2022年3月12日
13時過ぎ、きよのちゃんが一人でやってきた。車の中で見ていたタブレットを閉じて、「あれっ、今日は来れんやったんやないんか?」
「うん、1時にKZ公(KZHR公園)で待ち合わせしとったのに来ないん。やからこっちに来たぁ。また行ってみるよ」
「きよのちゃん、KZ公は会いたくない同級生が居るけん行きたくないって言うとらんかった?」
「うん。でも時間決めてるし、会ったら直ぐにあそこ離れるから」
「ステは?」ときよのちゃん。
「さっきまでその辺に居ったぞ」
ちょっと餌をやったりして愛でていたが、飽きたステが姿を消した。
きよのちゃん、「また行ってみる」と、住宅街の路地に一度姿を消したのだが、直ぐに戻ってきた、「やっぱり来ない」
「相手に約束の時間ちゃんと伝わったったんか?」
「言ったつもりなんだけど忘れたのかな?」
「ラインで連絡できんのか?」
「そのラインを今日互いに登録するつもりだったんだよ」
「その友達あいちゃんも知っとん?」
「うん」
きよのちゃん、猫を探しに住宅街を歩き回って、「誰も(猫)も居ない」
俺が、「人も居ねぇか。確か1週間前海に行って以来ずっと雨降ってねぇの」
「うん確かに。もうあれから1週間、早い!」
きよのちゃん、暫く駐車場の突端に座っていたが、「今日はもう帰る。猫じい、明日のことお願いね」
俺はわざとらしく、「何かちゃんと覚えとったんか?」
「楽しみにしてるもん」
「鴨の居るところは遠いわ。近場の到津の森公園で勘弁せいや」と俺。
きよのちゃんが大通りに向かって住宅街の路地に姿を消した途端、日豊本線に沿った住宅街の路地にあいちゃんが現れた。
「あいちゃん、きよのちゃん今帰ったところや。まだその辺に居る筈じゃ」
あいちゃん、捻挫でまだ足が痛いのか、少し引き摺りながらの小走りで、「マリアぁ!マリアぁ!」
おう、まだほとんど進んでなかったようだ。二人の邂逅?が俺の目に映った。ちょうど二人が檻と呼ぶ邸宅の前で。
あいちゃん、「猫じい車に乗っていい」と、二人、後部座席の決まった位置に座る。俺も運転席に。
きよのちゃん、「昨日猫じいが撮った動画見たよ。猫じい、あいちゃん口が悪いなぁだって」
あいちゃん、「うち今日小倉(市街地)に行く。猫じい安部山公園駅まで送ってぇ」
「ああええでぇ」
「ってか、マリアも一緒に行かない。うち2500円持って来とん」
「猫じいが一緒に行ってくれるなら行くぅ」と、きよのちゃん。
俺は、「分かった。連れてってやるがお前ら二人で楽しんで来いや。俺は車ん中で待っとくけん。小倉駅の新幹線口でいいんか?」
あいちゃん、「よく分からんけど小倉駅ならいい」
きよのちゃん、「ねぇ猫じい車に残ってないで一緒に行こうよぉ。かなえちゃん居なくなったから三人じゃなくなって淋しいから」
「お前ら明日到津の森公園行くんやろ。そんときゃちゃんと車降りて一緒に歩いてやるわ」
『ありがたいお誘い名やがこんな小汚い禿ジジイが人も羨むめっちゃかわいい女の子二人と街中歩くてろ罰が当たるわ』
っていうか、周囲の好奇の目に俺が耐えられそうもない。ビッコも引いているし。到津の森公園ならジジイと孫二人を動物園に連れてきたっていう設定で、まぁ何とか逃れられるだろう。
きよのちゃん、「ならうち、一度家に帰ってお金持って来るよ。猫じい家に寄って」って言われてたのに、大通りに出て1つ目の信号を右折するのに忘れて、セブンイレブンの前をUターンしてしまった。それでは終わらず、かなえちゃんときよのちゃんを送るときいつも止まっていた歯医者の駐車場も通り越して、二人にダメ出しされてしまった。
「あっちゃ〜、俺ヤバい!もうあの世からお迎え来るかぁ」との戯言に、きよのちゃん、「猫じいはまだそんな歳やないよ」
あいちゃん、「お母さんがね、猫じいの好きなものって何って訊いてきた」
「前に言うたと思うが俺は病気くらってまともに飯が食えんのじゃ。強いて言えば貧乏臭いけどおにぎりかいな。俺が高校生のとき俺より一つ下の女の従妹と伯父貴の三人で山登りに行くことになって、その従妹がおかかのおにぎり握ってくれたんやが、これがめっちゃ美味くて今でも忘れられんわ。もう絶対食えんけどな」
