2022年3月8日
朝から義足の左足、半端ない痛さ。一歩踏み出すのが怖いくらいだ。あまりの痛さにもう一度義足屋に行こうかとも思ったが、来週の金曜日までこの状態だったら訪ねる。返す返すも日曜日は助かったぁ、って言うか、かわいいあいつらと一緒に歩けてめっちゃ幸せを感じた。
車の中で「るろうに剣心」見ていたが、眠たくなってうとうと。16時半頃、住宅街の路地から話し声が聞こえて来た。あいつらだ。俺は狸寝入りを決め込む。きよのちゃん、窓をコンコンと叩く、「猫じい!」
「おう」とわざとらしく今気付いたふりをする。
きよのちゃん、「猫じい気持ちよく寝てたね」
「でねぇ猫じい、大事件が起こったぁ」
俺には直ぐピンと来る。昨日の今日の平日、かなえちゃんが一緒じゃない、「かなえちゃんがどうかしたか?」
きよのちゃん、「猫じいよく分かるよね。今度こそかなえちゃんうちらのグループ抜けると思う」
ポリバケツを開けたあいちゃん、「うちのカリカリがない〜!」
『カリカリ?あっちゃ〜、昨日の夕方俺がステに食わせた、カリカリ餌を猫缶の生餌で和えたあいちゃん特製の餌のことか』
「あいちゃんごめん!昨日ステが腹減った何か食わせろいうけんやっちまったわ。ステの野郎一気に食っちまったわ」と笑わせようとしたが、あいちゃん、何も答えず目が怒っている。あ〜怖い!っていうか、これ俺が買ってきたエサなんにぃ、とかはこの二人には通用しない。
もう一度心から謝るしかない、「あいちゃんごめんっちや〜。もう一回作ってくれや〜」
「まぁ猫じいだから許すけど以後気を付けてね」
「あいちゃん許してくれてありがとう」って、何のこっちゃ。
で、かなえちゃんの話に戻る。
「いったい何があったんか?」
俺ら三人、コンクリート地の駐車場の突端に座る。
あいちゃん、「うちがかなえちゃんにグループ抜けてって言ったん。そしたら軽くいいよって」
きよのちゃん、「校門抜けて直ぐだったからかなえちゃんほぼ一人で帰ったと思う」
俺はあいちゃんに、「何でそんなこと言うたん?」
「だってぇ~、かなえちゃんキモかったんやもん」とあいちゃん。
「またカイカイしたんか?」と笑う俺。
あいちゃん、「違う。かなえちゃん友達の腕に顔をすりすりしてたんだよ。キモくない?」
「その友達お前らとも仲がいいんか?」
「うん。グループは作ってないけど一応友達」
「ほうか。そうなったら俺ではもうどうしようもねぇな。今からかなえちゃん誘いに行くか?」
きよのちゃん、「もうかなえちゃんのことはいい。真面キモい」
「そうか。クループ二人になってもうたか」
あいちゃん、「うちはマリアと二人だけがいい」と、きよのちゃんの腕を取る。
「うちもかなえちゃんはっきり言って邪魔!」ときよのちゃん。
ここまで言われたらもうかなえちゃんはグループ抜けた方が良いだろう。かなえちゃんと二人でいるときはこいつら仲がいいが、三人になった途端、かなえちゃんイビりが勃発してしまう。見ている俺ももろにかなえちゃんの肩を持つことも出来ず窮してしまう。
「かなえちゃん別のクループに入ってしまうんかのう?」
きよのちゃん、「もうかなえちゃんのことはどうでもいいよ」とステファニーを愛でるが、まだ餌はやらない。二人、餌を介しないステとの交流を求めている。
「さっきずっとステ、俺の膝に乗っとったぜ。餌無しで」
あいちゃん、「もう猫じい、餌無しでって強調せんで」
ステファニー、暫くしたら、餌の方に興味を引かれだす。
きよのちゃん、「仕方ない。餌やるか」
「今日はアンバー来んなぁ」と俺。
「あっとお前ら、昨日だんごの動画あげてやっとったぞ」
あいちゃんきよのちゃん、「見たよ」
俺はにやっと笑って、「たんご帰って来てぇbyきよのってな」
きよのちゃん、「猫じい、このカーディガン素敵やろ」
「自分で選んだんか。女の子は男の子と違ってこんなところええんよな」
「マミーが選んでくれたぁ」
あいちゃん、「猫じいは確定申告したことあるぅ?」って、小学生が確定申告?
