2022年3月7日
16時半頃、あいちゃんかなえちゃんきよのちゃんの三人で仲良くやって来てくれて、俺はほっと胸を撫で下ろす。その15分程前、ステファニー・アムアム・アンバー・クロコが集まって来たので、あいつらが来るまでこの状態を保とうと、きよのちゃんの紙皿に残っていた猫缶生餌をちょっと与えた。餌をポリボックスに収納して暫くして三人がやって来た。
あいちゃん、「今日はいっぱいいるぅ」と顔も綻ぶ。
「お前らのために集めておいたけんな。そいでちょっと餌やったぞ」
ポリバケツから紙皿を取り出したきよのちゃん、「猫じい、うちの餌やったぁ?」
「すまん。きよのちゃんの餌やったかいな」
まずは俺の家の駐車場の突端に三人集まる。残っていたパウンドケーキを三個配る。きよのちゃんの、「猫じいかなえちゃんの分は要らないよ」という声は無視。
「はいかなえちゃん」
かなえちゃん、かわいく、「ありがとう猫じい」
かなえちゃん、パウンドケーキを小さく千切って猫に。
その内三人、勝手口の前に移動する。
餌をやるのはあいちゃんときよのちゃんの役目、かなえちゃんはパシリっていうかただの見守り役。
きよのちゃん、ステを何度も抱き上げる。その度に、にゃ〜、「ステぇ、かわいい」と抱き締める。
あいちゃんはお気に入りのアンバーに関わる、「アンバー、アンバー」とエサを載せたスプーンを差し出したとき、ステが横取りしようとした。
きよのちゃん、「もうこれはアンバーの餌なの」と嗜めた途端、がしゃっ!ステがきよのちゃんが持っていた紙皿の餌に食い付いて、落ちた。
きよのちゃん、「もうステ、食い逃げぇ!」
かなえちゃん、「毛玉、どれくらい食べられた?」
「大きな塊食い逃げされた。もう予定終了。もう餌あげない」って断言したきよのちゃんだったが、「にゃ〜」と膝の上に乗ってきたステに、「やっぱりステかわいい!」
あいちゃん、白い300円のプラスチック製安椅子に座ったかなえちゃんに、「うちら昨日猫じいと海に行ったんよねぇ。貝殻も拾ったよぉ。猫じい、かなえちゃんに見せてやって」
「ああええぞ」と、ハスラーのグローブボックスから取り出してかなえちゃんに見せた。
かなえちゃん、疑わしそうな眼差しで、「猫じいほんとなのぅ?」
「ああ本当や」
きよのちゃん、「かなえちゃんは行けないね。土日はうちらと遊べないからぁ」
アンバーが婆さんの家の敷地に去り、ステも同様に婆さんの家の敷地に。猫がいなくなったあいちゃんときよのちゃん、お決まりのかなえちゃんいびりを始めた。っていうか、これはイジメでもなんでもない、ただのじゃれ合いだからと俺はこれを読んでいる人に念を押しておく。
あいちゃんのアイパットミニには三人の愛くるしい動画がたくさん入っている。かなえちゃんの動画はいびりの道具になっているようだが、見せられた俺としては、恥ずかしいことなんか絶対ない。むしろかわいいと思うのだが、本人の捉え方はそうではないらしい。だから、あいちゃんときよのちゃんが面白がる。
あいちゃん、「これうちのアイコンにしちゃう」
「ねぇあいちゃんお願いだから止めて。本当に止めて」
「これうちのお気に入りだからみんなにも見て貰いたい。止めな〜い」とあいちゃん、ポチっと投稿のボタンを押した。
かなえちゃん慌てて、「えっ嘘!あいちゃん本当に投稿したの?」
あいちゃん、「ほんとだよ〜?かなえちゃんここ見て」とアイパットミニの上部を指す。
「投稿されましたってなっとやろ」と冷たく突き放すあいちゃん。怒ったかなえちゃんがアイパットを取り上げようとする。
