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2022年2月20日

 やられた〜。俺、信じてしまっていた。恥ずかしい〜。まさか嘘やったとは。あいちゃんときよのちゃん、話合わせるのがめっちゃうま過ぎる。アカデミー賞級!って、騙されるのは俺くらいかもしれないが。この件は後半で。


 今日はめっちゃ寒かった。嫁が下関に息子のバスに乗りに行くとか煩かったが、「14時32分のバスって、こげな寒い中、三時間も待てるか!」と諦めてさせてよかった。嫁、日曜日は天気がいいとかぬかしていたが、なんのことはない、午前中は雪が舞う極寒の天候だった。嫁も、「こんなに寒いとは思わんかった。行かんでよかったぁ」


 16時前にきよのちゃんが一人でやって来た。

「他の二人は?」という俺の問に、きよのちゃん、「あいちゃんとかなえちゃん用があるんやって」

 こんなに寒いと猫も丸まって動きが悪い。午前中は「いもこ」と「ステファニー」と「あにうえ」、俺の家の前の空き家の庇の下で踞っていたが。

 きよのちゃん、「猫じい丸天(前までは日豊線をの向こう側の地区に出没していた気がするのだが、全身ブラウンの茶トラだ)が居る?」

 丸天、空き家の敷地に素早く入って行く。

「あいつ尻尾デカいぞ」

「だんこよりも?ときよのちゃん。

「と思う。尻尾がデカくて長い猫、俺好きなんよね。近くでもっと見たいんやけどな」

「でも丸天、近付いたら直ぐ逃げるもんね」ときよのちゃん。

「丸天に俺が一番近付けたんはビデオに撮った、シロと喧嘩しよったときやな」


 ポリバケツには昨日の残りの猫缶の生餌がまだ結構残っている。きよのちゃん、その紙皿に入った生餌を持って動き回る。お気に入りの「だんご」に餌をやりながら撫でていたが、飽きたのか、だんご、婆さんの庭に戻って寄って来ない。

 めっちゃ寒い。俺は車に乗ったり降りたりしていたが、「ステは居ったぁ?」

「婆さんの車の下に居るぅ」

 きよのちゃんと俺、婆さんの砂利敷きの駐車場で生餌で釣ってステを車の下から引き出そうする。

 きよのちゃん、「今日のステ何かに怯えているみたい」

「俺がハスラーの下に入ろうとするステのしっぽ掴んで引き摺り出した」

「もう猫じい、そんなことしたら怖がるに決まっとるやん。仕方ない。ステは暫く放置!」

 俺も、「放置!放置!」


 暫くして寂しくなったか、ステファニーが俺の家の駐車場に出て来た。きよのちゃん、抱き上げて、「やっぱりステかわいい!!」

 今日買ったばかりのステファニーの大好物、パウンドケーキを1個出して与えた。

「もうこれ見せたら一発なんやけん」ときよのちゃん。

 だんごもステファニーも眼前から消えたきよのちゃん、女の子三人が「栗きんとん」の「きんとん」と渾名する男の子の家の飼い猫、「うらら」を抱いてやって来て、婆さんの庭のベランダに居るだんごに引き合わせたが、「だんご」は無反応。

 後できよのちゃん、「だんごはうららが好きな筈なんだよね。だって、うららが来ると寄り添うようにするんやもん」

 俺、「だんごはこの前はステファニーに寄り添いよったけどな」


『きよのちゃんの上着、普通の生地で俺が着とる防寒着より薄いごたるが、ようこげな長時間外に居れるな』と感心していたが、寒くて猫の動きは悪く、紙皿に入れた生餌がなくなったら、あいちゃんが残してたんだろう、猫缶に入った餌を持って、俺の視界から消えたり現れたりしていた。俺はきよのちゃんの視界から逃れて、空き家のいつもの階段のところに立ち小便。JRの斜面のビワの木の手前に飛ばすのは止めた。きよのちゃんにまたしっこの匂いがきつくなったと言われそう。


 寒さに耐えられなくなった俺は車に避難してエンジンを掛け暖房を効かす。きよのちゃん、暫く外で頑張っていたが、「寒い!猫じいもうダメ」と車の後部座席に乗って来た。

 あいちゃんときよのちゃんとかなえちゃんの内、一人で猫に餌やりに来たことがあるのはあいちゃんときよのちゃんの二人。かなえちゃん、よくあいちゃんに図星を指されていた、「かなえちゃんってもしかして猫好きじゃないんやない?」


 きよのちゃんの門限はかなえちゃんと同じ18時。寒さで猫もあまり寄って来ず、後2時間も俺のところで潰すのは難しいのでは?

