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勇者は王妃の『推し』ですわ!  作者: gen.
第二章

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06. 王の苦悩





 一つの問いが、頭の片隅に居座っている。

 それは決して激しく主張せず、長々と垂れ流されるわけでもない。

 しかし確固たる強さで、他の何かをしているときでも、考えを巡らせているときでも、そこにある。

 答えは、見つかっていない。誰かに尋ねるのも何故か思いとどまってしまい、いまだにそれはそれのまま、自分の意識を奪う。


(…………『推し』とは、なんだ?)


 あの日差し目映いバルコニーで、光の粒を散りばめたようなドレスを纏った王妃から発せられたごく短い単語。

 それが目下、エゼルレッドの意識を苛む難題であった。

 人にとってはどうでもいい話、あるいはくだらないことに映るかもしれない。いままでの自分なら、捨て置いたかもしれない。

 大切に――そう、自分なりに、その重要さを理解し、尊重してきたつもりの王妃にして妻が、いつにない熱心さで心を砕き手を尽くしている相手、勇者。

 彼女は勇者を尊び、ときに怒り、ときに王妃としての責任をもってして祝福した。

 すべてが初めてのことだった。彼女が自分から動き、くるくると彩を変えて見せるのは。

 あの玉座の間で、王妃が勇者へ見せた微笑みは――――その時の衝撃は、エゼルレッドにとって忘れがたいものだった。

 だから、王妃に対して問いかけたのだ。勇者は、そこまでさせる存在とは、一体何なのか、と。

 すると彼女はあの瞳に陽の粒を浮かべながら、きっぱり言い切った。何一つ恥じることなどないと、いっそ誇らしげなまでに、胸を張って。


「勇者はわたくしの『推し』ですわ」と――――

 

「――――下、……陛下?」

「!……すまない、なんだ?」


 意識が現実に引き戻される。エゼルレッドは自分が今どこにいるかを忘れていたわけではなかったが、束の間、全ての音が遠ざかっていた。

 いつも通り傍らからこちらを見下ろす宰相、右腕たるトリスタンの眼差しには心配とも呆れともつかない色が滲んでいる。


「心ここにあらず、であらせられますね。休憩をいれましょうか」

「いや、その必要はない」

「しかし陛下。その書類をご覧になるのは三度目ですよ」

「…………」

「休憩いたしましょう」


 あやすように言われて、ぐうの音もでなかった。いっそ叱責してくれたほうがマシだった。

 ため息とともに認可、の判を押した書類を今度こそ処理済みの枠へと解き放つ。


「それも近頃、増えていらっしゃいますね」

「……?」

「ため息の数です」


 お気づきでなかったのですか?と、侍従へ休憩の支度をするよう指示したトリスタンが続ける。てきぱきと、執務机の前に設えられているローテーブルの上に広げた書類を片づけつつ。

 まったく気づいていなかった。エゼルレッドはそんな自身への呆れ半分のため息を、そう、またため息をついてしまった。

 長時間座っても苦痛にならない工夫が最大限施されている椅子へ、あらためて背中の体重を預けつつひじ掛けに頬杖をつく。


「君に聞けば、なんでも解決しそうだな」

「それはどうでしょう」


 議題次第でございますねと、トリスタンは涼しい顔を崩さない。

 だがエゼルレッドは決して冗談で言ったわけではない。トリスタンとて、冗談で返したわけでもないだろうが。

 自分より五つ下のこの人物は、王都から離れた領地に長く住まいながらもその博識と才覚をもって宰相任命前から知られていた。先代宰相である彼の父からだけでなく、義父にあたるエリネッド侯爵や学識で知られる廷臣たちも認めるほどに。

 だからこそ、先代が急病で職務を離れざるを得なくなったときも、エゼルレッドはその推挙を安心して受け入れられたのだ。

 とはいえ、その才覚を妻の一言の解決に使わせる、というのは。


(なにか、違う気がするな……)


 戦場育ちのエゼルレッドよりは、トリスタンの方が俗世間に馴染みが深いだろう。けれどこの問いについて誰かに聞くのはどうしても気乗りしない。

 自分で解決しなくてはいけない、ような気がするのだ。

 そしてその方法はすぐそこにあるような、そんな考えが脳裏をよぎった時、ノックの音へあえてエゼルレッドは意識を向け、そこから目を背けた。

 それは無意識のことだったが、彼はまだ気づいていなかった。

 トリスタンがスペースを確保したローテーブルの上へ、速やかにハーブティーとそれにあった茶請けの菓子、そして甘いものを特別好むというわけでもないエゼルレッドのための小ぶりなサンドウィッチが並べられていく。