あいちゃん、「どうして?」
俺、「従妹なのに告ってふられてもうた」
「猫じいかわいそう」ときよのちゃん。
俺はわざと空元気で、「自慢じゃねえが俺は十人にふられたけんな。高校時代に二人、大学時代に四人やったかいな」
時刻は15時ちょっと過ぎ。きよのちゃんの門限は18時だから、猶予時間は移動時間を除いて二時間か。タコマ通りから国道199号線に入って新幹線口のロータリーの一番手前に止まった。
きよのちゃんの、「うち買い物が終わったら直ぐ戻ってくるね。猫じい待たせたら悪いから」に、あいちゃん、「ごめん。だったらうちは一人でバスで帰るよ」
俺は、「お前ら、まぁ移動時間を30分みたとして5時半までに車に戻って来いや。やったらあいちゃんもいいやろ」
「猫じいそれだったら二時間もうちらを待つことになるよ」とあいちゃん。
「お前らが気にすることやねぇんじゃ。俺は現職のとき仕事柄二時間三時間待つんは普通やったけん全く苦にはならんのじゃ。そいにスマホがあれば書き込めるしな」
二人、ほんとに申し訳ないという顔で、「ほんとにいいの?」
「ああいい。行って来い」
「ありがとう猫じい!」
「おう」
考えてみればこの小倉駅新幹線口に来たのは丸二年ぶりか。大学時代の空手部の同期で親友のつもりだった(まぁ奴が虚心坦懐、俺に謝って来ない限り、死ぬまで会うことはない)Aが小倉に仕事でやって来て会ったあと、何回かここまで送ってやった。
二人を降ろしてもうちょっと隅につけようとバックしたら歩道の段差に当たった。音からしてタイヤだと思うのだが、A型で心配性の俺は、タオルを使って高さを確かめ、当たった部分を特定しようと試みる。
車の中でアメブロの体重管理の「小学六年生女の子餌やり日記」の昨日の記事を暫く書いた。今日中に終わらせなければ、二日前のことを書くこととなり、さすがの俺でも記憶が薄れてしまう恐れがある。
まぁ俺にとって二時間などへでもない待ち時間なのだが、土曜日で人通りも多いし人間ウォッチングでも時間が潰せる。北九州市営バスがバス停に何台が乗り入れて来たが、乗客の姿が見えないのだが。経営、大丈夫?と心配になる。
ロータリー道路の路側帯に俺も含めて何台か停まっていたが、パトカーがど真ん中にどんと居座ったため、俺以外の車が居なくなった。ふと、『俺免許証持っとったかいの?』と、グローブボックスを確めたらあってほっとした。
この前、オイル交換でオートバックスに行った折、入れたままだった。なかったら、一度車を出して、パトカーが居なくなったのを見計らって戻って来ようと思った。
17時ちょっと過ぎ、視界には仲良く並んで歩く二人のかわいい小学生の姿が。あいちゃんは飲み物を持っている。車に乗り込んでき来た二人に、「おう、予定よりちょっと早かったな。楽しかったか?」
二人、「うん」
あいちゃんときよのちゃん、手におにぎりを持っている。あいちゃんは梅おかか、きよのちゃんはカニカマ。
あいちゃん、「猫じいはどれか美味しそう?」と訊くから、「梅おかか!」
あいちゃん、「うちの勝ち。じゃぁ食べようか?」
「ってお前らそんなん食って家で晩飯食うえるんか?」
二人声を揃えて、「うそぴょ〜んじゃ。このおにぎりは猫じいへのプレゼントでしたぁ」と俺にくれる。
俺の、「おう、お前ら気が利くなぁ。涙がちょちょ切れるぜ」に、二人怪訝な顔。小学生にジジイギャグは通じない。
こいつらの気持ちは嬉しいが、今の俺にはありがた迷惑でもある。というのがこの2月3月、体重の減りがめっちゃ悪い。夜の体重計測で66・5を切ることがない。ご飯はそれが飯茶碗一杯でも、食後計った体重は軽く600グラムを超える。
だから俺はラムーで買った税抜き68円の食パンを二枚焼いてマーガリンをつけて食う。そうすれば最悪500グラムほどの増加で収まる。上手くすれば200グラム増加で済むこともある。
でも、今日の晩飯はこの二つのおにぎりを食うことになるだろう。二人の好意を無下にすることだけはできない。結果、飯食う前の体重が66・7。食後の体重はなんと67・4だった。何と700グラムの増加。とほほ!
