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勇者は王妃の『推し』ですわ!  作者: gen.
第四章

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36. 勇者の旅路・その六





 魔界――裏世界の空に太陽はない。代わりに、太陽とも月とも呼べない巨大な『星』――そう呼ぶことにした――が常に浮かんでて、時間が経つにつれて瞼を閉じるようにゆっくりと黒くなっていく。かといって完全に暗くなるのかといえばそうでもなく、一番暗い時でも縁にわずかな光輪を残して、それが表世界でいう月や星の代わりのようだった。

 暦とかどうなってるんだろう、というのがヴィオの感想。

 土地はどこも痩せていて、表世界のタンポポに似た白い花が茂みの中に時々見えるくらいだ。

 そして俺たちの目的である遺跡、かと思われた神殿の周りを囲うように、小さな集落がぽつりぽつりと点在してるのだった。

 神殿からは離れてても強い瘴気と魔法行使の気配がする、というのがヴィオとゼニラの共通した所感。

 さて、どうしようか。

 俺たちが裏世界に来てから三日が経っていた。その間にモンスターに遭遇すること実に六回。それは昼夜を問わず、また森から離れても平原の、平原から離れれば森のに遭遇するといった具合で、とにかく数が多い。

 軍の手が回らなくなるのも無理はないと、ラーシドが言っていた。

 初日以来、『要の一族』の人には会ってない。最初は初日みたいに集落の外へ出てる人に会えるかと思ったけど、彼らは基本的に集落、とその周辺の農地らしき土地から出ないようだった。

 つまりいまのところ、遺跡とそれを囲う集落の周りでモンスター退治をする以外に俺たちに成果らしい成果はなかった。


「もう、行っちゃうか。神殿」

「結局そうなるんすね……」


 集落にほど近い森の中。膾斬りにしたコカトリスの残骸を見下ろしつつ俺が呟くと、解ってましたけどと言わんばかりのタクサスの声が聞こえる。


「無駄に怖がらせたくもないんだ。神殿なら軍に逮捕されるだけですむかも」

「だけ、で済ませていいのかそれは」


 小さい――初日のに比べれば、だが――魔猪を切り捨てたラーシドがツッコんでくる。


「とりあえず神殿に行く!いざとなったら逃げる!集落の人は怯えさせない!」

「つまり無策」

「いつものことだな」


 いいの。俺たちならできるから。多分。

 俺の提案という名の決定により、俺たちは集落と集落の間を縫って神殿に向かうことにした。


「ダンジョンの入り口ぐらいの瘴気はあるのに、暮らしてる人がいるんだね……」

「ここの人たちは瘴気に特別強いのかもな」


 藁ぶきの屋根や土を塗った壁は、地方の農村で見るそれとあまり変わりがない。

 本当に、裏世界の人々は俺たちと変わりがないんだと、それらを見ると実感する。


「……魔族なんて、本当にいないんだね」


 ヴィオがぽつりと呟いた。俺はそれにうまく答えることは出来なかった。



 森を出て集落を迂回し歩くことしばし、途中で誰かに制止されることもなく、俺たちは神殿前にたどり着いた。たどり着いたんだが。


「ぼろ……」

「ゼニラしっ」


 ぼろい。と言いかけたのだろうゼニラを慌ててヴィオが止める。気持ちはわかる。

 四本の柱が立ち並び、屋根と柱の間を支えるようになにかの像が立っているその外観は、近くで見ると一層神殿というより遺跡という風情だった。


「とりあえず入って、神官さんと話せそうなら話してみよう」

「装備で何とかなるレベルだけど瘴気は濃いから、みんな、気をつけて」


 俺とヴィオの言葉に、みんながぞろぞろと階段を上る。

 階段を上った先、広がってた光景に俺は思わず息を呑む。追いついてきたみんなの、感嘆の声も聞こえた。

 神殿に扉はなく、入口だろう空間両脇の柱の上には、剣を突き立て来訪者を眺める英雄像。そして入口から見えるだけでも、その神殿の壁一面に同じようで、微妙に――角や装備なんかが――違う英雄像が立ち並んでいた。英雄像の一つ一つはアーチを描く空間に収められており、それが天井まで――――四段にも分かれて続いている。天井やそれらの壁からは、古びてほつれが見える縦長の旗が吊られていた。旗に刺繍されてるのは、図案化されたあの大きな『星』だろうか。

