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ある失踪事件  作者: 正騎
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 俺と失踪した大学生は、近くにある古い喫茶店で今までの状況を話し合っていた。


「それで、俺はあの場所に立っていたんだ」


「なるほど……」


 何か知っていそうな大学生に、今までのことを俺は覚えている限り話す。


「やっぱりあの神社と、今回の君の失踪事件は関係しているのか……」


「そうです。たぶん、あなたの部下を殺したのも奴らだと思います」


「彼らは裏で何をしているんだ」


「それは、私の父に聞けばわかると思います」


「君の父親に?」


「はい」


 失踪した大学生は、確信があるかのように堂々と俺に頷いてみせる。俺は半信半疑ながらも、彼を信じてみることにする。


 今までの状況を覚えている限り話した俺と大学生は、すぐに喫茶店を出て、その偽物の父親がいるという失踪した大学生の実家へ向かった。


 途中で拾ったタクシーを降り、実家の前のインターホンを押す。しかし、家の中から反応はない。


「いないのか?」


 すると突然、失踪した大学生は走り出した。


 ガラガラと、玄関の引き戸を開け、靴のまま中に入っていく。後を追った俺は、中で恐ろしい物を見てしまった。


 父親が、蛇のようにくねくねと、縦に長く伸びていた。


 「離れて!!」


 急に叫ぶ失踪した大学生に俺は外へ出る。失踪した大学生は、両手を組んで、出した左右の人差し指をぴったりくっつける。


「アーヴィルバヴァ!」


 よくわからない言葉を叫ぶ。


 瞬間、縦に長く伸びていたものがパッと戻り、元の父親の姿になった。


「おい!」


 そのまま倒れる父親に、失踪した大学生は声をかけながら抱きとめる。見ると、父親の口の右端から、真っ赤な、一筋の血が流れている。


「おい! しっかりしろ! おい! だめだ……くそっ」


 失踪した大学生は、抱きとめた父親を左右に軽く何回か揺する。しかし、父親からは反応がなく、そのまま父親を床に下ろす。


 俺は、近寄ってその父親をよく見ようとした。顔は白く、両眼を閉じ、動かなくなっている。


「くそ……先回りしやがって……」


 周りをうろうろしながら、失踪した大学生は顔を歪めぶつぶつ呟いている。俺は、どうしたらいいか考えた。


 そして、あることが思い浮かんだ。


「そういや、社会人の女性が失踪していたな……」


 思わず、俺は呟く。


「なに!?」


 急に、失踪した大学生は大声を上げる。


「それ、どういうことですか!」


「そういや、言い忘れていたか……もう一人、君が失踪した後、社会人の女性があの場所で失踪したんだよ」


「それって……」


 失踪した大学生の顔が青ざめて見える。


「刑事さん……行こう! あの神社へ!」


 俺の右腕を掴み、失踪した大学生は出ていこうとする。


「待て! それより気になったんだが、君の父親が偽物だったとすると、本物は今どこにいるんだ」


「そんなこと今はどうでもいい! あの神社へ行かないと!」


 俺の右腕を引っ張っている失踪した大学生は、なぜだか焦っていた。いったい何があるんだ。


 俺と失踪した大学生は、再びあの神社へ向かった。

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