする。


「……分かった。」


僕が頷いた、その時だった。


「そこまでだ。」


クロウの低い声が訓練場に響く。

隊員たちが一斉に姿勢を正した。


「ありがとうございました!」


訓練場へ力強い声が響き渡る。

クロウが隊員たちを一瞥すると、そのままこちらに歩いてきた。


「話は終わったか。」


「ちょうど今終わったところだ。」


セレスが静かに答える。

クロウの視線が僕へ向く。

記憶を探るような目ではない。

戦う者を見る目だった。


「……本当にやるんだな。」


「本人も了承した。」


セレスの言葉に、クロウは小さく息を吐く。


「そうか。」


クロウが一歩前に出る。


「なら、俺が預かる。」


「あぁ、頼む。」


クロウが僕へ向き直る。


「付いてこい。」


ぶっきらぼうな一言だった。

それでも、不思議と迷いはなかった。


「うん。」


僕はクロウの背中を追って、ゆっくりと歩き出した。


後ろでは、セレスたちがその様子を静かに見守っていた。


「……大丈夫でしょうか?」


リリアが不安そうに呟く。


「心配か。」


セレスは視線を逸らさず、小さく答える。


「はい。目覚めたばかりですから……」


リリアも視線を逸らさず、心配そうに見つめる。


「だからこそだ。」


セレスは静かに告げた。


「戦う力は、一日でも早く取り戻さなければならない。」


セレスはわずかに目を細める。


「生き抜くためにな。」


リリアは何も言えず、ただノエルの背中を見つめた。


クロウが武器棚から二本の木剣を取り出す。

その内の一本を僕に差し出す。


「使え。」


僕はそれを受け取った。


「重い……」


思っていたよりも、ずっと。

クロウは自分の木剣を肩に担いだ。


「握ってみろ。」


言われるまま、柄を握る。

……不思議だった。

初めて触れたはずなのに、手だけは迷わなかった。

自然と木剣を構えていた。

それを見たクロウは、わずかに目を細める。


「……型は残っているのか。」


小さく呟くと、自らも木剣を構えた。


「始めるぞ。」

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