 わずかな光の差し込むその大広間の中、英雄たちの像はほとんど影に沈みながら静かに佇んでいる。

 入口をまっすぐ行けば、祭壇なのだろう段差と演壇――もしくは石碑らしきものはあったが、表世界でよく見るような横長のベンチは置かれていなかった。ただ無数の蝋燭が祭壇の上で揺らめいている。


「えーと……ごめんくださーい」


 とはいえ、立ち止まっていてもしょうがない。俺は英雄像に見下ろされながら、入口を潜った。

 僅かな静寂を破って、薄暗い廊下の奥からぱたぱたと軽い足音が近づいてくる。


「はい、軍の方でしょうか……まだ巡回の時期ではないかと思われるのですが、お早く来てくださったのです――――」


 そこで声は途切れた。見慣れない、けれど形状からしても神官らしい装束に身を包んだその人は、額に小さな角と、エルフよりもやや長めにとがった耳を持っていた。

 それ以外は、やっぱり俺たちと同じ、人間のそれだった。


「――――どちら様でしょうか」


 声が強張る。けれどその人は逃げずに、真剣な、緊張の滲む顔で俺たちを見つめていた。

 俺は中つ国の王城で覚えた言葉を捻り出しつつ、体をそちらに向けてまず軽く頭を下げた。


「……この神殿の神官様とお見受けしました。俺たちはモンスターを退治して回ってる旅の者なのですが、すこしお話させていただいてもいいでしょうか?」

「モンスターを退治……旅の……?」


 俺の言葉が理解不能だと言うかのように神官さんは目を瞬かせていたが、少しの間を空けて「分かりました」と言ってくれた。


「その代わり、武器はお預かりします。当神殿では軍の方以外、武装は禁じられております」

「わかりました」


 仲間たちからも、反対の声は出なかった。俺の言葉に「少しお待ちください」と言い残して奥に引っ込んだ神官さんが、別の神官さんたちを連れて戻ってくる。

 彼らはみんな角や耳、あるいは尻尾、または頭部自体が獣人のそれであるなど、多種多様な種族が交じり合ったような姿をしていた。

 差し出された手の上に、俺の剣やヴィオの杖なんかが載せられていく。一番時間がかかったのはダガーの多いタクサスで、次にかかったのは隠しナイフの多いフィンリアスだった。っていうかそんなに持ってたの。俺も知らなかったんですけど。

 俺たちの武装が完全に解除されたのを確認し、少しほっとしたような顔をした最初の神官さんが廊下の奥へ手を差し伸べる。


「こちらへ」



 廊下の中は、やはり薄暗い、というか暗かった。

 廊下自体は埃もなかったが、手が回らないのか角を曲がると時々蜘蛛の巣が張っているのが見えた。長い年月を過ぎた建物特有の摩耗が、そこら中に感じられる。


「この部屋で」


 本来は軍の方をお通しする部屋なのですが、と零しつつ神官さんが扉を開ける。そこは長卓と椅子が並べてある以外は、暖炉上にあの旗が掲げられている以外目立った装飾もない、よくいえば質素な、悪く言えば何もない食堂のようなところだった。


