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ある失踪事件  作者: 正騎
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16



 俺は早速、S区のあの十字路に訪れていた。


 やはり、あの場所に何かあると思っていた。


 十字路の真ん中に立ち、再び看板を見る。


「いったい何に注意するっていうんだ……」


「俺にだよ……」


 背後から声がし、後ろを振り向く。


 そこに、あのフードの男が立っている。男の両眼の焦点は、相変わらず左右に物凄く離れている。


「何だお前っ……」


 フードの男の左手に、きらりと光る何かが見えた。瞬間、男は俺に左手を振り上げた。


「ぐっ……!」


 とっさに両腕でガードをし、俺は後ろに尻持ちをつく。俺の左腕の袖が切り裂かれ、真っ赤な血の線が切り裂かれた隙間から見える。


「……死ね!」


 フートの男はそのまま、俺にナイフを振り下ろす。俺は、動けず固まっていた。


「やばい……」


 瞬間、目の前でありえないことが起こっていた。


 何者かが、フードの男を取り押さえ、ナイフを落とし、フードの男を後ろ手にして、地面に押さえ込んでいた。


「……」


 男は、無言のままフードの男を抑えている。


「嘘だろ……」


 俺は思わず小さく呟く。


 そこにいたのは、失踪していたあの大学生だった。


「……大丈夫ですか?」


 失踪していた大学生は、じたばたするフードの男を抑え、俺に尋ねてくる。俺は困惑しながら、失踪していた大学生に頷く。


「あ、ああ……」


 すると、じたばたしていたフードの男は静かになった。


 俺は立ち上がり、失踪していた大学生に尋ねる。


「君は、ヒロム君なのか……いったい、今までどうしていたんだ」


「僕はちょっと、身を隠していたんですよ。でも、あなたのことをちゃんと見てましたよ……」


「お父さんが心配している。帰ってあげてくれ……」


「いや、いいんです……」


 失踪していた大学生は立ち上がる。そして俺に答える。


「あの父親は、本当の父親じゃないんです」


「いったいどういうことだ……」


「父親は、すり替わっているんですよ」


 俺は、困惑していた。彼は何を言っているんだ。


「あれは、俺の親父の代わりなんです……奴らがすり替えたんですよ」


「奴ら?」


 瞬間、ずっと地面にうつぶせで倒れていたフートの男が目の前から消えた。俺は目の前で起こった出来事にさらに困惑した。


「ここももうそろそろですね……いったん違う場所で話しましょう」


 失踪した大学生は、俺にこの場所から離れるよう提案してくる。状況を理解できない俺は、とりあえず失踪していた大学生の言うことを聞くことにした。


「わかった。とりあえずここを離れよう」


 俺と大学生は、その場を後にした。

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