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ある失踪事件  作者: 正騎
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5



 失踪した大学生の父親の家に着くと、父親は、俺を快く出迎えてくれた。


「事件は進展ありましたか」


 俺は、今までの捜査状況を言える範囲で説明する。


「早くヒロムを見つけてください」


 失踪した大学生の父親は俺に頭を下げる。


「わかってます。必ず見つけますよ」


 俺は父親を安心させるため、力を込めて頷く。父親は安堵したような顔をして俺に話す。


「ヒロムは、幼い時に母を亡くして、辛い思いをしてきたんです。私も、父親として未熟で、一度あの子を手放してしまった。そのあとしばらく経って精神が落ち着いて、自分のしたことの恐ろしさを知り、またあの子を引き取ったんです」


「わかってます。大切なお子さんなんですよね」


「はい……だから、必ず見つけてください」


「わかりました」


 頷いて、俺は失踪した大学生の父親の家を出ていく。その間も、失踪した大学生の父親は、頭を下げたまま、俺が出ていくのを見送っていた。


 家からの帰り道、ふと、何かの視線を俺は感じた。


「なんだ?」


 どうやら、何者かに監視されている。


 あたりをキョロキョロと見まわすと、あたりには誰もいない。


 その時、


 キキィー!


 バンッ!という衝撃音が背後から響いたかと思うと、俺の身体は宙に浮いた。


 一回転し、そのまま地面に落下する。


 見ると、うつぶせに倒れた俺の先に、黒いワンボックスが停車している。


 俺はどうやら車に、轢かれたようだ。


 「くそっ……」


 俺が呟くと、停車した黒いワンボックスの中から、目出し帽をかぶった男たちが出てくる。


 俺は、上から布を被せられた。

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