「お座りください」


 促されるまま、俺たちは椅子を引く。長卓の短辺、上座と思われるところへ腰おろした神官さんは、全員が席に着くのを確認し、口を開いた。


「正直、驚いておりますが、納得もしております」

「え……」

「この時期にしては、ここ最近モンスターの被害報告があまりに少なかったので」


 あなたがたが退治してくださってたのでしょう、と、半ば確信してる声で神官さんは言った。

 隠すことでもないので、俺は頷く。


「軍のお仕事とは伺ってましたが、危険すぎたので目についたものは退治しました。その……いけなかったでしょうか」

「いいえ!……いいえ、誠に……他の同胞に代わって、お礼申し上げます」


 神官さんがそう言って頭を下げたので、俺は慌てて手を振った。


「お、お礼は――ええと、その、お気持ちだけでと言いたい、んですが、さきほど言った通り俺たち旅の者で、この辺りに詳しくなくて、ですね……」

「そのようですね」

「もしよければ、出来る範囲で、この国について教えて、もらえないでしょうか……?名前とか、都がどこにあるのか、とか……」


 顔を上げた神官さんの目がじっと俺を見つめる。次に俺の隣のヴィオを、ラーシドを、そうやって順に全員の目を見た神官さんは、あらためて俺の方を向いた。


「この国に名前はございません。強いて申し上げるなら、(かなめ)の地――――でしょうか」

「!」

「この大陸には、我が国以外は存在しません。それもご存じないとなると、旅の方。あなた方は、こことは全く別の大陸……世界からいらしたのでは?」


 さすがにこれは、ごまかすことはできない。


「……仰る通りです」

「……やはり」


 そこで神官さんは自分の眉間の皺を揉むような仕草を見せた。それから少しの沈黙を挟んで、重苦しく口を開いた。


「……伝承の話です。数百年に一度、異界から稀人(まれびと)が訪れ、この地に『何か』を齎していく、と」

「何か、ですか?」

「災い、工芸、言語、戦……それは生きる術であったり、あるいは災害のようなものであったり、一定しません。しかし必ず、彼らはこの地に爪あとを残していく。そう伝わっております」


 ちょっと雲行きが怪しくなってきた。


「我らは、長寿を得る者もいれば、非常に短命な者もいる、定まらない命数の一族です。ゆえに、伝承についても不確定なところが多いのです」

「そうでしたか……ええと、その、俺たちは」

「あなた方は頼まれてもいないモンスターを退治してくださった。それだけで十分です。災いをもたらす稀人だとは、少なくとも私には思えません」


 隣のヴィオが、ほっとしたように息を吐くのが解った。他のみんなからも、安堵の気配が伝わってくる。


「そう言ってもらえて、よかったです。実は、その、こちらに来た時、魔猪に襲われてる方々を見て咄嗟に助けに入ったんですが……こちらの軍ではない、とお伝えしたときひどく怖がらせてしまったので」

「そうでしたか。それは申し訳ないことを」

「いえ、俺たちも軽率だったので……やっぱりモンスター退治は、軍の仕事、なんですよね?」

「ええ、この地――この国では、武や魔法の才がある者はみな軍に入ります。そうでない者は残って畑を耕す。そうやって、永らえてきた土地なのです」


 そう言う神官さんの目が、どこか遠くを見るようなそれに変わる。


「軍は常に神殿の周囲を巡回し、モンスターを退治してくれます。残った我々は、その訪れを待つしかないのです。そうするしか……」


 それは、諦めと疲れが滲む声だった。重い荷物を背負った人が、道の途中で初めてそれを下ろして一呼吸吐いたような。それでも、荷物を担ぎ直して先に進むしかないと、知っている人の声。