 もしかしたら、早めに帰るのかなと思っていたが、俺のハスラーに乗ってきたからには門限まで居るつもりだろう。車の中は暖かいし。あいちゃんも居たら後ろを振り返ることもあろうが、きよのちゃんだけなら、俺は真っ直ぐに前だけ見る。


 俺が会話を切り出す、「昨日かなえちゃんチャレンジ(小学校の問題集)持ってきとったな。勉強、好きなごたるな」

「あれうちたちも持って来とったよ」ときよのちゃん。

「かなえちゃん、うちらと違って頭良いからなぉ。でもうちら(きよのちゃんとあいちゃんのことか?)の方がかわいい!」

「俺としては三人ともかわいいけど、あいちゃんときよのちゃんがかなえちゃんよりかわいかったとしたら 天は二物を与えずでかなえちゃんだけ頭が良かったってことか」

「どういうこと?」

「めっちゃイケメンで頭もめっちゃ良い男は居らんってこと。スポーツできるイケメンは居るけどそれは天が言う二物じゃねぇかも?」

 きよのちゃん、「確かにめっちゃイケメンで頭の良い男は居ないね」


「で猫じい、かなえちゃんの将来の目標知ってた?」ときよのちゃん。

 答える俺は、「小倉高校に行って…」

「薬剤師なんやって」ときよのちゃん。

「おっそうや。そう言いよったな。ばってかなえちゃんの周りに薬剤師は居らんのよね」と俺。

「そうなん。薬剤師になろうと思った理由、些細なことやったような気がするんやけど、忘れたぁ」ときよのちゃん。

「ばって薬剤師ってそう給料高くないぞ。看護士の方が高いんやないか。特に師長とかなったら月収50万越えるぞ。俺のお客に何人か看護師がおったんやけど中々連絡とれんのよね。夜勤・順夜勤・日勤があるけんね」

