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「そういや刑事さん、何か面白い事件を調べてるんですって?」
それは唐突に尋ねられた。
「何だお前いったい……」
「いやぁ、ちょっと小耳に挟んだもんですから……」
俺がよく知っている週刊誌記者の男が突然、本署に現れて俺に尋ねてきた。俺は困惑しながらもそいつに答える。
「お前が調べても何も出てこねぇぞ」
「いやぁーそれがね。アテがあるんですよ。一つ。どうすっか? 一緒に尋ねに行きません?」
「そんなことしても無理だと思うがな」
俺ははっきりいってそいつを当てにしていなかった。その男は、よくいろんな事件現場に現れては違法スレスレの取材を行い、時には嘘をでっちあげ、警察内部でも要注意の人間だった。
「それに尋ねに行ったとて、記事を書かせてもらえると思うなよ。この件はなるべく慎重にしないといけないんだから……」
「わかってますって、だからわざわざ許可を取ろうとしてんじゃないですか。そうじゃなきゃ勝手にこっちで記事書いてやってますって」
終始笑顔で記者の男は俺に告げる。だが、信用はできない。
「行ったらすぐに帰るからな……」
「はい」
俺とその記者は、そのアテとやらのところに向かった。
そこは、とある大学の研究室だった。
縦に長い研究室の左右の壁に本棚が、びっしり奥まで続いている。
その真ん中に、小さい横長の応接テーブルがあり、テーブルを挟んで前後に、横に長い二人掛けのソファが並んでいる。そこの奥のソファに灰色のひげを蓄えた大柄の男が座っている。
「先生! すみません遅れまして。ぜひ彼の話を聞いてやってください!」
記者は勝手に話を始める。俺は記者の男に促されるまま、先生と言われた男の前のソファに座らされる。
「えーと、それで何か聞きたいこととは何かね……」
「はい……」
突然何もわからず何かを尋ねなければいけなくなり、俺は困惑する。すると、記者が口を挟んでくる。
「あのですね……この人形のことなんですが……」
どこから持ってきたのか、あの白い人形の写真を出してくる。俺は驚き、俺の左隣にいる記者の男を見る。
「おお、これかい。何々?」
ひげを蓄えた大柄の男は、それを手に取ってまじまじと見つめる。そして、おもむろに立ち上がり、右側の壁の本棚に移動する。
「うーんと、あったこれだ」
何かの分厚い本を手に取り、それを開いて応接テーブルの上に置く。そして、俺に説明する。
「これはね、一種の信仰だよ……まじないとでもいうのかね……人の形をしたものを使い、儀式を行ったり、崇め奉ったりする。まぁいうなれば、偶像崇拝というところかな」
ソファに座りながら男は、俺たちに説明する。俺は尋ねる。
「偶像崇拝……それは、人形以外に何か使ったりはするんですか。例えば動物などの一部とか……」
「まぁ捧げもの的なもので動物の死体なんかを使ったりすることはあるね。あとは食べ物とか」
「それに、人間の一部などを使ったりはするんでしょうか」
記者の男がぎょっとし、俺を見た。
「人間……人柱なんて話は昔はよく聞いたことはあるけど……でも実際に、それがあったのってだいぶ昔だろろうし、今やるってったって大変でしょ? 儀式の度に何人殺さなきゃいけないんだよって話だよ」
笑いながら、ひげを右手で撫でている。
「確かにそうですね……」
確かに、あの人形に付着していた赤いシミは、人間の血ではなく何かの動物の血である可能性が高い。
「それにしても不思議だねこの人形。普通こんなに適当に作らないよ」
「適当?」
「うん。ここ見てごらん足がないだろ」
見ると白い人形には足が作られていなく、作りかけみたいに下半身が作られていない。
「目のところの黒い部分も塗りが適当だし、足の部分もちゃんと作られていない。こりゃあ素人の作品だな」
分析してひげの男は笑う。俺はじっと見つめる。
確かに、人形はお粗末なつくりだ。そこでふと考える。
「ひょっとして、これ最近作られたものなんでしょうか」
「うん? そうだなぁ……たぶんそうかもしれない。新しく作られたんじゃないか。造形的にも今までの歴史上のそういったものの流れを全く無視して作られているし……」
「だとすると、新興的な物ですか?」
「まぁそうだろうね。流れを汲まない新しい物ってことは、そういうことだよね」
だとすると、あの神社は関係ないのか。
「ありがとうございました……」
俺は礼を言うと、早速大学を出ることにした。歩きながらスマホで電話をかける。
「もしもし、ちょっとわかったことがあるんだ。もしもし? もしもし?」
部下に電話を入れた俺は、その番号が現在使われていないことに困惑した。