「……ええと、じゃあ――――俺たち、モンスター退治を続けていいんですかね?」

「!……いい、などとは申せません。もししていただけるなら、私どもから願い出るべきことです」

「よかったぁ」


 義兄さん、と横から引っ張られた。しまった。ほっとしすぎた。


「じゃあ、軍の人が回ってるところは大丈夫として、そうじゃないところを巡った方がいいですよね。もしよければ……っと、この地図なんですけど」

「はい?……これは、見たことのない地図ですね」


 俺は懐から取り出した表世界の地図を、神官さんの前に広げて見せた。

 神官さんの当然の反応に頷いて、俺は×マークがついているところを指さす。


「このマークのあるところ、繋いでひっくり返してみると……どうでしょう。こちらの神殿と、似てたりしませんか?」

「!……確かに、これは……我らの神殿の配置とほぼ同じです。山や森は違っていますが……」


 よっしゃ。俺は推測が当たってたことに、内心で拳を突きあげてた。

 燭台に透かした地図を、俺は長卓の上に戻す。


「よかったです。じゃあ、この神殿はこの……地図で言う『南方』のマークのとこですかね」

「仰る通りです。」

「軍はいまどのあたりにいるか、解りますか?」

「今の時期は、こちらの……恐らくこの地図で言う『南西』、私どもにとっての南東と、この『南方』の間あたりかと」

「で、いずれこの南方の神殿に来る、と」

「はい」

「じゃあ、俺たちはこのまま西に向かって、東、じゃなかった西方の神殿に向かいます」


 神官さんと互いに指をさしながら位置を確認し合った俺は、そこで顔を上げてみんなを見渡した。西方、つまり表世界で言う『東方』のダンジョンは、かなり距離があるけど。

 各々が頷きを返してくれるのを確認し、再び神官さんへと顔を戻す。


「その道中で目についたモンスターは退治します。さすがに全滅させることは出来ないと思いますが……やらないよりはマシだと思うので」

「なんと……祖霊よ、感謝します。慈悲深き稀人を遣わせてくださいましたことを……!」


 祈られてしまった。でもほんと、このモンスターの数ならやらないよりマシな状態に変わりはないと思うんだが、少しでも被害が減るなら、それだけで十分だ。


「あと、これはもし出来ればなんですが……西方の神殿に、紹介状なんて、書いてもらえたり……」

「喜んでお手伝いさせていただきます」


 やった。これで相当動きやすくなるぞ。

 俺は神官さんの協力的な一言に、思わず満面の笑みを浮かべて「ありがとうございます!」と言っていた。



 俺たちは神官さんが書状を書いてくれている間、他の神官さんに案内されて最初に入ったあの大広間についての説明をうけていた。

 この英雄像たちはこの要の地の代々の王様たちなんだそうだ。そして四段の列から一番高いところ、もうほとんど影になって見えないところに初代の王様の像が在るのだという。


「初代の、王様……」

「すでに神話の中の存在ですが、大いなる戦のあと荒れ果てたこの地を治めた、偉大なる王です」


 じゃあ、その人は多分。

 俺は無意識のうちに、その暗がりに沈んで輪郭しか見えない像へ目を凝らした。


(――――あなたが、初代の勇者なんですか。俺は四代目の勇者です。あなたのような勇者になれるよう、見守っていてください)


 そんなことを、思いながら。


「お待たせしました」


 それぞれが自由に大広間を見学していると、あの足音と一緒に一本角の神官さんが一本の封蝋がされた巻紙を手に戻ってきた。


「かの神殿の長はなかなかに頑固でして……しかしこの書状があれば、周辺への滞在や集落の民との接触は許可されるはずです」

「ありがとうございます!すごく助かります」


 というか今更ながら、この人は神殿長だったらしい。そうともしらずあれこれ喋ってかなり時間を取らせてしまったのだが、神官さん――神殿長さんは嫌な顔一つせず付き合ってくれた。

 俺は受け取った書状の封蝋が割れないよう注意して、雑嚢の中に入れる。円卓会議で預けられた書状もあるし、なくせないものが増えていくなあ。

 そんなことを思って雑嚢の中を見ていたら、ヴィオがすごく不安そうに声をかけてきた。


「義兄さん、私のに入れる……?」

「だ、大丈夫だよ」


 子供じゃないんだからなくしたりしません!