「陛下」


 執務椅子から離れようとしないエゼルレッドを今度こそたしなめるように、トリスタンが声をかけた。


「……ああ」


 こうなっては仕方がない。回転させ続けて疲れた頭を冷やす方法も、彼の方が心得ているのだろうから。

 エゼルレッドは自身の重みから執務椅子を解放してやると、トリスタンに見守られつつローテーブル前の一人掛けに腰を据え直した。

 ハーブティーの清々しい香りをしばし堪能し、熱を逃がしてから口をつける。

 一服後、ほう、と漏れた吐息はため息というものではないだろう。

 同じく長椅子に座って一服したトリスタンがカップを置き、彼の好むハーブを練り込んだクッキーへ手を伸ばす。


「それで陛下、妃殿下のことについてですが――」

「っ!」

「……大丈夫ですか?」


 二口目を飲み込もうとしていたエゼルレッドは、思いがけない切り出しに喉を引きつらせた。その拍子に熱いハーブティーが予定外のところを通ろうとして、咽かけたのを無理やり嚥下したのだ。

 一瞬、本気で頭の中を見透かされたのかと思ってのことだった。

 気づかわしげにこちらを見るトリスタンへ、片手を挙げ無事を主張する。

 カップの中身まで跳ね飛ばなかったことが幸いだった。


「……では、妃殿下の参詣の件ですが……」


 それ以上、トリスタンの追及がなかったことも。

 

「ああ」

「護衛はやはり、騎士団を中心に固められるおつもりで?」

「そうだ。第三騎士団に任せる」


 続く言葉に安堵する自分も、やはり見ないふりをしてエゼルレッドは答えた。

 中つ国王家に仕える騎士団は大きく分けて三つ。王城と王族を守る第一騎士団、王都を巡回、警護する第二騎士団、そして遠征や外敵、王都を包む城壁の外の警戒を担う第三騎士団である。

 主に防衛任務が主眼となる第一、第二騎士団と異なり、第三騎士団は実戦経験も豊富な攻守を併せ持つ騎士団だった。

 エゼルレッドの即位間もない反乱鎮圧の際にも、兵士と彼らを伴い各地を巡った。それだけに国王からの信任も厚いというのが特徴の騎士団でもある。


「第三騎士団ですか。確かに、旅路も護衛も彼らほど頼りになる盾は無いでしょう」

「指揮はブリンにとらせる。選抜も」

「団長自らですか?」


 トリスタンが軽く眉を上げたのを見て、エゼルレッドは口に運びかけていたサンドウィッチをそっと下ろした。

 そして今までなら、口にしてこなかった問いが零れ出るのを止められなかった。


「……やり過ぎ、だろうか」


 王妃が初めて――もう何度目の『初めて』だろう――自分から神殿を詣でる、と言い出したのだ。一応エゼルレッドも王都内の聖堂に留めてはどうかと言いはしたが、彼女の意志の強固さは言動の端々からにじみ出ていた。

 なにより、王妃に不自由な思いをさせないと誓ったのは、エゼルレッド自身である。

 結果、彼女の初参詣を承知するほかなく、王妃の旅路の警護について、がここ最近のトリスタンと共有した課題だったのだ。

 カップをソーサーへ戻す微かな音が聞こえる。


「いいえ、旅路は思いがけないことが起こりますから――何よりいまの妃殿下はいままでの殿下とはどこか違っていらっしゃるので、ブリン卿自ら事に当たられるのは妥当かと存じます」

「そうか――――君も、そう思うか」

「ええ」


 にこりと微笑んだトリスタンが、再びカップを口元に運ぶ。

 王妃が変わり始めている。それが良い方向へなのかはまだはっきり判断することはできない。

 できない自分にできるのは、そんな彼女を守ることだけだ。可能な限りの、手を尽くして。

 ごく最近の出来事で王城の警備不備――王妃の昏倒事件――について反省があったことも、エゼルレッドの判断を後押ししていた。

 そしてそう考えることは、束の間、彼の頭に居座る問いかけを忘れさせてくれるのだった。


「休憩が終わったら、ブリンを呼んでくれ」

「御意に、陛下」







「――――以上が、今回のご参詣に関する警備計画でございます。妃殿下」


 真面目に服を着せて歩かせたら、こんな感じかしら。

 わたくしはひじ掛けに頬杖をつきつつ、こちらの反応を待つ直立不動の人物をさらりと眺め直した。

 自分のこめかみに青筋が浮かんでる気もしたけれど、気のせいね。多分。

 まさか王家の盾にして矛、王の牙とまで呼ばれた第三騎士団団長御自らとその選抜メンバー二〇名――一二じゃないわよ、わたくしも聞き直したけど――がわたくしの参詣をがっちがちに固めてきたからって、それで不機嫌になったりしないわよ。それが参詣の条件だと陛下のご命があったと言われようとね。