「そうなんよ。うちのお母さん看護士やろ。夜勤とかあったら朝起こして貰えんの」

「俺の息子下関でバス運転士しよるが、始発は5時やけん3時には起きよるぞ」

「3時って辛い!」


「あいちゃんのアイパットにゃお前らの秘蔵写真いっぱい入っとるごたるね。そいにあいちゃんかわいいってこと相当意識しとるな」

 きよのちゃん、あいちゃんの声真似で、「だってぇ、うちらぁ、かわいい⤴️のお⤵️」

 俺はパチパチと手を叩いて、「おう上手い!上手い!こうやって前見とるとあいちゃんが後ろに乗っとる気がするわ」

「あいちゃんの声の特徴は甲高い高音よ」

「きよのちゃんは勿論大学行くよな」

「うんそのつもりやけど」

「確か家は三人姉妹やったよね。姉ちゃん二人も大学行くんならきよのちゃん国立に行けとか言われよんやない?やったら数学は必須やな」

「そうなん。でもうち算数は苦手なん」

「俺は私大で3科目受験やったけど、世界史はめっちゃ得意で90点以上取る自信あったけん、他の2科目強化すれは良かったわ」

「私は国語得意だよ。90点以下取ったことないよ」

「ほうそりゃぁ凄いな。やったら私大やったらめっちゃ有利になるぞ」

「でも授業料高いやろ」

「まぁ俺らの頃は国立が8万くらいで私立が20数万やったが。今やったら百万超えるか」

「高いよぉ」

「北九州大学やったら市街居住者は高いが市民は安いぞ」

「それお母さんに聞いたことある」

「ばって一つ欠点か。大学のあるところが暗い。薔薇色のキャンパスライフには程遠いかもよ。俺は福岡市内やったけんキャンパスライフ謳歌しまくったがな」

「猫じいのキャンパスライフって…、想像するとおかしい」ときよのちゃん、含み笑い。


「ところでお前ら三人の厚い?友情、いつまで続きそうなん」

「中学二年までくらいかな?」

「えらい短いやないか?悲しいなぁ」

「同じクラスなら一緒に帰れたりするやろうけど…」

「あいちゃんときよのちゃんは部活吹奏楽部って言よったかいな。やったら帰るんは6時過ぎるな。もう俺のところ寄れんかもしれんな」

「まだ入るって決めた訳じゃないけど」

「中学になったら彼氏できるかもしれんな。そんな状況になったら友情より彼氏?」と俺。

 きよのちゃん、「それ言えるかもしれん。今日は彼氏とデートなの〜とか。でも沼中にはイケメンいないみたい。それにうちらモテないし」

「あれっお前らトライアルに行くときKZHR小学校の男子と付き合っとったって言よったんやないか?」と訝る俺に、「猫じいもしかしてあの話信じたん?」


「うっそぴょ〜ん!」

「あっちゃ〜、やられたぁ!」

「嘘に決まっとるやん。うちらに彼氏なんかできんよ。それに西村ってデブで醜男なんに」

「作り話やったんか。まぁ所々おかしいなとは思うて少女マンガの世界やなって言うたりはしたが(くそっ!少女マンガを出したのは完全に俺の悔し紛れ!)」

「それにしてもお前ら凄いな。よう即興であれだけ話合わせきるわ」と感心する俺に、「あいちゃんとは目で合図できるからぁ。かなえちゃんとはダメ。冷めきっとって直ぐ嘘でしょってくる」

 俺は、「くそ悔しいな。あの下駄箱に蛙の死骸と上履きに画鋲、堂に入り過ぎとって感服したわ」

 きよのちゃん、「うちらが蛙なんて触れる訳ないやん」ときた。


「あいちゃんの空き家の草むらで500円拾った嘘、きよのちゃんの今さらうそぴょ〜んとか言ったら本気でシバくからねの迫力に、あいちゃんびびって白状してしもうたな」と俺は笑う。

「あいちゃん、すぐうそぴょ〜とか言い出すから慣れとる。かなえちゃんのは直ぐ分かる」

「たしかにかなえちゃん、笑いを堪えるのが苦しかったとか言いよったな」

「かなえちゃん、あいちゃんのアイパットの中の入っとる写真と動画ば見せられるんほんとに嫌なんやな。俺はバレンタインデーの友チョコ貰った正真正銘の友達やけんって諭したら収まったけどよ」

「猫じい、かなえちゃんのどの動画が面白いかったぁ?」

 ちょっと考えて、「マクドの近くで撮ったやつか」

「あの変顔ね」ときよのちゃん。


「で、お前らかなえちゃんのお母さん本気で怖いん?」

「かなえちゃんのお母さん電動スクーターに乗ってんの。二人で帰ってたらビーンって寄って来て一言。『遅いですね!』って」

「6時超えとったんか?」

「うん暗くなりかけとった。あいちゃんのライン事件もあったし」

「おう、あのとき俺居ったけんな。あんた誰?事件やな。あの日あいちゃん一人でやって来て、俺に暇!暇!暇!って連発し捲って、あげくに猫じい車で遊びに連れてってやけんな。俺は言うたんよ、『俺を誘拐犯にするつもりかって』よぉ」

 きよのちゃん笑いながら、「あいちゃんが暇!暇!ってぇ?確かに言いそう」

「あいちゃん信用しない方がいいよ。すぐ嘘つくけん。猫じいの車の窓から誘拐助けてって叫ぶかもしんない」と冗談を飛ばす。

「で俺が、『そげん暇ならかなえちゃん呼べばいいやないか』って言うて、あいちゃん、連絡する方法がないからってかなえちゃんのお母さんのスマホにライン入れたって言う次第や。ほいでも友達同士じゃラインってめっちゃ大事なファクターやないんか」