新幹線口を出るとき、元来た道から帰ろうと左折して浅野一丁目の信号を右折しようとしたが、渋滞で曲がれない。仕方なく直進して国道199号線に入った。
猫じい、「到津の森公園のうちらの入場料はいくらなん?」と訊いてきたから、「小学生は百円やったぞ」
あいちゃん、「うちらが猫じいにあげたセブンのおにぎりより安い〜」って文句をつけてくる。
「駐車場代も入れればお前らのおにぎりより高くなるわ」
運転中で俺が後ろを振り返れないのをいいことに、あいちゃん、「猫じいそれ間違いだよ。400円だよ」
きよのちゃんも、「猫じいいつの料金見たの?もう値上がりしてるよ」
「何ち〜、400円!ジジイには堪えるなぁ〜。大人はいくらになっとる?」
あいちゃん、「800円だよ」
「そうか、なら俺は障害者やけん半額の400円やな」
あいちゃん、「うちらは障害者じゃないから400え〜ん」
きよのちゃん、「猫じい、入る前にうちらに400円くれててもいいよ。入場料直接払うから」
「まぁそれでもええが、三人で1200円と駐車場代か、痛ぇなぁ」
あいちゃん、「猫じいごめんね。うちら糞ガキだから」
国道199号の末広町の信号を右折。鹿児島本線の高浜踏切を渡って高速の足立インターに至る道を選択して霧ヶ丘バイパスの方からKZHRへ。いつもの歯医者の駐車場できよのちゃんを降ろして、あいちゃんを乗せたまま俺の家へ。
あいちゃん、「プーチン大統領を暗殺したら自動的に核ミサイルが日本に飛んでくるんだって」
「俺もその記事読んだが眉唾やな。考えられん。核ミサイルが世界に向かって打ち込まれた瞬間、今度は報復でロシアに落とされる。ロシア国民も全滅や。常識的に考えて止める手段はあるって思うぞ」と俺。
あいちゃんの口からは時折、ウクライナ問題が出てくる。世の中、キナ臭くなってきている。世界の盟主アメリカ、第三次世界大戦を恐れて殺人鬼ロシアに手出しできないとは情けない。こうしている間にもウクライナの人々は気狂いロシアに殺されている。死ねばもろともじゃ。プーチンに引導渡してやれるのは今はバイデンだけではないのか。
誰かが言っていた。核兵器のボタンが押せるのは気が狂った人間だけだと。通常兵器で国内攻撃されたからって核使用に踏み切って、それでロシア国民もろともこの世から消滅させるつもりなら、プーチンという極悪人を独裁者にしたロシア人のせいだ。願わくばあいちゃんときよのちゃんが一生を全う出来るまで世界は平和であって欲しい。
俺の家についても、あいちゃん、帰ろうとしなかった。俺もそろそろ帰ったらとかは言えない。あいちゃんの家は直ぐそこなのだから。今日のステファニーの懐き方、あいちゃんを中々帰ろうと思わせないみたい。時刻は16時半、嫁がクリーニングに行くと言っていたが。クリーニング屋は19時までだ。
勝手口からガチャガチャと音がして嫁が出て来た。
あいちゃん、嫁には丁寧語だ、「こんにちわ」
嫁も、「来てたんねぇ」
俺が、「クリーニング行くんか?」
「あいちゃん、俺らちょっと出てくるけんね」
「うん。うちもう少しステと一緒に居たい」
クリーニング終わらせて、ファミマでコーヒータイム。もうあいちゃんは家に帰っただろうと、俺は急いで戻るつもりはなかった。今日はあいちゃんきよのちゃんとは13時過ぎから一緒に居るんだから。
嫁が、「ホワイトデーのギフト明日買う?」
「(明日は二人と到津の森公園に行く予定だから)いや明日はまずい」
「なら今からトライアルに行ってみる」と嫁。二人であいつらが喜びそうなものを選んで来た。
家に戻ってびっくり仰天!あいちゃん、まだ居る。時刻は20時だ。あいちゃんの親御さん心配しているのではないか。俺に対しても親から非難が出るのでは?
「あいちゃんまだ居ったんか?親御さん心配しとるぞ」
あいちゃん、「ステがねぇ、ずっとうちについててくれたん」
「おう、いつもは暫くしたら飽きてどっか行くのにな。偉いぞステ」
あいちゃん、「猫じいの車にバック忘れた」
「あっちゃ〜、そういう訳か」と、車の後部座席からバックを取ってあいちゃんに即行で渡した。小学生が暗くなるまで家に帰らないとか非常にまずい。
俺は、(あいちゃんの家はここから直ぐだから)一度家に戻らんかったん?
「戻ってないよ。ずっとここに居た」
「電話も?」
「アイパットはバックの中」と、取り出して不在着信を確める。
「お父さんから電話入ってた」と電話を掛ける。スピーカーを効かしているのか、会話がもろに聞こえる。
「お父さん電話した?ごめん出れんかった」
「今どこに居るんか?」と親父さん。
「猫じいんち」と、具体的に答えるあいちゃん。ちょっと違和感。
親父さん、「上のファミマに居る。直ぐ来い。で、何で8時になったんか?」
「会ってからちゃんと説明するよ」とあいちゃん。
俺はめっちゃ不安だ。相手は12歳の小学生。車で出るとき、忘れ物がないか確めるのがジジイである俺の務めではないのか。ほんとうに迂闊だった。親御さんにしてみたら、俺の家に怒鳴りこんでも当然の行いだ。もちろん俺は謝らねばならないが、あいちゃんの前で頭を下げるということは帽子を取って剥げを晒すということだ。出来ることならそれだけはご勘弁。




