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ある失踪事件  作者: 正騎
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2



 それは、高層ビルと高層ビルの間に小さく建てられていた。


 ○○金融とデカい看板が掲げられ、少しうす汚れた、うす茶色した二階建ての低層ビルだ。


 そのビルのガラス製のドアを開け、俺は中に入る。独特の湿気臭い匂いの中、いかにもな人間が目の前の黒茶色いソファに座っている。その前にはガラス製の長方形のテーブルがあり、テーブルを挟み、もう一つ黒茶色いソファが対面を向いて置かれている。


「何だお前……」


「最近、男子大学生がここに来なかったか」


 俺の姿を見て、いかにもな恰好をした人間は俺に尋ねる。今時パンチパーマをし、うす黒いサングラスをかけ、変な柄物のシャツを着て、ジャラジャラ首に、金属製のネックレスをつけている。


 両手を広げ、両足を組んで、ソファの真ん中に座っている。


「最近、男子大学生が失踪したんだ。何か知らないか」


「俺じゃねぇぞ……何も知らん」


 少し警戒した様子でそいつは、俺の質問に答える。


「こいつなんだが、見たことないか」


 俺は、スーツの胸ポケットから失踪した男子大学生の写真を取り出した。


「スマホの履歴に、ここの電話番号があってな……何か知らないか」


「俺は知らねぇぞこんなやつ。何かの間違いじゃねぇのか?」


「そうか。わかった……」


 俺は、終始そいつの様子を観察した。どうやら、様子を見るに、嘘をついているようには見えなかった。


「とりあえず、利用者名簿をもらえないか」


「ああ……」


 一応俺は、事前に令状を取り、利用者名簿を見れるようにしていた。


 名簿を見ると、失踪した大学生の名前は、利用者名簿の中にはなかった。


「確かに無いな……ん?」


 そこに、『ユウキ』と書かれた名前がある。


「この、○○ユウキという名前の奴は一体何者だ」


「ん? そいつか? そいつはうちの大事な顧客様だよ」


「どういった人物なんだ」


「さあ……よくわからねぇが……確かどこぞの食品製造会社の社長かなんかだっけな……」


「なんでそんな人間が消費者金融なんかに……」


「俺も知らねぇよ! 勝手に来て、勝手に借りて帰っていったんだ」


「30万だけ?」


「あぁ……会社に何か建てたいとか言ってたっけな」


「どういうことだ」


 その利用者は、わざわざ消費者金融から30万を借りていた。


「俺もよく知らねぇよ! そいつのとこに行って尋ねてくればいいだろ!」


「わかった……ありがとう」


「もう一度言っとくけど、俺じゃねぇからな!」


 少し不安そうに、パンチパーマの男は俺に念押しした。

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