「そうなんよ。それにかなえちゃんよく迷子になるのに連絡取る手段がないんよ」

「かなえちゃん3月にはスマホ買って貰えそうっては言よったがな」

「どんどん伸びていくけん分からんよ。かなえちゃんのお母さん、NM中学の保護者説明会に行って中学生にスマホは必要ないですよって教師に言われたみたいなん」

「何てや、その教師世の中のこと何も分かってねぇな。今時スマホ持たんやったら仲間外れにされろうによぉ」

「猫じい、中学生でキッズ携帯ってキモくない?」

 俺ははっきりと、「キモい!一人だけ違うところあったらグループに溶け込み難いやろうしよぉ。小・中・高時代ってやっぱ何人かの友達のグループに属しとるよね。俺にも経験あるんじゃ。一人ムカつく奴が居ったけどそいつ人気があってよぉ、仲違いすると学校に行きづらくなるんが分かっとるけんずっと我慢して付き合うとったわ。かなえちゃんグループ抜ける可能性あるかもしれんな?」

「ないとは言えんね」ときよのちゃん。


「あ〜あ、明日は学校かぁ!」

「やっぱ学校行くの嫌いなんか?」

「この前リモートで授業受けてたけど、学校通いだしてリモートのときが懐かしい」

「リモートってパソコンか。あっそうやった、今は一人一人タブレット支給されとるんやったな。リモートって学校簡単に認めてくれるん?」

「うん。コロナに感染したら親の仕事に支障があることちゃんと説明したらね」

「俺も小学生のとき、確かに学校行くん嫌やった気がするわ。ところでお前らはここに自転車乗って何回か来たよな。そんときもちろん道路走るよな」

「道路走れんやったら自転車の意味ないやん」

「俺の小学校時代って日本が戦争に負けて20年ちょっとしか経っとらんで、まだ軍国教育が残っとって先生の言うことは絶対で誰も逆らえんやったんよ。俺小学校二年生のとき交通事故起こしてバイクとぶつかったん。そいで小学生が自転車で道路走るん危ないってなって学校全面禁止にしやがった。俺のせいって思うたら学校行けんわな。みんな怒るよなぁ。あいつのせいで乗れんごとなったって非難轟々よ。学校じゃ白い目が身体中に突き刺さったわ。今じゃ考えられんことや。俺の息子がそげな立場になったら即行で学校に怒鳴りこんで暴れるやろ。それはきよのちゃんのお父さんも同じやと思うぞ。ばって俺の親父は何もせんやった。教師に逆らいきれん弱い人間やったんやろうなぁ」

「小学校二年生のときって卒業まで四年間も耐えたん?」

「おうよ」


「ところで猫じいって部活は何しよったん?」ときよのちゃん。

「あれっきよのちゃん知らんかったん?小学校六年生のときの事故で俺は足が悪いんよ。やけん何もできん」

「じゃぁ帰宅部?」

「ああ。ばって大学で一念発起。自分の殻破るために空手部に入ったんや。左足切って無かったけど懸命に頼んで入れてもろうた。でも部活全うできんやったな。試合には出れんやったしよぉ。一度あんまり強くない同期の仲間と練習試合したんよ。何でもない左足への蹴りやったばって、折れたって錯角するくらいの激痛やったわ。そいで俺には試合は無理って諦めてキャンパスライフ謳歌したわ。そいに社会人になってからは一応レース活動もやったしな」

「って猫じい義足?」

「ああ。足の件あいちゃんには話しとったわ」

「猫じいの小学校時代って悲惨やったんやね」


「お前ら卒業式終わってから昼食会って資さんうどん?」

「そう」

「やっぱ北九州に住んどったら資さんうどんは大好きなん?」

「大好きだよ」

「俺は資さんうどんより若園にある天盛うどんが好きやな」

「知らない。猫じいって昼御飯って何食べてると?」

「まぁいろいろやがラーメンやったら長浜とんぺいかいな」

「ゲオの先にある?」ときよのちゃん。

「いやそこじゃないが、え〜と何ていう店やったかいな。じじいになると物忘れが激しゅうなる」とスマホで調べて、「むらた亭やった」

「ほいでもサイゼリアは貧乏人の味方やで。ハンパーグランチが500円やけんな」

「うちもよく行く。ドリアなんて350円よ」

 結構話盛り上がってきよのちゃん、退屈しなかったみたいだ。時刻は18時前、門限だ。


「じゃぁね猫じい」

「ああ。明日学校で二人に宜しくなぁ」

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