 そんなやりとりを微笑まし気に見守られたりしてしまったが、無事目的を果たした俺たちは神殿長さんにあらためてお礼を行って、南方の神殿を後にしたのだった。



「これも光明神のお導きってやつですかねえ」


 神殿を離れ西に進路を取りながら歩き出してしばし、頭の後ろで手を組んだタクサスがそんなことを言い出した。


「なにが?」

「話の分かる神殿の近くにすっ飛ばしてくれたこと、ですよ」

「ああー……」


 それは、たしかに。

 いきなり西方神殿のほうに飛ばされてたら、相当苦労した気がする。

 書状、ずっしりしてたもんな。巻紙なのに。

 それに俺たちが入った、というか落ちた魔界門は最北端だから、裏返しても北であることは変わらないはずなのに。軍の到着を待ちわびて疲弊している南方の神殿のそばに放り出されたのは、なにか作為的なものが。

 あるかもしれないし、ないのかもしれない。


「よくわかんないな」


 でもとりあえず、ここでも人を助けることは出来そうだ。

 俺にも、俺たちにもできることはある。


「おい、任務を忘れてないだろうな」


 のんきに腕を伸ばしてる俺の後ろで、ラーシドが唸る。


「忘れてないない」

「だが、現に軍からは遠ざかっているぞ」

「まあ、そのうち会えるよ。多分」

「お前は…………まったく……」


 肩越しに振り返った俺に向かって、ラーシドが諦めたような呆れたようなため息をついた。


「順調に毒されてますねえ」


 なんか失礼なこと言わなかった?タクサス。


「それよりベッドでねたーい」

「諦めろ。またしばらくは野宿だ」

「ぶー」


 今は頑張ってくれゼニラ。西の集落に着いたら寝台付きのところで寝れるよう交渉するから。



 しかし、そんなゼニラの願いも虚しく。


「またくるぞ!!」

「逃げろ!!神殿の方へ!」

「ママ……!」

「手を離さないで!――――ああッ!!」

  

 俺は逃げ惑う人々の合間を縫って走り、半壊した壁を蹴って跳躍すると、転んだ小さな子供に襲い掛かろうとしたかぎ爪の主――――ワイバーンに向かって蹴りをかましていた。

 突然の横からの衝撃で吹っ飛ばされたワイバーンが別の家屋の壁に激突し、翼をばたつかせながら落下する。蹴りの反動でその真上を取った俺の切っ先が、垂直の斬撃を放った。


「ギッ――――」


 首を失ったワイバーンだったものの上から飛び降りると、俺は転んで動けないでいる子供を抱えて、手を伸ばし走り寄ってくる母親へと手渡した。


「神殿へ!急いで!」

「ありがとうございます!ありがとうございます……!!」


 遠くではゼニラの水魔法が放射線状に放たれ、上空にある無数の翼と体を次々穴だらけにしていく。ワイバーンは風魔法を操るので、熱風をいなされてしまい火炎とは相性が悪い。俺もまた半壊した屋根へと飛び乗ると、風とは好相性な分通りのいい雷撃呪文の準備をした。

 他の屋根ではフィンリアスがその翼や眉間を的確に射抜き、タクサスの投げ縄に捕まりカイドウに叩き落された一頭をランドリンの戦斧が仕留めている。

 ラーシドは屋根の間を飛び回り、その双剣で次々にワイバーンの喉元を切り裂いていた。


「ラーシド、降りて!!」

「!」


 俺の頭上に、自然現象とは違う黒雲が渦巻き始める。

 俺はラーシドの双剣の閃きが見えなくなったのを確認し、再び跳躍した。


「せえ、の!」


 水平一閃。放たれた雷撃と斬撃が、集落上空に居座っていたワイバーンたちの体を両断し、あるいは消し炭に変えていく。

 さらに上空を飛んでいた数匹は、そのあり得る筈もない軌道で走った雷へ驚いたように方向転換し、逃げようとする。

 次々と落下していくワイバーンの残骸を尻目に、俺は着地した屋根の上で構えを取った。


「悪いけど」


 ばち、と手元で光が弾ける。


「逃がさない」

 

 上空めがけて、再度の一閃。もはや悲鳴も聞こえない距離で、鮮やかな緑色が黒く変色し、落ちていくのが見えた。


「……あーあ……」


 俺は周囲を見渡す。辺りはワイバーンの風魔法か、あるいは――――俺たちに仕留められて落下した死骸たちで押しつぶされた屋根だらけだった。

 周囲に飛び散った、屋根だったものの藁を眺めつつ、俺は一人頭を掻いた。


「……どうしよ。これ」





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