「妃殿下……ご質問は」

「ないわよ。よーく解ったわ」


 ご意見が求められてないこともね。

 はあ、とわざと大きなため息を吐いて見せながら、わたくしは椅子に座り直した。


「ようは卿が選抜した、陛下の遠征に同道するような特別優秀な騎士たちが中つ国から一番近所の神殿まで、わたくしの守護を約束してくださるってことでしょう。行きも帰りも」

「仰る通りです」


 皮肉よいまのは。

 知ってるんだかどうなんだか、分からないのは主君に似たのかしらね。

 第三騎士団団長グリフィス・ブリン――短い髪を後ろに撫でつけた壮年の騎士は、よくよく見ると左頬にうっすらと細い傷痕があった。

 見るからに歴戦の、そして実際そうである騎士団長に妻のお守りを任せるなんて、国王陛下の警備バランスというのはどうなってるのかしら。

 別に旅へ不慣れな第一騎士団から出せと言ってるんじゃないのよ。第三騎士団なのはいい。でも団長まで使うのはやりすぎじゃない!?

 わたくしはもう一〇歳の子供じゃない。今年で一九の娘だってことを陛下はお忘れなのかしら。

 それにこんなにがちがちにされたら参詣の――――


「遅れて申し訳ございませんッ!」


 わたくしとブリン卿の無言の睨み合い――睨んでるのはわたくしだけだったけど――が途切れて、互いの視線が同じ方向へ向く。

 そこには息を切らせて入ってきた朝の支度ぶりのエディスが、ドレスの裾を摘まみながら低頭平身のお手本のような礼を見せていた。

 わたくしはひじ掛けに体重を乗せつつ、彼女のつむじからつま先までを見て少し乱れてる以外の異常がないことを確かめる。


「ほんとに遅かったわねエディス。何かあったのかと思ったわ」

「も、申し訳ございませんッ……その、頼まれた仕事が思いのほかかかりまして」


 頼まれた仕事?