「嫌だよう!」と、あいちゃんアイパットミニを持って逃げ、きよのちゃんも面白がって付いて行く。その二人を懸命に追うかなえちゃん。
俺は、『何、あいちゃん、あいだけ走れるってもう捻挫はいいの?』
再び俺の家の勝手口前に戻って来た三人。
「あいちゃんやり過ぎや」と止めようとする俺に寄ってきたきよのちゃん、「猫じい投稿はしたけど非公開なの」
あいちゃんときよのちゃん、車の中に避難して運転席から集中ドアロックした。
本気で怒ったかなえちゃん、踵を返すと住宅街の路地に消えて行く。「かなえちゃん」と呼び掛ける俺の声は届かないようだ。
車、ロックしたのが分かっていたから、暫くその辺りを彷徨いたあと、徐に運転席の窓ガラスをコンコンと叩く。きよのちゃんがロックを解除して、俺は運転席に乗り込む。
「お前らやり過ぎや。かなえちゃん怒って帰ったぞ」
あいちゃん、「ほんとに帰ったん?」
「お前ら一応友達やろうが。謝りに行けや」
しぶしぶながら、あいちゃん、「うん」
きよのちゃん、「猫じいお願い」
「何ち、また俺がお前らの送迎役か」
あいちゃん、「だってぇ、歩いて行ってたらマリア(きよのちゃんのこと)の門限きてしまうよ」
「しゃぁねぇなぁ」と、何回か下ろしてやった歯医者の駐車場に止めた。時刻は17時をちょっと過ぎ。歯医者はもう閉まっていた。二人、車を降りてかなえちゃんの家へ。
戻って来た二人、急いで車に乗り込んで、「猫じいロック。かなえちゃんを車に乗せないで」
「かなえちゃん来るんか?」
きよのちゃん、「さっきはうちらが悪かったけど今度はかなえちゃんが悪いんやからね」
数分経ったがかなえちゃんはやって来ない。
「かなえちゃんほんとにくるんか?」
きよのちゃん、「来るよ。絶対来てって強く念押ししたから」
「お前らが車で来たこと知らんやろ?抜け道じゃないんか?」
「でもなかえちゃん出て来るときはかならすこの道通るから」
と、かなえちゃんがやって来た、「猫じいだめ」というきよのちゃんの声を無視して俺はロックを解除する。
「もうお前らせっかく謝りに来たんやろ。仲良くせいや」と、かなえちゃんを助手席に乗せてやった。
一言かなえちゃんに声を掛ける、「土日は忙しかったん?」
かなえちゃんの答えは忘れた。
家に着いて、「俺からの頼みや」
あいちゃん、「何、猫じい?」
「三人仲良くしてくれたらお前らの行きたいとこ、遠くの場合は親御さんの許し貰ったらどこでも連れてったるわ」
「ほんと猫じい?」
「ああ本当や」
あいちゃん、後部座席から腕を伸ばして、「うちとかなえちゃんめっちゃ仲良し!」と頭を撫で捲る。
きよのちゃん、「うちは猫じいの奢りでびっくりドンキー行きたい」
門限までの数十分は、四人で、あいちゃんのアイパットミニで「押しメン当て」で遊んだ。
門限が迫って、三人仲良く住宅街の路地に消えて行く。
「じゃぁねぇ猫じい」
「ああまたなぁ」
まぁ今は車で連れて行ってやったら喜ぶんだろうが、その内、ジジイと一緒では詰まらなくなるだろうことは目に見えている。俺が今小学生だったとしたら、還暦過ぎのジジイと数時間も一緒に居るとか気持ち悪い。ビジュアル最悪な単なる近所のジジイなのに。ただ、その辺のジジイと違っているところは、ほんとに俺は猫が好きだし知識は豊富。スマホ、パソコン、タブレットなどの最新機器を使いこなし、ユーチューブに投稿している自称小説家だ。この辺りを三人、一応評価してくれているのか?