「ああ何度もあるぜ。特に会社辞めた年やな。もう税金会社が計算してくれんけん自分で確定申告して税金計算せなならん」
あいちゃん、「うちのお父さん社長のようなものやろ。やけん自分で全部せんといかんの」
「あいちゃん領収書とか貼らせられたんやろ」
「うん。昨日手伝ったぁ」
ステが二人の餌やりに飽きて車の下に隠れるようになった。
あいちゃん、「カレーパンが食べたい」
「ラムーにあるんやないか?」
「他にも買いたいものあるけラムーに連れてって」
「ああええで」とは答えたものの、「俺はお前らの足か?」
きよのちゃん笑いながら、「うちらのようなかわいい子乗せられるのに猫じい不満?」
「いや、そげなことはねぇけど」
最初のいうちは、冗談で、「お前ら乗せとるのがバレたら俺は誘拐犯やねぇか」とか言って避けていた俺だが、何度も乗せているうちに慣れてしまった。っていうか、感覚、麻痺してしまった。それに車に乗せてたら、小学六年生の女の子の生態、その会話からよく分かるし、それ以上にこいつらのあまりのかわいさに、同一空間に俺のような小汚ないジジイが入り込んでていいのかという罪悪感まで湧いてくる。
住宅街から大通りに出るために待機する。俺の前に車が1台。こちらに入って来ようと待っている軽の箱バンが1台。俺の車、左にぎりぎりまで寄せてるから入って来れる筈なのに、わざわざ俺の車と前の車が大通りに出るのを待っている。
あいちゃん口が悪い、「あのおじさん禿げてる。何かイライラして指で貧乏ゆすりしてるよ。キモい!あんなおじさんが一番嫌い」
きよのちゃんも、「うちも嫌い」
『って、俺の禿げに比べたらかわいいもんなんやけど』
二人、俺がめっちゃ禿げなの知ってる筈だ。まぁ初めて会ったときから帽子を被った俺しか見てないが、「猫じいって禿げてるの?」とは一度も訊かれたことはない。
車がスズキバイクセンターの横を走るとき、あいちゃんが言う、「うちは彼氏を作るのは中三でいいかな(実際は中一で、もう作っていた)」
あいちゃん、ラムーでクッキー買って来て、車の中で、「これ美味しい」と連発していた。
暫く車の中に居たが、きよのちゃんの、「あっシロがいる」の声で車外に出て餌をやりだした。俺も降りる。
「猫じい、シロ、だんごと同じ日に消えたって言ってたけどちゃんと居たじゃん」
「おう、俺の勘違いやったな。だんごも俺の勘違いで姿現してくれんかな」
俺の、「シロってめっちゃガニ股よな」に、きよのちゃん、「猫じい変なところばかり見てるよね。ステにも何か言ってたよね」
「ステはめっちゃ内股や」
「それ」っと、きよのちゃんが笑う。
二人、来る時間が遅かったのであっという間に門限が迫る。
あいちゃんが、「猫じい、かなえちゃん本当にうちらのグループ抜けると思う」と訊くから、「うそぴょ〜んじゃねぇんか?」と俺。
あいちゃん、「猫じい、残念ながら、がちぴょ〜んじゃ」と笑う。
『そうか、もうかなえちゃんには会えなくなるんか。淋しいもんではあるな』
「じゃぁね猫じい」
「おう、またな」