「わたくし、今朝なにか任せていたかしら」

「あ、いいえ!……妃殿下ではなくてですね、ええと……」


 そこまで口にしたエディスが歯切れ悪く言葉を途切れさせたのを見て、わたくしはピンときた。


「ほかの侍女たち?」

「っ……は、はい……」


 申し訳ございません、と蚊の鳴くような声が続く。

 三度目のそれを聞きながら、わたくしは「解ったから、顔をあげなさい」とペンを取りつつ声をかけた。


「そこにいるのは第三騎士団団長のブリン卿よ。挨拶なさい」

「は、はい!――初めまして団長閣下、妃殿下のお側仕えをしておりますエディス・レインです」

「……ご紹介にあずかりました、王都警護第三騎士団団長、グリフィス・ブリンです」


 緊張に上ずった高く細い声と、対照的に重厚な声が交わされる。

 わたくしといえばそれを聞きながら、さらさらと書き上げた書面に王妃の紋章を捺していた。蝋は使わないやつでね。面倒だから。

 それにもう既成事実化しているものを補強するだけの書類だもの。


「エディス」

「はい妃殿下っ」

「これを侍従長に渡してきなさい。ああ、下女に任せてもいいわよ」

「はい、お預かりいたします――――」


 エディスの緊張に震える手へのせた一枚の紙きれ。けれどその効力は王妃の名のもとに。

 内容に気づいたエディスが、息を呑むのがわかった。


「ひ、妃殿下、あの、恐れ入ります。これって……」

「ただの任命書よ。お前をわたくしの筆頭侍女にします」

「!!」

「だからこれからは、わたくしを最優先するように」


 正式な任命は侍従長からの通達がある。これでエディスに余計な仕事を割り振ろうなんて考える怠慢な人間が消えてくれるなら、この程度の手間なんでもないわ。


「お、お、おそれいり、ますっ……ありがとうございまず、妃殿下……!」


 ああ、また始まった。


「いいから、化粧が崩れる前にハンカチ使いなさい」

「はいいぃ~……!!」


 まったく感激屋にもほどがあるでしょ。

 やれやれと一息ついて視線をずらしたら、執務机の正面に立っていたブリン卿と目が合った。

 そういえばいたんだったわ。なんか驚いた顔してるけど。


「卿は淑女の泣き顔がそんなに珍しくて?」

「はっいえ――失礼いたしました、妃殿下」


 あ、見てたのはエディスじゃなくてわたくしだったのね。

 ちょっと意地悪な言い方になってしまった。ま、いいでしょこれぐらい。

 すこし慌てたように表情を引き締め直したブリン卿に、ふと思い出したことを告げる。


「そうだ。今回の参詣だけど荷物があるから」

「は、お荷物、でございますか。お召し物などの品々とは、また別にでしょうか」


 察しがいいわね。


「そうよ。だーいじな荷物。だから隊列は荷車も守れるように組んでちょうだいね」


 まぁ、こんなの神殿長に説法するようなものでしょうけど。


「荷車を――恐れ入ります妃殿下、具体的にはどのようなお品物か、お伺いできますでしょうか」

「お酒よ。最上級ワインの酒樽が四つ」

「酒樽を、四つ……!?」

「奉納用よ。お酒の奉納なんて、珍しくもないでしょう?」

「は……」


 ファーウェイに手配させてわざわざ地方から取り寄せた酒樽が、いまは城の倉庫に眠っている。わたくしは今回の旅程で、それを全部持っていくつもりだ。

 もちろん、これは決定事項。無表情を繕いながらも目をしばたかせているブリン卿に、わたくしはにっこり笑って見せた。

 その時だった。部屋の中に新たなノックの音が転がったのは。

 なにかしら。いつもは人っ子一人訪ねてこない――ファーウェイは例外よ――のに今朝は千客万来ね。

 涙をぬぐい終えたエディスが一旦書類をサイドテーブルに置いて扉へと駆け寄り、訪問者を確かめる。


「妃殿下、あの――神官長様がおいでです」


 片眉が跳ねたのが自分でも解った。また面倒くさいのが来たわね。


「通して」


 わたくしの端的な言葉にうなずいたエディスが、再度扉へと向かう。間を置かず扉の開閉音と共に、静かな足音がいくつか続いた。


「神官長ドニロドトスが、朝のご挨拶を申し上げます。王妃殿下」


 重厚というよりも皺枯れが目立ち始め、それでも通りは保たれてる声。説法に慣れた人間特有の声と共に、その立場を現す制帽の乗った白髪頭が下げられる。


「何かあって?」

「御参詣の件にてお伺いをと思いまして、丁度お部屋前へ着いたところに……奉納品についてのお話が漏れ聞こえましたので、かの神殿の出の身としてお耳にいれたきことがあり」

「そう。それで?」


 長ったらしい口上はいらないのよ。用件を言いなさい。用件を。

 いままで訪ねてきたことなんて一度たりともなかったくせに、自分を神官長として輩出した神殿が絡んだ途端にしたり顔で出て来るなんて、解りやすすぎるのよ。


「最上級の葡萄酒を取り寄せられたとの由、まことに当神殿に対する妃殿下のお心づかいには感謝の言葉もございません。ただ……」

「ただ?」


 わたくしの空気がひりついたのを即座に察したのだろうブリン卿が、視線を寄越すだけだったドニロドトスへと体を向ける。エディスは神官長とそのお付きたちのそばをそっと通り過ぎ、ブリン卿の背後を回ってからわたくしの傍へと遠回りにやって来た。


「如何でしょう。その葡萄酒と同等の寄付をお寄せになるというのは……御存じの通り、かの神殿は多くの優れた神官僧侶を輩出しておりますが、その多くは身寄りのない子供として神殿に預けられた者たちでございます。殿下のお慈悲を賜れば、その者たちは生涯を通してその敬虔なお心に感謝と尊崇の念を抱くことでしょう」


 要はその『優れた』一部として進言したいってわけね。金を出せと。

 まあそうよね。わたくしがいう通りにすれば、王妃に多額の寄付をさせたってお前の功績になるんだもの。出身神殿の神殿長候補となるに、いいアピール材料でしょうよ。

 でも、お生憎様。わたくしへ素直に聞き入れさせたかったら、八年前に来るべきだったわね。


「いいのよ」

「は……?」


 肩を竦めて見せる代わりに、わたくしは目を点にした神官長とそのお付き神官たちの顔を順繰りに見遣りつつ、淡泊な声で続けた。


「別に感謝とか尊崇なんか求めてないわ。奉納品ですもの。奉納先の御心にすこしそえれば十分じゃなくて?」

「は……それは……」


 ここで淡泊さの中に、冷たさを一さじ。


「それともお前はわたくしに、尊敬の念を金で買う王妃になれ、と言いたいの」

「滅相もございません……!私めはただ妃殿下のお心づかいの在り様にまた一つの選択をと……!」


 そうね。そう言うしかないでしょうね。


「そう。なら選択肢として覚えておくわ。用はそれだけ?生憎、参詣の警備計画の相談中なの。機密事項だしお持て成しはできないから、あらためてちょうだい」

「ッ……は、御前を、失礼いたします」


 ご愁傷様。武器が足りなかったわね。

 見るからに狼狽えてたドニロドトスは無表情のまま自分を見つめていたブリン卿へようやく一瞥を寄越したかと思うと、再び深く礼をした。苦み走った顔、隠すの間に合ってなかったけど。

 そしてそそくさと退出していった後ろ姿と足音が扉の向こうのそのまた向こうへ消えていったのを確かめてから、また頬杖をついたわたくしにブリン卿が口を開いた。


「――お涼しいお手並みでした、殿下」


 褒めても何も出ないわよ。



 


ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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